関連論文を可視化するツール「Connected Paper」の特徴と使い方
特定の領域について、深く知りたい。
先人の知見を収集し、専門性を高めたい。
ある領域の全体地図を手に入れるためには、一つの論文や入門書を読むだけでは足りません。では、どうすればよいかというと「特定の領域の論文を芋づる式に掘っていく」ことが、一つ有用です。
今日は、そんな学びの中級者向け(大学院生など)に、お薦めの論文検索方法についてあるツールをご紹介したいと思います。論文を芋づる式に掘る上でとても便利で、私自身「強み論文100本ノック」を行う上で大いに活用していました。
その名は「Connected Paper」。
今日はそのツールの内容と、おすすめの使い方についてご紹介いたします。
関連論文を可視化するツール「Connected Paper」
「Connected Paper」という論文検索ツール。これは論文同士の関連(ネットワーク)をグラフ化して可視化し、論文の探索を可能にしてくれるツールです。
使い方は簡単で、以下URLの検索窓に「論文名」を入力するだけ。
すると、関連がある論文がグラフとして表示されます(1ヶ月あたり5グラフの作成まで無料)。
使い方の例
では、具体的にどんな風に使うのか?
ひとつ例を挙げて考えてみたいと思います。
たとえば、あなたが「新入社員や中途入社の社員が、上手く組織に馴染み、パフォーマンスを発揮するプロセス」について知りたい、と思ったとしましょう。これを「Connected Paper」を使って、関連論文を広げ、その領域にある程度精通するまでのステップをどうするか、です。
実は、Connected Paperだけ知っていても、なんとも使いづらかったりするので、他のツールも含めた一連の流れとしてまとめてみます。
ステップ1:現象を「専門用語」に置き換える
まず、この「新入社員や中途入社の社員が~・・・」と気になることを文章でそのまま入れても、該当する論文を見つけるさせることはできません。
ポイントは、それらの気になる現象を「組織行動の専門用語」に置き換えて検索をする必要があります。我々、一般Peopleが気になる現象は、概念や理論としてだいたい言葉として定義されているものです。
なので、このあたりはChatGPTあたりに聞けば、教えてくれます。
実際に上記を聞いてみると、こんな回答となりました。
はい、ということで「新入社員や中途入社の社員が、上手く組織に馴染み、パフォーマンスを発揮するプロセス」は「オンボーディング」(Onboarding)、「組織社会化」(Organizational Socialization)というキーワードで表されることがわかりました。
ステップ2:専門用語を「GoogleScholar」で調べる
気になる現象を示す「専門用語」がわかったら、最初の論文を探します。
ここは「GoogleScholar」がおすすめです。
たとえば、先の例の組織社会化であれば、GoogleScholarに「Organizational Socialization review」といれてみます。レビュー(Review)を追加しているわけですが、レビュー論文とは、論文をまとめた論文のこと。
reviewと入れてレビュー論文を検索することで、その領域の主要な論文にアクセスしやすくなります。
実際に、その内容で検索してみました。すると、組織社会化(Organizational Socialization)の上で、主要な論文が表示されました。
論文のタイトルの下には「Cited by(引用) 1354」というように、その論文が引用されている文献の数が表示されています。「引用される=他の研究・論文の参考にされている」わけであり、引用されている論文は影響力があり、信頼性も高いと考えられます。
そして、引用数を参考にしつつ、論文の概要を見てみます。
どれからみるかは状況によります。興味がある、あるいは自分が調べたいプロジェクトに役立ちそうと思われる論文を、その概要だけ1分くらいで目を通します。その上で、内容が合致していれば、じっくり読むことを決めます。
そして、その論文は軸となる論文として読んでみることがよいでしょう(英語論文なら、DeepLを使って翻訳して読めばよいです)。時間はかかるかもしれませんが、読んで地味にまとめることが、知識を自分のものにするために一番の近道です。
ステップ3:Connected Paperで、他の論文を探索する
そして、ここからが本日のメインテーマ。
ステップ2までで、その領域の論文を1つ読んだとします。しかし、論文を1本読んだだけでは、「その領域の専門性を高める」というのには届きません。
一つの国、学会、研究者だけではなく、複数の研究者の視点や研究も参考にしてこそ、その論文も深く理解できるのです。
ということで、「他の論文を探索する」のです。
探索の仕方は、2つです。1つ目がConnecter Paperは使わず、「引用論文から広げていく」パターンです。論文には引用論文が必ず掲載されていますので、元論文に登場してきた他の論文を旅に出かけるように読むのもよいしょう。新しい概念などと出会えて、専門性が深まっていきます。
そして2つ目が「Connected Paper」で掘り下げる方法です。
たとえば検索窓に、引用数が2305ある「Newcomer Adjustment During Organizational Socialization: A Meta-Analytic Review of Socialization: A Meta-Analytic Review of Antecedents, Outcomes, and Methods Antecedents, Outcomes, and Methods」のタイトルを入れます。
するとこのような表示が現れます。
そして、ここから過去の論文に遡ったり、未来の繋がっていく論文を探したりしていきます。優先順位としては◯が大きい、影響力が大きい論文から見ていくとよいかもしれません。
こんな風に、一つの論文を見つけ、読んだ後に、同じテーマで、影響力がある関連論文を探索していくこと。これを3~5回ほど繰り返して論文を読んだとすると、その領域についての概念や理論、課題の解像度が、ぐっと高まること間違いなし!だと思います。
まとめ
ということで、今日は「Connected Paper」の特徴、またそれも活用した論文検索、その領域の専門的知識の高め方について解説をしてみました。
これが正解というわけでもありませんが、一つの方法として活用いただければと思います。今週末は、大学院生向けの「論文読み方・調べ方講座」(これらの内容が授業の一コマになります)です。
改めて、色んな方法がありますし、論文検索って面白いなあ、と思った次第です。最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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