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【音楽×珈琲 鑑賞録】11月3日~レモ・ジャゾット アルビノーニのアダージョ

音楽観を鍛える鑑賞録。 
エンディングまであと【59日】
11月3日のテーマは、【謎】

とりあげる作品は、 
レモ・ジャゾット /
アルビノーニのアダージョ

です。

レモ・ジャゾット
Remo Giazotto
1910年9月4日 – 1998年8月26日
イタリアの音楽学者

「アルビノーニのアダージョ」(Adagio In G Minor)は、イタリアの音楽評論家であったレモ・ジャゾットが1958年に出版した作品です。
出版された当初は、トマゾ・アルビノーニの『ソナタ ト短調』の断片が旧ザクセン国立図書館の廃墟から発見されたと伝えられていました。
ところがこの作品はジャゾット独自の作品であり、原作となるアルビノーニの素材はまったく含まれていなかったそうです。

自分などがこの曲を聴いてみたら、「イングヴェイじゃん!」となってしまいましたが、この鎮魂的音響は、多くの人が耳にする機会があるのではないかと思います。
これほど弔意がひしひしと伝わってくるような音響は他に類をみないような気がします。

トマゾ・アルビノーニは18世紀バロック期の音楽家で、J.S.バッハも影響を受けた人ですが、有名になったのは、その学者さんの創作による作品によるものというのも因果な話です。
しかも、ジャゾットは死の間際まで創作を認めておらず、有名になればなるほど真偽が疑われ、妙な曰くがついてまわってしまいました。
ジャゾット本人からしてみれば、ずっと嘘をつき続けているような居心地の悪さを感じて生きてしまったのではないでしょうか。
晩年に、「私はアルビノーニを忘却の淵から救いたかった。アルビノーニが書いた曲を実際に聴けば、彼への関心が高まると思ったのです」
というコメントを残していたそうですが、確かにその通りになりましたし、この曰くが作品をより奥深いモノにしています。

このエピソードを含めた名曲だからこそ、不朽の名作になったわけですが、ジャゾットの生前の居心地を想像するに、マネするもんじゃないなと思わされるものです。
これほどの名曲が作れるかどうかはさておき、どんなに良い曲であっても、生きた心地がしなければむしろ重荷になってしまうことでしょう。
もちろん、すべての創作はあらゆる物事の引用であることは否めません。
そのうえでも、快く自らが生み出したと誇れる作品でないと、要らぬそしりに人生が陰ってしまいます。
作品としての名品、そして人生を豊かにする創作。
この工程が大切なんだということを考えさせられる時間になりました。

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