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【音楽×珈琲 鑑賞録】11月5日~モーリス・ラヴェル バレエ音楽「ダフニスとクロエ」

音楽観を鍛える鑑賞録。 
エンディングまであと【57日】
11月4日のテーマは、【主題】

とりあげる作品は、 
モーリス・ラヴェル /
バレエ音楽「ダフニスとクロエ」

です。

ジョゼフ・モーリス・ラヴェル
Joseph Maurice Ravel
1875年3月7日 - 1937年12月28日
フランスの作曲家

「ダフニスとクロエ」(Daphnis et Chloé)は、2~3世紀古代ギリシアの小説家ロンゴスによる物語『ダフニスとクロエ』を題材に、全3場が連続して上演されるバレエ音楽です。
1912年にロシアの興行主セルゲイ・ディアギレフが率いるバレエ・リュスにより、パリで初演されたました。
当時の振付師で有名なミハイル・フォーキンの振り付けではなくなりましたが、100年続くバレエ音楽として現在も親しまれています。

ラヴェルはこの作品を管弦楽として抜き出し、「コレオグラフィック・シンフォニー」(振付的交響曲)と称して、オーケストレーションを制作。
現在でも印象派オーケストレーションの金字塔としてラヴェルの傑作として高く評価されています。

この作品全般で、ボタンの掛け違いのようなすったもんだ的エピソードがあり、興行することの大変さや人間関係の難しさというのも浮き彫りになっていますが、この作品以降のラヴェルの生涯が切なくなってしまうものだったので、その部分に関心がいってしまいました。

「日ごとに絶望が深くなっていく」
と手紙で語ったのが1919年、ラヴェルは記憶障害や失語症に悩まされるようになり、作曲もままならなくなっていきました。
意識ははっきりしているにも関わらず、文字が書けなかったり、支離滅裂なことを言ってしまい、癇癪も起こしてしまっていたそうです。
症状が進行した最晩年、この作品「ダフニス」をフランス国立放送管弦楽団の演奏会で聴いた際、自らの音楽に感動し涙しながら、「ぼくは言いたいことをまだなにも云ってないんだ」と嘆いてしまった心境を思うと、なんとも切ない。
その数ヶ月後に、ラヴェルは脳の外科手術が失敗して亡くなっています。

ラヴェルの生涯を知ると、「送りたかった人生を送れず、失意のまま亡くなってしまった人がいる」ということを考えさせられます。
そして、絶望の淵に立たされても、抗うように遺したものがあるということも。
それがラヴェルでは、「クープランの墓」であったり「ボレロ」など、現在にも聴き継がれている作品たち、そしてその足跡です。

翻せば、健康というものを改めて見つめ直すことは当然にしても、抗い難い不運に見舞われたときの立ち振る舞いを覚悟しておく必要があるかもしれません。
ただ、そのときにもやれることはやっていく。
その矜持をもち続けられるよう、生き様においても考えておく。
そんな学び深い時間になりました。

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