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ネガティブな出来事が「性格の強み」を形成する?! ~自伝的記憶と性格の強みの最新研究~

こんにちは。紀藤です。今日は「強み」についての論文の紹介です。

今回の論文は「自分の重要な人生のエピソードを振り返ることで、どんな性格の強みが発揮されているかを見つける」ことがテーマです。

「悪いことが起きたとき、あなたには3つの選択肢がある。それで自分を決めるか、それで自分を破滅させるか、それで自分を強くするかだ」。― スース博士

冒頭で、上記の名言が紹介されていたように、本論文で興味深いのが、「ネガティブな出来事(病気や最愛の人の死など)が、性格の強みの形成に大いに関わっている」ことを発見した点です。2024年の新しい論文で、最新の研究も加味されているところも、注目ポイントだと思いました。

ということで、早速内容を見てまいりましょう!


今回の論文

『An Exploratory Study Based on Autobiographical Memories and Character Strengths』(自伝的記憶とキャラクター強みに基づく探索的研究)
Miguel A. Alonso, Gonzalo Hervás
Psychological Studies, 2024年

30秒でわかる本論文のポイント

  • 本研究は、個人の成長と関係する「自伝的記憶」と「性格の強み」の関連性を探る探索的研究です。

  • 特にポジティブな出来事とネガティブな出来事の両方が、いかにして特定の「性格の強み」と結びつくかに注目しました。

  • 研究方法は、194名の参加者に「自分にとっての重要な出来事」を回想し、これに関連する性格の強みを特定するよう依頼しました。

  • その結果、「自分にとっての重要な出来事」の半数がネガティブな言葉で記載されていました。具体的には「学業の転換」「病気の経験」「親しい人の死」といった出来事が多く、45%の出来事が「大局観」「勇気」「感謝」「スピリチュアリティ」の性格の強みと関連していることがわかりました。

という内容です。

研究の概要

では、どのような研究が行われたのでしょうか。以下、詳細を記述いたします。

研究の目的

本研究の主な目的は、「自分がどんな教訓を得たか」という視点から、重要で意味のある人生の記憶を探り、それぞれの出来事に関連した性格の強みを見つけ出すことです。本研究では、特に以下の点に注目しました:

1,どんな出来事がよく思い出されるのか(どのような体験が「重要」として頻繁に挙げられているのか)
2,出来事が肯定的・否定的に語られているか(その体験がポジティブな言葉で語られるのか、ネガティブな言葉で語られるのか)
3,体験で使われた性格の強みは何か(過去の出来事の中で、どのような強みが発揮されたのか)
4,出来事の種類と強みの関係性(特定の種類の出来事と、性格の強みがどのように結びついているか)

対象者

・スペインの大学の学部生・大学院生194名(平均年齢23.83歳、69%が女性)
・学士号取得を目指す1年生と3年生、および修士号取得を目指す学生

方法

・参加者は人生で最も学びが大きい個人的に意味のある思い出を3つ挙げ、そのうち最も重要だと思うものを1つ選択しました。
・記憶の内容を、2名の独立したコーダーが事前に設計されたリストに基づき、出来事の種類(学業、病気、親しい人の死など)や、性格の強み(勇気、感謝、スピリチュアリティ等)に従って分類しました。
・参加者ごとに最大5つの「性格の強み」が記録され、判定の一致率を確認したうえで、相関分析を実施しました。

結果

以下、研究の結果からわかったことをまとめます。

わかったこと1:思い出された出来事の半数がネガティブな出来事だった

最も頻繁に報告された出来事の種類は「学業の転換」(48件、22.64%)で、これに「病気」(33件、15.57%)、「親しい人の死」(21件、9.91%)が続きました。
また、出来事が「肯定的か否定的か」については、「学業の転換」はポジティブとネガティブの両方で報告され、「病気」や「親しい人の死」は主にネガティブな体験として描写されていました。

わかったこと2:重要な出来事で発揮された強みは「大局観」「勇気」「感謝」「スピリチュアリティ」だった

次に、参加者が人生の重要な出来事(学業の転換や親しい人の死など)に対処した際に、特に発揮した「性格の強み」を分析しました。

その結果、特に「大局観」(16.36%)が多く言及され、「勇気」(11.90%)、「感謝」(8.18%)、「スピリチュアリティ」(7.62%)も高頻度で関連が見られました。(この4つの強みで、全体の45%を説明)

また、「学業の転換」などの挑戦的な出来事は「忍耐力」や「向学心」と結びいていました。「仕事上の責任を担う経験」は「親切心」「社会的知性」「忠誠心」と関連していました。そして、「親しい人の死や関係の終わりといった喪失体験」は「愛情」「寛容さ」「感謝」との関連性が示されていました。

まとめと感想

本研究では「自伝的記憶」が「性格の強み」と結びつくことを示した点が新しい点であるとされています。

実践で考える際にも、重要な出来事を振り返って、そのときにどんな強みが発揮されていたのかを見ると、自分の性格の形成のルーツを遡れるようにも思いました。

私の場合、「大学のときのアゴ折れ事件」(暴力事件に巻き込まれた)という体験が、ボクシング部の入部に繋がり、その際に「忍耐力」を鍛えられたように思います。あるいは、中学時代の優秀な友達との比較から「向学心」の芽生えがあったようにも思います。
どちらもネガティブな記憶ですが、今思えば自分を形作っているなあ、と感じました。

自己バイアスの影響(社会的望ましさや記憶の誤り)などは、研究の限界として述べられていますが、とても実践的かつ、有用な研究だと感じた次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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