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【音楽×本 鑑賞録】"366日の西洋音楽" 1月12日~シャルル・グノー『アヴェ・マリア』

音楽観を鍛える鑑賞録。
1月12日 本日のテーマは、
【作曲・演奏】歴代の作曲家たちが編み出し、発展していった作曲や演奏の技法やテクニックを紹介。
とりあげる作品は、
シャルル・グノー /
『アヴェ・マリア』

です。

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本書には、いまでも多くの人に愛好されているクラシック音楽の名曲の数々を、より深く楽しむための知識や情報を盛り込みました。366の名曲を、「音楽史」「主題」「ジャンル」「逸話」「作曲・演奏」「周辺」「謎」といった7つの共通テーマで考察・解析・推理・解説します。

この曲は、J.S.バッハの『平均律クラヴィーア曲集』第1巻第1曲『プレリュードとフーガ ハ短調』のプレリュード部分を伴奏に、聖書「ルカ伝」「天使祝詞」を歌詞にして、グノーはメロディを充てたというもの。
当時も著作権はありながら、引用やパロディは創作として高く評価されていたと言います。

それにしても大胆なパロディです。
大バッハの名曲、しかもド頭部分を引用し、聖書の文言をまんま使う。
これを前情報なしで初聴したひとは度肝抜かれたことでしょう。
「歌うんかい!?」からの「アヴェ・マリアやないかい!?」となって、メロディの美しさから、「神の啓示・・・!」と失神せんばかりの感動をもたらしたであろうことが想像できる。
そして物議も醸したのではないでしょうか。
この楽曲が時代の風雪に耐え、今現在でも「三大アヴェ・マリア」のひとつとして数えられるのは、「敬虔さの昇華」があるためではないでしょうか。

どういうことかというと、J.S.バッハの『平均律クラヴィーア曲集』第1巻、表紙には粋な言葉が記されています。

指導を求めて止まぬ音楽青年の利用と実用のため、又同様に既に今迄この研究を行ってきた人々に特別な娯楽として役立つために(徳永隆男訳)

後日、この『平均律クラヴィーア曲集』は書籍にとりあげられているので、また改めて記したいと思いますが、グノーは、大バッハからのこのメッセージから着想を得たのではないかなーと勝手に妄想するのです。
これにアヴェ・マリアを融合させ、聖歌をアップグレードさせたかったのではないでしょうか。もっと神への信仰を深めよう、と。
いずれにせよ、幾つもの「アヴェ・マリア」が存在するなかで、揺るぎない地位を築いているのは、シナジーを生むための気概が並々ならぬもので、かつ真摯な敬虔さが確かに在り、それが結果になったのだと思います。

改めて、人の心をうつクリエイションとはなにか。
信仰やリスペクトの精神といった真摯な姿勢をお為ごかしなく抱くことができるかが問われている気がしました。
本気で取り組むということは、この作品を手掛けるようなことを言うのだ。
とわたし自身に訴えかけ、これからも精進していきます。

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