誠実性が最強説 ~性格と収入の関連性について63の研究をメタ分析してわかったこと~
こんにちは。紀藤です。さて、本日も超有名な性格モデル「ビックファイブ」に関連する論文をご紹介いたします。
ビックファイブは有名ゆえに、多くの研究があるのですが、「収入と性格特性の関係」についても、なかなか数の研究がされています。
今回の論文は、2021年のイタリアの研究者による「ビックファイブと収入の関連性について、63の研究をメタ分析した論文」となります。
収入と性格特性の関係で軽く調べただけでも962件の研究があったそう。
そこから基準を満たした論文に絞り、それらをメタ分析した調査であるため、信頼度が高い論文です。
ということで、早速内容をみてまいりましょう!
今回の論文
1分でわかる本論文のポイント
本研究は、ビッグファイブ性格特性(開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向)と個人の収入の関係を定量的に調査した初のメタ分析です。
2001年から2020年に発表された63件の査読付き論文を対象に効果量を収集しました。その結果、以下が明らかになりました。
開放性、誠実性、および外向性は収入と正の関連性を示す。
協調性と神経症傾向は収入と負の関連性を示す。
分析結果には文化や性別の差異が影響している可能性がある。
また、出版バイアスの影響は軽微であることも確認された。
という内容です。
メタ分析、レビュー論文は研究の中でも、信頼性が高いものとされていますので、ビックファイブと収入に関して信頼おける論文と言えるでしょう。
研究の方法
では、具体的にどのような方法で進められたのかを見ていきます。
データ収集
Scopusデータベースを用いて、2001~2020年に発表された収入とビッグファイブ性格特性の関連性を調査した論文を検索。以下の条件を満たす63件の研究を最終的に選定した。条件1:英語で書かれている。
条件2:ジャーナルが「経済学」「心理学」「社会科学」などに分類されている。
条件3:ビッグファイブモデルを使用して性格を測定している。
条件4:収入を連続変数(例:金額)または離散変数(例:収入階層)で測定している。
メタ分析
各研究の効果量(Pearsonの相関係数)を統合し、ランダム効果モデルを使用して統計的有意性を評価しました。メタ回帰
効果量のばらつきを説明する要因(文化的背景、性別、教育水準、認知能力の有無など)を特定するための回帰分析を実施しました。
結果わかったこと
(1)性格特性と収入の関連性
ビックファイブの、開放性、誠実性、外向性は収入に正の関連性を持ち、
協調性、神経症傾向は収入に負の関連性を持つことがわかりました。
開放性: 正の関連性(効果量:0.0165, p<0.05)
誠実性: 強い正の関連性(効果量:0.0253, p<0.01)
外向性: 正の関連性(効果量:0.0209, p<0.01)
協調性: 負の関連性(効果量:-0.0353, p<0.01)
神経症傾向: 負の関連性(効果量:-0.0330, p<0.01)
(2)文化と性別の影響
アングロフォン諸国(例:米国、英国)では、「外向性」と「誠実性」の影響が特に強く、「協調性」に対する負の影響も顕著である。
男性サンプルでは「開放性」の正の影響が特に大きく、女性サンプルでは「神経症傾向」の負の影響が軽減される。
(3)分析の頑健性
分析結果は、異なるモデル(固定効果モデルやFisherのz変換)を用いても一貫していた。
出版バイアスは軽微であり、メタ分析の信頼性を損なうものではなかった。
まとめと感想
本論文の最後に、”一流ジャーナルに掲載された研究では、収入と「誠実性」との間により強い正の関連性があること、また「協調性」との間により強い負の相関があることが報告されていた”とありました。
・誠実性が高いことは収入を上げる要因であること
・協調性は収入にはマイナスの影響があること
などが、多くの文化圏で共通しているというのは興味深い内容だと感じた次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!