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沖縄ウルトラマラソン100kmを走って思ったこと。ー3つの教訓ー

12月15日(日)に『沖縄ウルトラマラソン100km』に、参加をしてきました。「沖縄」✕「ウルトラマラソン」という組み合わせだけで、なんだか楽しげです。沖縄、恐るべし。
公式ページも、「海外線を見ながら走る最高のローケーション!」となんだかバカンス感を覚えますね。

とはいえ、100km走るのですから、まあきつい。
そして、楽しそう~!とか油断しているときは、特に危ない。

今日はそんな「沖縄100kmマラソンに参加して思ったこと」について書いてみたいと思います。ゆるりとご覧いただければ幸いです。

100kmマラソンは朝5時に始まる

フルマラソン(42.195km)でも、多くの人にとってはよくわからない。
ウルトラマラソン(100km)となると、ますますよくわかりません。

簡単にウルトラマラソンについて伝えると、「フルマラソンを超えた距離を走るマラソン」のことです。だいたい100kmを表すことが多いです。
制限時間が14時間となっている場合が多いです。
場所は様々ですが、その地域のカラーが楽しめる魅力的なイベントになっていることもしばしばです。

沖縄ウルトラマラソン100kmは、沖縄南部の与那原(よなばる)からスタート。そして有名な平和記念公園などを通り過ぎて、空港近くの糸満市に行き、折り返すコース。

朝5時にスタート。そして夜19時までに帰ってこれば「完走」です。

コースはこんな感じ。https://www.okinawa100k.jp/course/

朝5時スタートし、そこからは暗闇の中、走り始めます。

よくある光景ですが、皆最初は楽しげにしゃべっています。
でも、だいたい50kmもすぎると、みんな地蔵のように黙っています(笑)

個人的な趣味として「楽しそうにしゃべっている人が、後ほどめっちゃ大変そうに走るんだろうなあ~」と想像するのが好きです。悪趣味ですみません。

朝から何百名ものスタッフの方が交通誘導をしてくれたり、給水所でサポートしてくれるのが、ありがたい限りです。

走り続けると、段々と空が明るくなってきました。

どこまでも走れる気がする

日の出は6:59。

朝7時、20km地点。少しずつ夜が明けてきました。
海岸が明るく照らされて、とても美しいです。

まだ足に余力もあり、景色を見る余裕もあり「楽しい」です。

朝7時。百名ビーチ。美しい・・・

20~35kmも比較的快調でした。

1km6分位のペースで安定しており、1時間に10km進みます。
準備不足なので、急に走力は上がるはずはない。

なのに、愚かにも「序盤がこんなに元気なら、これからもずっとこんな感じで行けるのでは?」と『錯覚』してしまうのです。そして、意気揚々と前にいる人を抜かして、どんどん前に出ていきました。

ああ!マラソンって楽しい!
どこまでも走り続けられる気がする・・・!

後ほど大いに後悔することになるとも知らずに。

足に異変。「薬」でごまかす

35km地点に差し掛かったとき、足に異変を感じました。

ハムストリングス(ももの裏)とふくらはぎに、痛みを感じ始めました。
走るたびに、ズキリズキリと痛みます。

ここで秘密兵器「ロキソニン」(痛み止め)を取り出します。

強力な鎮痛作用があるため、走っている時に飲むと、楽になります。
この行為はランナーでも賛否両論あります。「自分の足だけで走るのがランニングだ!」という人もいるようです。しかし、ドーピング規定には当てはまらないので、個人的には「使えるものは使えばええやん」と思っています。

ロキソニンの効力は3~4時間くらいです。しかし、スポーツの強く繰り返し襲う痛みは、もう少し早めに効果が切れます。

飲みすぎると、胃が荒れてしまい、そして食べることもできなくなる。
すると栄養補給に失敗し、走れなくなるので、「走ること」「食べること」「薬でごまかすこと」の絶妙なバランスのマネジメントが重要になります。

▽▽▽

ロキソニンの効果を感じつつ、50km地点まで到達しました。

朝10時。糸満市はエメラルドグリーンの海に囲まれ、美しかったです。

糸満市 50km地点

心が折れ始める

しかし55km、65kmと進むうちに、段々と足が重たくなってきました。

ロキソニンは別に走力をあげてくれるわけではありません。
練習不足だった私は、自力が足りていませんでした。
息が上がり、体が重い。

そして、完全に立ち止まってしまいました。

(なんで俺、ずっと走れると思ってたんだろう・・・)

20~35km地点で意気揚々とペースを上げていた自分を呪わしく思います。
楽観的に考え最初に飛ばしすぎ、エネルギーを使い果たし、後半に失速する。何度も同じ轍を踏む自分を、疲れた体がネガティブに感じさせます。

心が折れるというより、しなしなになっていました。

一度心が萎えると、簡単に立ち止まってしまいます。
いかんいかんとちょっと走ってみる。でもすぐに立ち止まってしまう。
心拍はさほど上がっていないのに、息が切れたように感じる。

沖縄ウルトラマラソンをゆるく考えていたのが、ここで影響しました。

練習を重ねたわけではなく、100kmマラソンのゴールタイムを設定していたわけでもなく、完走をできればくらいに思っていました。

そんな中、それでも思うのです。

「結局、自分が走らないと、このレースは終わらない」。
「そして、全力を出さないと後悔する」

当たり前の事実ですが、そこに意識を集中させることにしました。
気持ちの方向が定まったように思いました。

「町の牛乳屋さん」を追いかける

65km地点からは、自分自身でペースを刻むことはできなくなっていました。

でもレースを投げる(歩く)のは、イヤだ。

今できる最大限で走りたいと思った時に「追いつける人にくっついていこう」と思いました。名付けて「くっつき虫作戦」。

そんな矢先、赤いTシャツに白の文字プリントで「町の牛乳やさん」と書いているおじさんがいました。細身ながら力強く、リズミカルな足どり。
後ろ姿から、兵(つわもの)の匂いがします。

彼をロックオンすると、後ろ2mほどをぴったりとくっつきました。
彼を追いかける追いかける、と唱えました。

すると、またペースが復活してきました。
それでも「町の牛乳屋さん」はあまりに速く、しかもペースが落ちません。(彼は、走って牛乳を届けているのだろうか?)とどうでよい疑問が湧いたときに、「一瞬だけ・・・」と立ち止まってしまいました。
すると、あっという間に彼の姿は見えなくなりました。

ただ、気づけば5km進んでいる・・・!
『誰かの背中についていくことで、前に進める』と体感しました。

その後も、びっこを引いているのにめちゃくちゃ早い「龍神さん」などをベンチマークし、足を前に進めていました。

70kmグスクロード付近
背中を追いかけるのだ・・・

胃が荒れて食べられない

75km地点をすぎると、足だけではなく、「胃」の調子も悪くなってきました。

度重なる水分補給で、胃液が薄まっているのか。
ロキソニンによる胃荒れなのか。

とにかく食べられない。

ゼリーを飲むのも気持ち悪い。
コーラも、スポーツドリンクも全部気持ち悪い。
唯一、水を口に含んで吐き出すだけになっていました。

しかし、栄養補給をせずに走ると、エネルギーが不足してきました。
目眩のような感覚がして、急激な睡魔が襲ってきました。
道の途中に腰掛けて、一瞬目を閉じます。
次のエイド(給水所)で、少しでもいいから、とおにぎりを無理やり何度も噛んで胃に流し込みました。

▽▽▽

あと20km。
目の前の人を見つけて、そして追いかける。

あと10km。
ゴールが見えかけたときには、恒例のZARDの『負けないで』を発動。
澄んだ歌声と「♪ゴールは近づいている」の歌詞のリンクに、今のところ100%の確率で泣けます。心を揺さぶられ、涙すると脳内ホルモンにより、苦痛が癒えます(これを狙っている)

16時35分、無事ゴール。
タイムは、「11時間36分」でした。

FINISH

沖縄100kmで得た3つの教訓

さて今回のウルトラマラソンを振り返って、思うこと。
それは主に「3つの教訓」についてです。
以下、まとめてみたいと思います。

教訓1:楽観性バイアスに気をつけるべし

快調なときは「どこまでもいける」と、後のことを考えずに調子に乗ってしまいます。ただ、快調なときはずっと続きません。

良いときだからこそ、堅実に、粛々と、守りも考えること。
今回は正直「楽しい」よりも「つらい」ほうが大きいレースでした。

たぶん、人生全般でも、同じことが言えそうです。
「トータルで考える」のが大事なのでしょうね。

教訓2:一歩先を行く「誰かの背中」を追いかける

目標も見つかず、心も折れかけ、でも諦めたくはない。
そんなときは「同じように頑張っている目の前の誰か」を追いかけること。

他者依存的に感じるかもしれませんが、それで自分は前に進むことができるなら、大いに頼ればよい、と思います。

ランニングのような1人のスポーツですらそう。
相互作用がある人生、仕事などでは、尚更そうなのだろうな、と思います。
一歩先行く人を見つけて、自分を引き上げてもらうのは、とても大切な戦略だな、と思いました。

教訓3:レースに出て、自分を磨き続ける

最後は、「レースに出続ける」ということです。

こうしたウルトラマラソンはやめた瞬間に、走力は一気になくなります。
走力も、技術も、獲得した瞬間に終わりではありません。

何度もやっていますが、走力を一時的に上げる維持するとよりも、自分の走力を維持したり、楽しみ続けるほうが難しい。

だからこそ「出続ける」「磨き続ける」という姿勢こそが大事だと感じます。

最後に

今回、ボランティアの人がみんな優しく、学生さんと思われる方も、たくさんサポートしてくれていました。

また参加されている人通しで声をかけあったり、本当にあたたかく、励まされるレースだと思いました。

まだまだ第7回目と、歴史も浅い「沖縄ウルトラマラソン」ですが、50kmの部、22.5kmの部もあるので、ぜひご興味がいれば参加いただければ、沖縄の魅力も感じられるかと思います。

大学院の仲間とも一緒に参加できて、合宿的なノリも楽しく、素敵な思い出がまた一つ刻まれました。引き続き、色んなレースを楽しんでいきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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