【音楽×珈琲 鑑賞録】9月14日~クロード・ドビュッシー ピアノ曲集『版画』
音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【109日】
9月14日のテーマは、【周辺】
とりあげる作品は、
クロード・ドビュッシー /
ピアノ曲集『版画』
です。
クロード・アシル・ドビュッシー
Claude Achille Debussy
1862年8月22日 - 1918年3月25日
フランスの作曲家
今回とりあげるドビュッシーの『版画』(Estampes)は、1903年に完成されたピアノ曲集で、3曲構成。全曲通しで約15分の演奏時間。3つの異なる土地を連想させる音響をもっていて、『映像』(Images)とともに印象主義音楽のピアノ曲の書法を確立した作品です。
3つの異なる土地を連想させるということで、聴いてみれば行ったこともない土地にも関わらず、指し示された言葉と音響で想像補完してしまう不思議な体験ができます。
1曲目の「塔」(Pagodes)は、5音音階のペンタトニックスケールが用いられていて、インドシナ諸島を連想させます。
この音響は非常に馴染みやすい自然美をみる作品です。
おしゃれな施設で流れてそうで仕方がない名曲。
2曲目は「グラナダの夕べ」(Soirée dans Grenade)、ギターの掻き鳴らしの模倣とジプシーの音階(ハンガリー音階)の利用によって、スペイン情緒を掻き立てているといいます。
3曲目は「雨の庭」(Jardins sous la pluie)、フランスの童謡『もう森になんか行かない』(Nous n'irons plus aux bois)や、『眠れ坊や眠れ』(Dodo, l'enfant do )が引用され、ドビュッシーの母国フランスの庭園に篠突く雨が描写されているとのこと。
この曲はまっこと不可思議で、長調も短調も入り混じりながらどこにいくかわからない旋律にも関わらず、美しく聴こえてしまう怖しい作品です。
どの楽曲もドビュッシーの唯一無二なアート性が昇華された世界観をもっています。
ドビュッシーは多くのアーティストが夢見る存在証明の確立と羨望を体現し、他に類をみない作曲家だと改めて思い知る作品でした。
ドビュッシーの音楽を聴くと、音楽は自由でありながら、その自由とはいかに深い知識と思考が及ぶことで実現できるのかと考えさせられます。
少しずつ知識を得ていくうちにじわじわと見えてきてしまう、偉大な音楽家の思考の深淵さ。
その凄みに落胆しつつ、それでも比較しうる自分自身を超えようと、日夜励むしかありませんね。