強みは何の役に立つのか? ~「強みが持つ17の機能」を明らかにした論文~
こんにちは。紀藤です。本記事にお越しくださり、ありがとうございます!
さて、本日は強みに関する論文で「強みが持つ”機能”とは何か」を調査をしたものとなります。
”機能”とは、なかなか日本語では馴染みが少ないかもしれませんが、機能とは「Function(機能、用途、目的、役割、任務)」と訳される言葉です。「強みがもたらす”機能”」とは、「どんな強みが、どんな役に立つのか?」と言い換えられるかもしれません。
ということで、どういう内容かなのか、早速見ていきたいと思います!
30秒でわかる論文のポイント
性格的強みは、ウェルビーイング(幸福度)や抑うつなどに影響があることがわかっている。
一方、性格的強みは特定の目的を果たすことがあることも想定される。たとえば「好奇心の強み」は知識の獲得と活用をサポートする、などである。
本研究では、性格的強みが持つ潜在的な機能について検討する調査を行った。結果、性格的強みは「17の機能」を持つことがわかった。
また、参加者に14日間の日記調査を実施し、「日々の性格的強みの発揮」と「17の機能」の経験を報告させ、調査した。その結果、性格的強みの発揮は、いくつかの機能と正の相関があることが示唆された。
とのこと。なるほど、「性格的強み」が「どんな機能」を持っているのか、気になるところです。
性格的強みがもたらす「長期的な成果」と「短期的な成果」
性格的強みは、様々な成果をもたらすことがわかっています。たとえば、これまでの研究でいえば、人生全体に亘る生活満足度、学業成績、タスクパフォーマンス(仕事の成果)、人間関係、健康関連行動、抑うつetc・・・。
学生であれ、社会人であれ、性格的強みは異なる生活領域における様々な「長期的な成果」と結びついていることがわかります。
一方、成果はより近しい目標(短期的な成果)に役立つ可能性もあるわけです。たとえば、
・肯定的な人間関係を築くことができるのは「ユーモア」の強みが役立つ
・喜びを経験しやすくなるのは「美や超越性」の強みが役立つ
・学習の知識の獲得や活用は「向学心」の強みが役立つ
というように、「学業成績」「仕事の成果」などの長期的な成果よりも少し手前にある「短期的な成果」にもつながる可能性が考えられます。
研究のポイント
上記の仮説を元に、以下のようなプロセスで研究を進めていきました。
以下ポイントについてまとめてみたいと思います。
調査(1)「強みがもたらす機能」を特定する
まず、「強みがもたらす機能」を調査するために、以下のようなステップで調査を進めていきました。
{STEP1}参加者への質問調査
・参加者63名にVIAの24の強みを説明し、自分自身の中で顕著だと思う5つの強みについて以下3つの質問に答えてもらった。
{STEP2}定性データから強みがもたらす機能を分析する
参加者の回答から集まった定性データについて、研究者3名で分析し「強みがもたらす機能」を概念的に類似したものを集約し、統合する反復アプローチを行っていった。結果、以下「強みがもたらす17の機能」が明らかになった。
{STEP3}「強みがもたらす17の機能」の特定する
これらの分析によって以下17項目が、「強みがもたらす機能」として識別されたものとなりました。VIAの言葉とも重複するところがありますが、内容を整理いたします。
調査(2) 性格的強みと強みがもたらす機能の相関を調べる
次に、これらの結果を元に、196名の参加者を対象に「14日間連続の日記調査」を実施したのでした。
内容は、参加者に対して毎日アンケートを送ります。アンケート内容は「性格特性的強み」と「強みがもたらす機能の経験」についてランダムに設問が出されます。参加者は、それらに答えていきます。
そしてアンケートの結果から、個人内で「強みの発揮」と「強みのもたらす機能の経験」の相関がどれくらいあるか?を調査することとしました。
それらの結果、「性格的強み」の各項目と「強みがもたらす機能」には、いくつかの相関が見られることがわかりました。以下が、特に相関が高かった項目となります。
まとめと個人的感想
確かに言われてみれば、「性格的強みによる成果」は、ウェルビーイング・仕事の成果、抑うつなどの「比較的長期的な成果」であるものを目にしていました。
しかし、今回の視点「強みがもたらす機能」を見てみるのは、より性格的強みの活用を発展させるものだと感じました。性格的強みを活用することで、「新しいことに”関心”を持つようになった」とか、「”楽観的”に考えられるようになった」とか、「学びの”習得”に役立った」などは、明確な成果とは言えないかもしれませんが、たしかに成果に繋がる重要な「機能」です。
そして「自己効力感」「ポジティブ思考」「達成」などそれぞれ質の違う成果を得るために、特にどの性格的強みを発現させると効果的なのか?、それらを相関分析等の調査を含めて検証するという研究デザインに「ほほーこんなのもあるんだ」と感銘を受けました。
いやはや、2022年の比較的新しい研究ですが、より面白い研究が増えていて読み応えがありました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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