【音楽×珈琲 鑑賞録】7月27日~ベンジャミン・ブリテン 戦争レクイエム
音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【158日】
7月27日のテーマは、【周辺】
とりあげる作品は、
ベンジャミン・ブリテン /
戦争レクイエム
です。
ブリテン男爵エドワード・ベンジャミン・ブリテン
Edward Benjamin Britten, Baron Britten OM CH
1913年11月22日 - 1976年12月4日
イギリスの作曲家・指揮者・ピアニスト
『戦争レクイエム』(War Requiem)作品66
1962年に発表した管弦楽付き合唱作品です。
合唱のにはラテン語によるカトリックの典礼文と、第一次世界大戦に従軍し25歳の若さで戦死したイギリスの詩人ウィルフレッド・オーウェンによる英語の詩が使われ、第二次世界大戦で亡くなられた方々への追悼とともに、戦争の不合理さを告発し世界の平和を願う作品となっています。
6つの楽章構成で、約1時間25分の演奏時間。
第1章 レクイエム・エテルナム(永遠の安息)
第2章 ディエス・イレ(怒りの日)
第3章 オッフェルトリウム(奉献唱)
第4章 サンクトゥス(聖なるかな)
第5章 アニュス・デイ(神の子羊)
第6章 リベラ・メ(我を解き放ちたまえ)
という内容。
本作での聴きどころは、個人的には鎮魂をいかに表現するかという部分でした。
ソプラノ独唱、テノール独唱、バリトン独唱、混声8部合唱、児童合唱と、さまざまな音域と音色で歌唱していますが、この歌唱部分が直接的にレクイエムを想起させます。
そして、着目したいところは、打楽器の豊富さであり、鐘の音の重要性です。
打楽器で指定しているのは、
サイドドラム2、テナードラム、バスドラム、タンブリン、トライアングル、シンバル、カスタネット、鞭、チャイニーズ・ブロック、銅鑼、鐘(C,F#)、ヴィブラフォン、グロッケンシュピール、アンティークシンバル(C,F#)
という具合に、打音で表現することに力を注いでいます。
特に鐘の音はC(ド)とF#(ファ#)という不安定な響きを指定しています。
このどこにも行き場がなく、彷徨うような音響を聴くたびに、自ら能動的に鎮静化しようという気が起きます。
随所に、荘厳な歌と音響を聴かせ、テーマを回帰させる工夫がある。
ややもするとすぐに安定感のある場所に行きたくなる心へ、警鐘を鳴らしているかのようです。
このスコアの扉ページに記載した言葉だという詩、
My subject is War. and the pity of War.
The Poetry is in the pity...
All a poet can do today is warn.
私の詩の主題は戦争であり、戦争の哀れさである。
詩はその哀れさの中にある。・・・・・・
今日、詩人がなしうることは、警告することだけである。
ーウィルフレッド・オーウェン
できることは、「警告することだけ」。
自分は自分、他者は他者という厳然たる境界があり、お互いは発信することしかできません。そのなかでも、警告という波動は、少なからずの共鳴が起こるはずです。そうした影響が兆しをつくり、微妙な変化がバタフライ・エフェクトになる。
人類としての方向性、正義がなにかは誰もわかりませんが、
相互に良いと思える方向へエネルギーが注がれれば、各々の納得できる感慨は覚えるでしょう。
そこに響く音色が不安定に満ちた鐘の音でも、未来に向かう希望のように感じられる共体験であればと願ってやみません。