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説得力がすごい…!「強みに基づくジョブ・クラフティング」が従業員の創造性に与える影響についての研究論文

はじめに

こんにちは。今日は、皆様に「強みとジョブ・クラフティング」に関する論文について、ご紹介したいと思います。
本日、引用させていただく論文は、Yang ea al(2021)『強みに基づくジョブ・クラフティングと従業員の創造性:仕事の自己効力感と職場の地位の役割』です。
 端的に言えば、「強みを活かしたジョブ・クラフティング」が、「仕事の自己効力感」を媒介し、「従業員の創造性」に影響を与えたという調査論文です。「強みっておいしいの?」(=仕事に役立つの?成果に影響があるの?)という疑問に定量調査による研究であるため、とても説得力がありましたし、関連する論文を読むことで、実際の職場にも活用しやすい印象を受けました。ということで、早速みてみましょう!

【本日の論文】
Yang, Zheng, Pingqing Liu, and Zunkang Cui. (2021). “Strengths-Based Job Crafting and Employee Creativity: The Role of Job Self-Efficacy and Workplace Status.” Frontiers in Psychology 12 (December): 748747.

なぜ強みに基づくジョブ・クラフティングが重要なのか?

「決められたことだけやるのではなく、これからは創造的(クリエイティブ)に仕事をするのが人間の仕事だよね」みたいなお話は、特に最近よく聞くお話です。誰でも出来る仕事は、AIに代替されてゆく・・・と。
 実際のところその通りで、従業員の創造性(Employee Creativity:EC)は、組織が課題に対処し、競争力を維持するための重要な資産とされているようです。ま、言われてみたら、確かにそう。「明確に、誰でもわかるように指示されたら、それとだけやります」なんて言われたら、ちょっと頼みますよ、、、と言いたくなるし、ChatGPTにとりあえずアウトプットを求めたくなりそう。

さて、そんな「創造性」を生み出す先行要因の一つに、今回取り上げる「ジョブ・クラフティング」があることが、これまでの研究でわかってきました(Bruning and Campion, 2018)。
「ジョブ・クラフティング」は、従業員の自発性によって職務特性(タスクの境界・人間関係の境界・認知(仕事の捉え方)の境界)の3つを変化させることです。
 また、ジョブ・クラフティングには、その主体的な適応を「役割」と「資源」という2つの概念に反映させるとしています。
「役割」の適応をする場合、上記の3つの境界を変更させ、「資源」の場合、仕事資源の増加や困難な仕事要求の減少を追求する傾向があるそうとされます。
 いずれにせよ、ジョブ・クラフティングは、職務の制約の中で、個人が自発的な変化を及ぼそうとすることであり、これは内発的動機づけ要因にも影響を与えます。

さて、そんな中で、もう一つ注目したいことが「個人の強み」です。「強み」とは”一貫して完璧に近いパフォーマンスを提供する能力(Kluger, 2011)”という定義があります。「職務の役割」への適応をする際に、自発的に職務のタスク・人間関係・認知を変更しようとする(ジョブ・クラフティングする)ことができるわけですが、ここに「個人の強み」を活かすと、更に新しいアイデアの創ることや、資源を増やすことが容易になる、と考えました。

なぜ、ここで強みなのか?それが、これまでの「強みを基づくジョブ・クラフティングの先行研究」から考えた本研究の着眼点です。
第1に、個人の強みに応じて仕事を創ることで、従業員は活力に溢れ、生産性が高く、満足感を得ることができる(Dubreuli et al, 2014)という研究があること、第2に強みに基づくジョブ・クラフティングによって、従業員は職場における統制感・自律性・真正性を形成できる(Linley and Harrington, 2006)という研究があること、第3に強みに基づくジョブ・クラフティングは、従業員が仕事中にフローに似た集中状態を経験する事を促す(Schutte and Maloff, 2020),に著者らは注目しました。

また、強みに基づくジョブ・クラフティングは、従業員の「職務自己効力感(Job Self Efficacy)」に影響を与えます。自己効力感は、Bandura(1977)の研究が有名で、自己効力感を高める4つの方法(直接的達成経験、代理経験、言語的説得、生理的・情動的喚起」があるとしています。強みに基づくジョブ・クラフティングは、個人の「直接的達成経験」の自己肯定感に貢献するとされています。また、強みによって起こる肯定的な感情(情動的喚起)も自己効力感を高めることがわかった、と述べています。そして、自己効力感が高いことは、アイデアの生成や探索に必要なことであるため、「創造性」にも影響をあたえると考えました。

どんな研究を行ったのか?

理論モデルと仮説

さて、上記内容を踏まえて、本研究では理論モデルと仮説を述べています。簡単に伝えると、”「強みに基づいたジョブ・クラフティング」が「職務自己効力感」を媒介し、「従業員の創造性」に影響を与える”、というのが、ざっくりとした流れです。

そしてもう一つが、「職場の地位(Wokplave status)」とありますが、こちらについては、職場の地位が高いと、ポジティブなアイデンティを持っており(=自分の能力に対する有能感も感じられる)、かつ、地位が高いというゆえで、より公平かつ多くの支援を受ける可能性があります(Lount et al)。(職場の地位は、アイデンティティの一つの要素でしかありませんが。「オレってすげえ」と思わせるのに十分なパワーがあるということですね)
よってこの、「職務の地位」が「職務自己効力感」を調整する要因になると仮説を立てています。

以下、本論文の仮説と、理論モデルです。

  • 仮説1:「強みに基づくジョブ・クラフティング」は、「従業員の創造性」と正の相関がある

  • 仮説2:「職務自己効力感」は、「強みに基づくジョブ・クラフティング」と「従業員の創造性」の関係を媒介する

  • 仮説3:「職場の地位」は、「強みに基づくジョブ・クラフティング」が「職務自己効力感」に与える影響を正に緩和する。また職場の地位が低いよりも高いほうが、自己効力感に対して強い正の効果を持つ

  • 仮説4:「職場の地位」は、「強みに基づくジョブ・クラフティング」と「従業員の創造性」の間の「職務自己効力感」を介した間接的な関係を、正に緩和し、職場の地位が低いよりも高いほうが影響が強い

調査の手順

  • 参加者

    • 105名

    • 中国のイノベーション志向の技術会社95社より収集。

    • 多くはミドルマネジャーまたはジュニアマネージャー

  • 調査項目

    • 「強みに基づいたジョブ・クラフティング」(9項目)(koojiら2017)

    • 「職務自己効力感」(4項目)(Wilk and Moynihan,2005)

    • 「従業員の創造性」(7項目)(Gong,2009)

    • 「職場の状況(職場の地位)」(5項目)(Djurdjevicら, 2017)

    • 「コントロール変数」(性別、年齢、学歴、勤続年数)

  • 調査の進め方

    1. 参加者105名に、彼/彼女らの部下5名を選んでもらった。

    2. 上記の調査項目に関するアンケート用紙を配り、参加者である上司・部下それぞれに記入をしてもらった。

    3. そして、上司の部下に対する評価と、部下の自己評価をそれぞれ収集し、手作業で突き合わせて、それぞれの評価を比較した。

調査の結果わかったこと

仮説は全部、支持されました

”仮説1:「強みに基づくジョブ・クラフティング」は、「従業員の創造性」と正の相関がある”とありましたが、以下の図(列6と行7の交差)より支持されていることがわかります。

表2

”仮説2:「職務自己効力感」は、「強みに基づくジョブ・クラフティング」と「従業員の創造性」の関係を媒介する”とありましたが、こちらは論文に示されているモデルにて示されていました。(ちょっと複雑なので割愛します)

そして、仮説3と仮説4の”「職場の地位」は「強みに基づくジョブ・クラフティング」と「職務自己効力感」に与える影響を緩和する・・・”というなんだか分かりづらい内容については(私の頭が弱いだけ)、以下図に示された結果を見るとイメージがつきやすいです。こちらを見ていただくと、

  • 「強みに基づいたジョブ・クラフティング」が”低い”と、「職務自己効力感」も”低い”、そして

  • 「強みに基づいたジョブ・クラフティング」が”高い”と、「職務自己効力感」も”高い”

  • 「職場の地位」が”高い”ほうが、「職務自己効力感」は”高い”(仮説3)

  • 「職場の地位」が”高い”と、職場の地位が低いよりも「強みに基づいたジョブ・クラフティング」が”高い”(仮説4)

となっております。

図2

まとめ

今回の論文のポイントは、以下の点であるとされています。

  1. 「強みに基づくジョブ・クラフティング」が、「従業員の創造性」の先行変数となっていることに注目したこと

  2. 「強みに基づくジョブ・クラフティング」と、「従業員の創造性」の間の「自己効力感」のプロセスを明らかにしたこと。

  3. 「強みに基づくジョブ・クラフティング」が、「従業員の創造性」に及ぼす効果を伝達する影響メカニズムを明らかにしたこと。(自己効力感や職場の地位など)

こうしたことが明らかになることで、強みに基づくジョブ・クラフティング、すなわち強みを活用しようと仕事を再設計する時に、自己効力感や職場の地位の影響を考慮して関わることができるようになるのでは、としています。

また、本論文の中で「強みに基づくジョブ・クラフティングの尺度」(Kooji, 2017)が紹介されていましたが、「なるほど、そういう尺度の作り方もあるのか、、、!」と個人的に勉強になりました。

これまではワークエンゲージメント、自尊心などの成果への影響が多かったのですが、「従業員の創造性」への影響という観点もあるのだ!と発見になった論文でございました。

(おまけ)
本当に、こうした数字だらけのレポートを読むのが極めて苦手なので、ひたすらわかったフリをする能力ばかり高まっていましたが、最近追加されたChatGPTの画像読み込み機能に、キャプチャをとってぶち込む(!)と、懇切丁寧に解説してくれます。それを多様しまくって読んでいますが、格段に楽になりました。。。何度同じことを聞いてもちゃんと返してくれる。。ほんと、ありがたい。

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