インクルーシブ・リーダーシップとジョブ・クラフティングの関係とは? 読書レビュー『ジョブ・クラフティング』#11~
こんにちは。紀藤です。本日も著書『ジョブ・クラフティング(以下JC)』について、読書レビューをお届けいたします。10回以上に亘って読み進めてまいりましたが、今日で最終回です。
本日のテーマは「インクルーシブ・リーダーシップとジョブ・クラフティングの関係(第12章)」です。
イノベーションを期待される「高度外国人材」はますます求められているようです。しかし、日本型の組織に溶け込めないという現状もある様子。。。
そんな中、高度外国人材のジョブ・クラフティングを高める「インクルーシブ・リーダーシップ」との概念の関係を調査したという研究です。
結論からすると、「上司がインクルーシブ・リーダーシップを発揮していると感じるほど、ジョブ・クラフティングのレベルが高い傾向」があることがわかりました。
更には、外国人材と日本人社員を比較した傾向の違い、情緒的コミットメントとJCの関係など、興味深い内容でした。
ということで、早速みてまいりましょう!
本研究の背景
本章の研究の背景として、日本企業の多くで「高度外国人材」が活躍しづらい状況があることに触れています。
高度外国人材には、イノベーションを創出するなど、日本人社員とは異なる独自の視点で主体的に行動することが期待されています。しかし、それができていない現実に対してジョブ・クラフティングが役に立つのでは、ということで、本研究が行われることとなりました。
日本企業のジョブ・クラフティングの特徴
ちなみに、日本企業の人的資源管理(日本型HRM)の特徴とは、「ライフタイムコミットメント(働く人と職場共同体との生涯にわたる強い結びつき)」「年功賃金」「企業内労働組合」の3点とされています(Abegglen, 1958)。
また、日本企業におけるイノベーションのプロセスを理論化した『SECIモデル』(野中&竹内, 1996)では、「目標への思い」「集団的なコミットメント」「自律性」がある社員が、チームで知識創造プロセスを実践することで、現場からイノベーションが起こる、と述べています。
そこで「高度外国人材が、日本型HRMのメリットを活用しながら、ジョブ・クラフティングを行う」には、どのような条件があるのか? を検討したのでした。
インクルーシブ・リーダーシップとは
さて、本研究のテーマの一つが「インクルーシブ・リーダーシップとジョブ・クラフティングの関係」についてです。
ではそもそも、組織における「インクルージョン」とは何なのでしょうか?
Shore et al,(2011)によると、このように説明されています。
研究の概要
本研究において、分析対象者347名(高度外国人材)、比較対象者の350名(日本人社員)に対して、以下の3つの尺度を調査しました。
上記をリッカート6段階で調査をし、年齢と性別で相関分析、重回帰分析、交互作用分析を行いました。
インクルージョンを促進するリーダーシップが「インクルーシブ・リーダーシップ」という概念で説明されており、「個性の発揮」と「職場からの受け入れ」の両面を高める行動であるとしました。(Randel ea al, 2018)
ちなみに、インクルーシブ・リーダーシップの尺度は以下の9つが示されています。
仮説と結果
では、この研究の結果、どのようなことがわかったのか。
平たく言えば、高度外国人材の場合は「情緒的コミットメント」のJC(タスク・クラフティング)への影響が高いことと、「インクルーシブ・リーダーシップ」が高いと、情緒的コミットメントが低くとも、JC(タスク・クラフティング)が高い傾向があることがわかりました。
以下、それぞれの仮説と結果についてまとめます。
本研究のポイントをまとめると、以下の2点となります。
わかったこと1:JCには「情緒的コミットメント」が、特に重要である
高度外国人材、日本人社員のいずれにおいても、インクルーシブ・リーダーシップの水準に関わらず、JCの水準が高いことがわかりました。日本型HRMにおいてJCを実現するには、「情緒的コミットメント」が重要だと考えられます。
わかったこと2:JCには「インクルーシブ・リーダーシップ」が重要である
高度外国人材においては、情緒的コミットメントが低水準の場合において、インクルーシブ・リーダーシップがJCを高める効果がありました。
まとめと個人的感想
こうした研究所を読み進めるのは、ビジネス書よりも、私の場合、ずっと時間がかかります。
しかし、丁寧な理論の解説と、研究の背景、そして調査の結果を読み解いていくことで、ジョブ・クラフティングという理論と実践の全体像が、少しずつ理解できた気がします。
当然ながら、こうした有益な知見をまとめるのにはもっともっと膨大な時間がかかるわけであり、こうした知見を活用できるようにまとめられた著者の高尾先生、森永先生始めとした、多くの研究者の皆様に尊敬と感謝の念を覚えている次第です。
時間はかかりますが、漆塗りのように少しずつ読み進めていけば、毎月1冊読むだけでも、12冊の骨太の本が読めるので、自分の学習にも良いリズムになるな、と感じた次第です。
改めて、最後までお読み頂き、ありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?