見出し画像

スタートアップと大手企業の「カルチャーづくり」の違いとは?

こんにちは。紀藤です。先日、知人の経営者が主催するHR勉強会へ参加してまいりました。某超大手企業(いわゆるJTC)のCHROの方をゲスト講師にお招きするクローズドな勉強会に参加してまいりました。

参加されている方は、スタートアップ系の役員、人事責任者を中心に10名ほど。濃厚な学びの場であり、考えさせられる時間でもありました。

今日はそのお話からの学びを、共有させていただければと思います。
それでは、どうぞ。


リアルな人・組織づくりで必要なこと

私は立場上、人材開発・組織開発の外部支援者の役割を担うことが多いです。中長期的に伴走させていただく案件もあるものの、「フィードバック文化を浸透させる」とか「次世代リーダーを育成する」など、特定のプロジェクトであるため、関わりの範囲としては限定的な役割です。

一方、今回のゲスト講師の方、何万人規模の「CHRO」の立場の方のお話は、たいへんスケールが大きいものでした。経営戦略と組織戦略の接続、採用、配置、評価・報酬制度、育成、組織文化づくり・・・全体をプロデュースしながら、何年もかけて、その方向を変えていく。まるでタイタニック号を動かすようなダイナミズムです。

小さな規模では「なんとなく」「対話を通じて解決」でなんとかなっても、大きくなって、例えば上場をして、多様な人材が働くようになると、ある程度の仕組みが必要になります。

引用:湯元健治,パーソル総合研究所『日本型ジョブ型雇用』(P142)より

その中で、実際に、現場で活躍されているCHROの方が、実際の組織づくりでやっていることが、とても参考になりました。

以下、一部ご紹介させていただきます。(クローズドの会でしたので、企業の具体名は伏せさせていただきます)

カルチャーが大事

組織のカルチャーとは、”自然に共有される言語やふるまい”のようなものです。たとえば「高圧的な文化」とか「感謝する文化」などですね。

こうした文化は、自然発生的に生まれるものですが、大事なのは『意図してカルチャーを生み出すこと』である、とのこと。

そのために必要なのは、「1.誰もが覚えられる言葉に落とすこと」です。たとえばGoogleを例に出すと、"Do the right thing" (正しいことをやれ)という行動規範がありますが、イメージとしてはそのようなものです。

そして、次に「2.評価基準に組み込むこと」です。「この半年間で、カルチャーをどれくらい体現できていたか?」を自己評価&ピアレビュー(5~6人)に評価をさせて、その上でマネジャーが業績と態度評価にカルチャーの実践度も含めて評価に入れていく。

最後に「3.報酬制度に組み込む」ことです。先述の"Do the right thing"をカルチャーにしたいならば、その行動を全社的に促進させる工夫が必要です。シンプルなのが、3ヶ月に1度の「アワード」のようなものを設けて、"Do the right thing賞”を体現した人を表彰します。
すると、「あ、会社はこれを求めているんだ」とわかると同時に、抽象的な"Do the right thing"のモデルとなる行動イメージが共有化されます。

ちなみに、面白かったのが、300人くらいまでだと「カルチャーを表す言葉を、あまり丁寧に解説しないほうがいい」という話が興味深かったです。

というのも、人ひとりが考えるという”プロセス”が大事であるから、とのこと。解釈の余地がない超具体的なカルチャーにすると、思考停止になり自分事として考えなくなる。
なので対話ができるレベルであれば、ある程度”あそび”を持たせておく、とおっしゃっていました。(ただし1000人を超えたり、多様性が増すとそうも言っていられないので仕組みが必要のようです)

「スタートアップ」のカルチャーづくり

組織では「人材ポートフォリオ」も大きな影響があります。

たとえば、ベンチャーでこれから大きくなっていくフェーズでは、どんどん戦略も組織も変わっていきます。朝令暮改も普通です。そのときに、入社を希望する人の志望動機は、事業が0→1と立ち上がるのを楽しむ人も少なくないようです。

 さらに規模が大きくなって、上場するフェーズになるとまた、変わっていきます。コンプライアンスや仕組みが必要になると、「以前は自由で良かった」と思われ、そして抜けていく人もいます。

ゆえに、成長期の組織では、人の出入りが多くなることも少なくないようです。あるケースでは、年間離職率25%という状況だった、とのこと。

そういう状況では、戦略に伴って変化する組織に対して、いわゆる”抵抗勢力”と呼ばれる人が離脱しやすい状況になります。従業員、役員を含めて、年間25%の離職率ですから、まるで身体の細胞が入れ替わるように、単純計算で5年で全細胞(全社員)が入れ替わることになります。

しかし、組織は、組織という生き物として成長を遂げていきます。

こうしたフェーズでは、人が変わるので「3~4年で組織が大きく変わった」とできるようです。なぜならば、人が入れ替わっているから、比較的変えやすい、とのこと。

「大手企業」のカルチャーづくり

一方、日本の伝統的な超大手企業は、また事情が違います。

日本企業の年間離職率は平均15%の程度とされています。ただし、大手企業は離職率、特に年齢が40歳を超えると、ほとんど離職しない傾向があります。すると、労務構成(従業員の年齢構成)は、必然的に「逆ピラミッド型」になります。ある大手企業では、50%以上が50歳以上とのこと。

https://www.resona-biz.jp/personnel-work/types-of-age-pyramid-01/

年齢が高い人がどうこう、ではないですが、やはり人は安定や予測できる未来を求める側面があるため、どうしても年齢層が上の方は、変化への抵抗を示す場合も少なくないようです。

そうすると、定年として抜けるのを想定して、そのときにどう変わるまで想像しながら、「10年単位で組織づくりを考える」とおっしゃっているのが印象的でした。

まとめと感想

改めて、「組織とは生き物」のようなものだな、と思いました。

若くて成長中の組織(少年・青年時代)は、細胞(従業員)も短いスパンでどんどん入れ替わっていきます。新陳代謝が盛んです。しかし、その肉体全体としては、成長を続けていきます。

一方、ある程度、年齢を重ねると、細胞の入れ替わりのスピード、いわゆる新陳代謝が緩やかになっていきます。なんだかやたらと長くなる眉毛が増えてきます。

資本主義は「拡大と成長の追求」をする特徴を持ちますので、肉体として若くて成長中であることが相性が良さそうだ、と感じるのでした。

では、組織全体が高齢化する中で、どうやって、組織をつくっていくのか。人が足りない中で、どうやって成長を続けるのか・・・。

これから、ますます多くの組織に投げかけられる議題となりそうだな、と思った次第です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

いいなと思ったら応援しよう!