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MBTIは心理測定学的に信頼できるツールなのか?→微妙という結論
こんにちは。紀藤です。先週から「MBTIの認定ユーザーの資格取得コース」に参加しています。
当然、MBTIをガッツリ学ぶわけですが、内側ではなく外から見た時に「心理測定の指標としてどれくらいの信頼性・妥当性があるのか」気になっていました。(批判的に見るのも大事!・・・ですよね?
(MBTIについては以下記事をご参照ください)
そして、GoogleScholarで調べたところ、『マイヤーズ・ブリッグス性格タイプ指標(MBTI):心理測定の限界』という論文があり、まさに気になる疑問について、一つの答えを示していました。
▽▽▽
結論からすると、「最も使われている心理特定ツールであるが、現在の心理測定学的な観点からすると批判も多い」というお話です。
ということで、この結論が一体どういうことなのか、その内容を見ていきたいと思います。それでは、どうぞ!
今回の論文
タイトル:Myers-Briggs Type Indicator (MBTI): Some Psychometric Limitations(マイヤーズ・ブリッグス性格タイプ指標(MBTI):心理測定の限界)
著者:Gregory J. Boyle
ジャーナル:Humanities & Social Sciences Papers, 1995年
1分でわかる本論文のポイント
本研究は、Myers-Briggs Type Indicator (MBTI)の心理測定的な妥当性に関する批判的な分析を行いました。
MBTIは、ユングの心理学的タイプ理論に基づいた、人気の高い性格測定ツールです。4つの二分法的次元(外向性-内向性、感覚-直観、思考-感情、判断-知覚)を使用し、16種類の性格タイプに分類します。このタイプ分類は、個人の行動傾向や意思決定スタイルを反映するとされています。
ただし、その信頼性と妥当性にはいくつかの問題が指摘されています。具体的には、以下の3点です。
信頼性(再テスト信頼性が不十分であり、タイプスコアの安定性に疑問がある)
妥当性(MBTIの測定構造において統計的および理論的なサポートが不足している)
適用性(ローカル規範や動機歪み(例: 社会的望ましさ)を考慮したスケールが欠如している)
これらの制約により、MBTIの使用には慎重さが求められると結論付けています。
とのこと。なるほど…。MBTIの資格を取ろうとしているいちユーザーとしては、辛口コメントだな、と率直に感じました(汗)
研究の概要
では、具体的にどのような調査を行ったのでしょうか?
以下、見ていきたいと思います。
研究の方法
MBTIの心理測定的性質を評価するため、信頼性(再テスト信頼性、項目の一貫性)、妥当性(基準関連妥当性、因子構造の分析)、および項目の同質性について検討した。
また、MBTIのスコアと他の主要な心理測定ツール(16PF、NEO-PIなど)との関連性を分析し、主成分分析および確認的因子分析の適用可能性を検討した。
研究の結果(わかったこと)
上記の検証の結果、再テスト信頼性(=何度受けても同じ結果になるのか)と、妥当性(=外向-内向、感覚-直観、思考-感情、判断-感覚のの因子構造は独立しているのか)について、以下のように述べています。
「再テスト信頼性」は、中程度
長期的な安定性は中程度。外向(E)-内向(I)次元では中央値が0.78、感覚(S)-直観(N)次元は0.69、思考(T)-感情(F)次元は0.69、判断(J)-感覚(P)次元は0.74であり、期待される範囲である0.8~0.9を下回る。
フォームG(126項目のMBTIの標準版)の安定性は、以前のフォームF(166項目の以前の質問紙)よりも低い結果を示した。
「妥当性」は、因子の独立性に疑問が残る
多くの研究で因子分析が行われているが、その方法論的妥当性に疑問が残っている。特に主成分分析における因子の数と回転法の選択が議論の対象となっている。
結果として、MBTIの因子構造が理論的に主張される独立性を完全には支持していない。
MBTIが独自路線をいく理由
現在の心理測定の基準からすると、疑問が残る結果となった、としています。その一つがタイプ論に対する考え方による限界です。以下論文より引用します。
Wiggins (1989, p.538)による と、「MBTIがより広く受け入れられるための主な障害は、テスト作成者が固く信じている二極不連続型の構造モデルにある」。その結果、二項対立の強制選択項目の使用は、 MBTIの理論的および統計的な重要性を大きく制限しています。
「テスト作成者が固く信じている二曲不連続型の構造モデルが、障害になっている」とのこと。
MBTIを既存の心理測定的な基準で図ろうとすると、どうしてもタイプ論(二分法でわけていく方法)における限界が出てくる。ただし、このことはMBTI側(?)もそのことは重々承知だと思われます。
とうのも、MBTIの作成者は、以下のようにも述べているからです。
予測妥当性に関しては、Myers (1962, p. 77)は、MBTIは「すべての行動に対する絶対的な予測ではなく、さらなるテストと検証のための仮説を提供するもの」と考えるのが最善である
「結果は、自分の行動を検証するための仮説を提供するものである(テスト結果が絶対ではない)」とそのテストの立ち位置を明確にしています(なのでIndicator(指標)という呼称になっているそう)。
まとめと感想
MBTIの面白さを感じつつ、他の性格特性も自分なりに学んだ思ったこと。
1つは、「心理測定学の観点では、MBTIは制限を抱えている」ということ。これは本論文の結論の通りです。
2つ目が「といいつつ、他の心理テストも同じようなものとも感じる」という話です。
とうのも「人の心が統計で本当にわかるのか?」という疑問もあります。
論文で、”一部の研究者(例:Anastasi, 1990)は、すべてのパーソナリティ質問票は心理測定学的に疑わしいと指摘している”、とありましたが、ストレングス・ファインダーでもVIAでも、どれも中程度とか、100回やったらある程度ぶれたりします。自然科学論者からすればどれも怪しいとも言えるのかもしれません。
そう思うと、MBTIのタイプ論を良しとするか否かは「依って立つ価値観や信念の問題」と言えなくなくもないかもしれません。
結局は、「テスト結果を呼び水に、一人ひとりが対話や、内省をして探求をする」ことがセットになっていないと、こうした心理テストも役立たない、ということです。
いずれにせよ、こうした見方があるといのは、MBTIというツールを扱う側としても知っておく必要がある大切な情報だな、そんなことを思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!