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VIAの「24の性格の強み」はすべて「良い性格」につながる?! ー強みのバイファクターモデルー

こんにちは。紀藤です。本記事にお越し下さり、ありがとうございます。
本日も「強み」に関する論文の紹介です

今日の論文

Is Good Character All that Counts? A Comparison Between the Predictive Role of Specific Strengths and a General Factor of "Good Character" Using a Bifactor Model
「良い人格がすべてか?特定の強みと「良い人格」の一般因子の予測的役割の比較:バイファクターモデルを使用して」
Journal of Happiness Studies, 2023年
Tommaso Feraco, Giorgia Cona


30秒でわかる論文のポイント

  • ピーターソンとセリグマンは2004年に、性格の強みが個人の幸福や成長に重要であることを提案し、ポジティブ心理学の研究で注目されてきました。

  • しかし、従来の研究結果では「性格の強み」の構造に関して再現性が低く、信頼性に疑問が残っています。

  • そこで、13,439人と944人の異なるサンプルを使って性格の強みを調査しました。バイファクターモデルという手法を用いて、強みを「良い人格」の一般的な要因と、24の具体的な性格の強みに分けました。

  • その結果、一般因子が参加者の人生満足度や精神的健康を強く予測する一方、感謝や希望、活力以外の具体的な強みはほとんど予測に寄与しなかったことがわかりました。

  • 具体的な強みの役割は限定的であり、一般因子が多くの心理的結果を予測することが確認されました。

「性格の強み」の因子構造は、ほんとうはいくつなのか?

さて、これまでの研究で、VIAの強みの構造は、「知恵」「勇気」「人間性」「正義」「節制」「超越性」の6つの美徳(因子)に分かれると述べられてきました。

 しかし、研究によっては3つになったり、4つになったり、5つになったりと安定せず、確認的アプローチでの研究もほとんどありませんでした。またそうして分けられた因子も、名前も違っていたり、なんとも曖昧です。。

 とはいえ、どのような性格の強みの24項目を、どのようにわけたとしても一貫して「主観的幸福感」「人生満足度」などを予測することがわかっています。そこで研究者らは「24の性格の強み」に共通する「一般因子(良い性格)」というものがあるのではないか、と仮説を立てたのでした。

一般因子と特異的因子とは?

さて、本論文の中でややこしいと感じたのが、「一般因子」と「特異的因子」と呼ばれる表現です。
 「24の性格の強み」に共通する特性が「一般因子、そして24のそれぞれに固有の特性が「特異的因子」とされますが、抽象的で何が何やら・・・と当初混乱しました。この違いについて、簡潔にまとめてみたいと思います。

一般因子(General Factor)

一般因子は、すべての性格強みに共通する広範な特性です(この研究では、「良い性格」としてまとめられています)。つまり、「向学心」だけでなく、感謝、希望、熱意など、すべての性格強みに共通して見られるポジティブで道徳的な特性を含む要素です。

たとえば、一般因子に基づいた「向学心」は、全体的な人格のポジティブな部分としての学習への意欲や好奇心を反映しています。具体的には、以下のような広い特性となります。

<一般因子からみた「向学心」の例>
・向上心や学びたいという姿勢
:新しい知識を得たいという強い意欲が、学びそのものを楽しむ理由として現れる。
全般的なポジティブな人格:学ぶことに対して前向きな態度を持ち、それが自己成長や社会貢献に役立つという認識。
他の強みと関連する:向学心を持つことで、感謝や粘り強さ、正直さといった他の強みともつながりがある。

特異的因子(Specific Factor)

特異的因子は、各性格強みに特有の要素を指します。この場合、「向学心」そのものに特有の要素が、他の強みとは独立して強調されます。

特異的因子としての「向学心」は、学ぶこと自体に対する特定の興味や喜びを表します。これは他の性格強みとは異なり、純粋に「学びたい」という気持ちや「新しい知識を追求する楽しさ」に関係します。具体的には、以下のようになります。

<特異的因子からみた「向学心」の例>
・知識への飽くなき追求
:好奇心だけでなく、知識を深め、実際に応用することに喜びを感じること。
勉強や調査を楽しむ:学習そのものが目的であり、そのプロセス自体を楽しむ。
達成感や満足感:学んだ結果を他者にシェアすることや、自分の知識が成長することで得られる達成感。

たしかに、「向学心」の中には、「積極性・ポジティブな姿勢」のような他の24の性格の強みの中にも含まれている特性(=一般因子、つまり「良い性格」)と、「学んで向上したい」という独自の因子(=特異的因子)が混ざって存在しているのは、言われてみたらそうだよな・・・と感じました。

一般因子と特異因子のが24の強みを形作ることを示した「ニ因モデル」

研究の結果わかったこと

さて、これらの仮説について、13,439人(海外)のと944人(イタリア)のサンプルを元に、二因子構造が適合するかを調査した結果、この仮説の確からしさが確認されました。

その他、以下のことが分かりました。

「一般因子」と参加者の生活満足度との関係は、中程度の正の関連性を示した(β=0.44)。ただし、特定の「性格の強み」と人生満足度の関連性は無視できる程度であった。
・具体的には、「感謝」(β=0.46)、 「希望」(β=0.39)、 「熱意」(β=0.28)のみが、人生満足度と正の関連を示した。
・他の「性格の強み(勇気、創造性、親切心、謙虚さ、社会的知性など)」は、わずかながら人生満足度と負の関連性があった(-0.16<β<-0.10)。
・上記以外の「16の性格的な強み」は、人生満足度との関連はごくわずかだった(β<|0.10|)。
・まとめると「一般因子」、ならびに特異的因子の「感謝」「希望」「熱意」が、「人生満足度」「精神衛生」「抑うつ不安ストレス」に正の関係を示した。

SWLS=人生満足度尺度、GHQ=一般 的精神衛生質問票、DASS=抑うつ不安ストレス症状。

まとめと個人的感想

バイファクターモデルというものを初めてしりましたが、一つの強みの中にいくつかの要素が含まれている、という視点が興味深かったです。

また、VIAはパーソナリティや認知要素はあるものの、行動的な次元が低い、と述べられていたのも、強み診断の特徴(そして限界)として検討できるものなのだな、と感じた次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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