【音楽×珈琲 鑑賞録】9月1日~テクラ・バダジェフスカ 乙女の祈り
音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【122日】
9月1日のテーマは、【謎】
とりあげる作品は、
テクラ・バダジェフスカ /
乙女の祈り
です。
テクラ・ボンダジェフスカ=バラノフスカ
Tekla Bądarzewska-Baranowska
1834年/1838年 - 1861年9月29日
ポーランド出身の作曲家・ピアニスト
今回とりあげるのは、バダジェフスカという作曲家が手がけた「乙女の祈り」ポーランド語でModlitwa dziewicy Op.4、フランス語ではLa prière d'une vierge)、
日本では東海道新幹線のホームドア開閉時に流れる音楽として有名です。
そのほかにも多くのタイアップがあり、各国でカバーされたり、BGMとして使われたりと、いつまでも色褪せない音楽になっています。
「乙女の祈り」という音楽自体は知っていても、このバダジェフスカという作曲家の名前は、私自身、今回の機会で初めて知りました。
バダジェフスカの経歴をみると、ワルシャワ北北西にあるムワヴァという町でサロン・ピアニストとして従事していました。
音楽教育を経てはいませんでしたが、作曲して音楽雑誌に投稿するなど、アマチュア作曲家として活動するなかで、この「乙女の祈り」がヒットします。
それ以降も音楽活動は続け、35曲ほどの作品を手がけたとあります。
ところが、1861年に23歳か27歳かという年齢で夭逝してしまいました。
そして第二次世界大戦による影響で、彼女が残した作品や自身の経歴などの資料が消失してしまったそうです。
作曲家の情報がほとんどないところに残ったのは、ヒットしたこの「乙女の祈り」のみ。
あとは権威もなく、権利も失われてしまったため、バダジェフスカという作曲家は忘れられ、音楽だけが残ったというかたちです。
それだけこの音楽の純粋な素晴らしさがあると言えますが、今現在にしても知るひとぞ知るという存在に収まってしまっているというのは示唆深いところです。
アーティストは発信して認知されたいという心意気があるのならば、それに努めるべきだと思ったし、かたや受け手としても、無知のままでぼーっとしていれば、存在するはずのモノが存在しないと同義にしていることに気づかされます。
遍くわたしたちは無知であることをローマの時代から嫌というほど分かっていますが、無知を知り、知を耕すという行為に及ぶことはいつでもできるはずです。
かつて存在していなかったモノは、存在を知ることで途端に存在が浮かびあがる。
いまここにいるわたしたちはかつての歴史を受け、後押しされている存在です。
人一人、遺伝子ひとつ、かつて有った限り、無ではない。
その確かな歴史を経て、いまを生きるわたしたちは誰しも貴重な有機体です。
この受け継がれたバトンは、全員の手垢がついている。
そう思うと、一人でも存在を知るのは人生に寄与をもたらしてくれる糧になってくれる気がしています。
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