見出し画像

「感謝と称賛」を組織づくりに活用する ~読書レビュー『感謝と称賛』#12(最終回)~

こんにちは。紀藤です。先日から『感謝と称賛』(正木郁太郎 (著))の書籍からの学びを、長らく共有させていただいてまいりました。
いよいよ今回で、最終回となります・・・!

今回のテーマは最終章の第10章より、本書のまとめが述べられています。
章のタイトルは「よりよい組織作りのために感謝と称賛でできること」。
研究・調査のまとめと、今後の活用の考察が書かれています。
ということで、早速みてまいりましょう!


感謝と称賛の「3つの効果」

本書における感謝と称賛の研究からわかった、「感謝と称賛の効果」は、大きく以下の3つにまとめることができます。

(1)「道徳感情理論」に関連する効果
・誰かのため・何かのために起こす行動(向社会的行動)、自ら積極的に起こす行動(主体的行動)が増える
・キーワード:向社会的モチベーション、利他的モチベーション、援助行動

(2)「拡張-形成理論」に関連する効果
・職場における多様なウェルビーイングやポジティブな考え方、職場に対する前向きな態度が増える
・キーワード:ワークエンゲイジメント、組織コミットメント、組織愛着

(3)「find, remind, and bind理論」に関連する効果
・職場内の信頼関係やチームワークの良さ、親密さなどが増える
・キーワード:信頼関係、関係の近さ、チームワーク

これは先行研究おいて言及されていたことが、実際の組織において確認する結果となりました。

ちなみに、なぜ「感謝をすると、向社会的行動や主体的行動が増えるのか?」という構造も推察されました。それは「感謝をする・される」と、「社会的影響力を知覚する」&「組織支援の知覚をする」ことにつながり、それが「向社会的モチベーション・対人的な援助行動」と繋がっていく、というメカニズムがわかりました。

これは先行研究おいて言及されていたことが、実際の組織の中で確認することができた、とも言えそうです。

感謝と称賛は「誰に・どのような効果」を与えるのか

また、もう一つの着目したい研究結果が、感謝と承認が「誰にとって有用か」という観点です。

感謝も「感謝する人」「感謝される人」、それぞれいます。
承認も「承認する人」「承認される人」、それぞれいます。
またそれを目撃する「周りの人」もいるわけです。

では、誰に対してどのような影響を与えるのか?ということ。
この点について、以下のようにまとめられています。

<感謝と称賛が「誰に・どのような影響」を与えるのか>
(1)「感謝と称賛」は、する側とされる側、どちらにとってもポジティブな態度、行動、人間関係につながる
(2)「感謝」は、自分がするのと同じくらい、周りから感謝されているときに、最もポジティブな効果を発揮しやすい(ただし、認知バイアスがあることも気をつける)
(3)「感謝と称賛」は、集団(職場)にもポジティブな効果を与える(組織愛着、チームワークが高まる)

ポイントは、「する・される」だけではなく、それを目撃している人にまで影響を与え、集団レベルの効果につながる、という点が実に興味深く思ったのでした。

感謝や称賛をどのように促すのか

そして、実際に「感謝や称賛を促す」ために、いくつかの制度や制度や仕組みが有用であることがわかりました。具体的には感謝と相関があるものは、以下のようなものが挙げられました。

<感謝や称賛を促すもの>
1,感謝を直接ミーティングなどで伝える習慣や制度
2,仕事の相互依存性
3,上司のフィードバック

そして、本書では「PRAISE CARD」という称賛の介入が、上記を示す結果になっていました。以上、本書からの得られた結果をまとめた表を、以下引用させていただきます。

P227

終わりに

以上、最終章のまとめでございました。

さて、本書もじっくり読んでいたら大変長い企画になってしまいました。しかし、それくらいじっくり読みたかった本でもありました。

たとえば私が掘り下げていた「強み」の研究においても、「『感謝』はウェルビーイングに最も関わる強みの一つ」という話もありました。
また、強みのワークショップで、「強みを承認・称賛する」ことをチームで行うことが、ポジティブな効果をもたらすことも体感してきました。

効果を発揮する感覚はある。しかし、それらの効果を、学術的に掘り下げている著書はなかなか見ません。そんな中、本書と出会い、気づけば没入して読ませていただきました。

本書の素晴らしい点は、データに基づいた分析を行うことで「感謝や称賛は、まあ、やったほうがいいよねー」というふわっとしたものが、「感謝と称賛は、組織とマネジメントおいて有用であり、活用すべきものである」と説得力を持って示された点だと感じます。

働く人の中にはタスク重視で「それはあなたの仕事の責任だし、やって当然でしょ。感謝なんてわざわざするもんじゃない」という考え方を持つ人も、いるのではないかと思います。
 そのときに「感謝したほうが、気持ちいいじゃないすか」でと説得力に欠けてしまいます。そのとき、今回のように「感謝行動が、する側・される側の両方に、援助行動とワークエンゲージメントを高める効果がある」とエビエンスを示すことで、ぐっと説得力が増すのでしょう。
そして、このようなデータを適切に示すことで、このように様々な考えの従業員がいる中で、「その施策を行うべき正当性を示す根拠」すなわち「武器」になりうるのだと、私は感じました。

最後に、著者の正木先生に感謝申し上げます。noteで発信をする中で、なんと正木先生よりわざわざ、長文の感謝のメッセージをいただきました(なんともありがたいご縁です。こちらこそありがとうございます・・・!)

「こんなに引用してしまってすみません、大丈夫でしょうか・・?」と伺ったところ、引用は大丈夫ですよ!と快くおっしゃっていただき、このような形で学びの共有をさせていただくことができました。

こうした研究があることで、実践に活用され、そして職場や社会が、少しずつより良いものになっていく。そんな意義を感じた「人と組織をつなぐ関係性の科学」でございました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?