【音楽×珈琲 鑑賞録】9月11日~ヨハネス・ブラームス ピアノ小品集『7つの幻想曲』
音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【112日】
9月11日のテーマは、【ジャンル】
とりあげる作品は、
ヨハネス・ブラームス /
ピアノ小品集『7つの幻想曲』
です。
ヨハネス・ブラームス
Johannes Brahms
1833年5月7日 - 1897年4月3日
19世紀ドイツの作曲家、ピアニスト、指揮者
今回とりあげる作品はブラームスのピアノ曲集『7つの幻想曲』作品116 (Fantasien Op.116)は、1892年に作曲。全7つの小曲で、通しで演奏時間約24分の作品構成になっています。
ブラームス晩年の作品ですが、この1892年から1893年にかけて『7つの幻想曲』、『3つの間奏曲』、『6つの小品』、『4つの小品』と立て続けにピアノ小品を手がけています。
この時期のブラームスはすでに引退を考えていた頃合いで、遺書を書き、生前整理をし始めていました。
その頃に出会ったクラリネット奏者、リヒャルト・ミュールフェルトの演奏に感銘を受け、再び創作意欲を取り戻します。
この作品では、自身の老いや、身内の不幸、懇意にしていた友人や偉大な同業者がなくなった寂寥感を反映したかのような、寂しげで暗く悲哀に満ちた作風ですが、それゆえの侘び寂びが利いて枯れた美のある作品です。
ブラームスほど若い頃から才能を見出され、音楽家としてのキャリアを順調に築いていったにも関わらず、晩年にはこのような孤独と悲哀、諦観を思わせるような作品を手がけたというのは、人生の儚さを感じさせるものがあります。
翻して感じ入るのは、人と人との関わりあいの大切さです。
すでに引退を覚悟して身辺整理をしたあと、たまたま出会ったミュールフェルトの演奏が素晴らしく、改めて音楽家として生きる希望が湧きあがったブラームス。
そうして生まれ出たピアノ曲や、最後の作品「クラリネット・ソナタ」。
晩年にこのような作品で終結するとは想いもしなかったのではないでしょうか。
そして、終生の親友となったクララ・シューマンが亡くなって、1年後にブラームスが亡くなります。
人の介在があれば悲しみは増え、心はいたみますが、たからこそ生まれ、遺ったものもある。
現在、出会いを育むことや人との親交を深めることができ難い世の中になっていますが、改めて出会いや親交、人との関わりあいの大切さを思う一日となりました。