「強み注目のリーダーシップ」VS「欠点注目のリーダーシップ」、その特徴と違いとは?
こんにちは。紀藤です。さて、本日ご紹介の論文は「強みに基づくリーダーシップ能力の構築」なるものです。
ごく短い論文でしたがシンプルに、「欠点に基づくリーダーシップ」と「強みに基づくリーダーシップ」の違いをまとめており、改めて整理をすることができました。
ということで、早速見てまいりましょう!
本論文の背景
リーダーシップは、組織を率いたり、維持したりする上で求められていますが、現在の急速な変化の中で「強みに基づくリーダーシップ」が有効なのではないか、と本論文では述べています。
それは、従来の「欠点に基づくリーダシップ」を使い続けると、防衛的な組織文化が生まれ、責任回避、現状維持、リスクの最小化に焦点が当てられ、エンゲージメントの低下、平均的なパフォーマンスなどに繋がるからです。
そして、それは結果的に”急速な変化”に対応できず、個人にとっても、組織にとっても望ましい結果とはならないだろう、、、と。
ゆえに組織における「リーダーシップ開発プログラム」を設計し、提供する側は、この「強みに基づくリーダーシップ」の知識と能力を身につけるのを支援する道義的義務がある(!)と著者は述べています。
なるほど、、、道義的義務というなかなか強い言葉で「強みに基づくリーダーシップ」の必要性を訴えています。
では、そもそもですが「強みに基づくリーダーシップ」とか「欠点に基づくリーダーシップ」とはどのようなものなのでしょうか?
まずはその違いから整理をしたいと思います。
「欠点に基づくリーダーシップ」とは
「欠点に基づくリーダーシップ(deficit-based leadership)」は、これまでのマネジャーを問題解決者として見なすものであり、以下のような特徴を持ちます。
●ものの見方:欠点ベースのパラダイムを持ち、従業員を”修正すべき問題”として認識することが多いです
●行動:従業員の”弱点や欠点に焦点を当てた、業績に関する議論が中心となる傾向があります(Aguinas, Gottfredson, and Joo, 2012)。
●結果:欠点に基づくリーダーシップ行動は、組織文化等さまざまな側面に影響を及ぼします。以下3点が紹介されていました。
「強みに基づくリーダーシップ」とは
次に、上記に対極的な「強みに基づくリーダーシップ(Stregnth based-leadership)」は、以下のような特徴を持ちます。
●ものの見方:人々が本来持っている前向きな変化への意欲を活用することを重要視します。ネガティブなものからポジティブなもの視点をシフトすることに焦点を当てています。
●行動:成長と前向きな変化に対する学習と開放性を促進する職場環境を創造します。機会、可能性、エンゲージ、楽観、活力、イノベーション、着想、構想などの言葉がよく使われる傾向があります。
●結果:強みに基づくリーダーシップの結果として、以下のものが生み出されるとされます。
強みの基づくアプローチのポイント
さて、強みをベースとするリーダーは人々の潜在能力を引き出し、目標達成を促し、高いパフォーマンスを育むことを示しており(Kriflik and Jones (2002)は、本論文でも強みに基づくリーダーシップを推奨しているように思われます。
その中で、以下の点を注意点や推進する上でのポイントとして紹介していました。
(1)強みアプローチは弱みを無視することではない
さて、とても大事なポイントなのですが、強みをベースとするパラダイムは、弱点や課題の存在を無視するものではありません。弱点と課題を認識し、それを認めることに重点を置き、その上で、 弱点と課題を克服するための機会として「強み」を捉え直す事が重要なのです(Whitney, Trosten-Bloom, and Rader, 2010)。
成長とイノベーションを実現するために、弱点や課題を解消または最小化されるよう計画をすることがポイントです(Cooperrider and McQuaid, 2012)。
(2)強みの使いすぎに注意
また、強みに基づくアプローチは、他の戦略と同様に完璧でも万能でもありません。その一つが、強みの有無とその使い過ぎには強い相関関係があることです(Kaiser and Overfield (2011)。つまり、強みを使いすぎても、マイナス効果があるのです。
たとえば「迅速な意思決定」を強みとするマネジャーは 「状況分析や他者からの意見を求めるための時間」をとらないかもしれません。
逆に「協調的な意思決定」を強みとするマネジャーは「即断即決が求められる場面で即決できない」ことがあるかもしれません(=強みの使いすぎ)。つまり、強みを使いすぎると、相反するが補完的な行動 が少なくなる可能性がある、ということです。
(3)強み基づいたリーダーシップ開発プログラムの作り方
次に、もし組織内で「強みに基づくリーダーシップ開発プログラム」を検討する場合に有用な、ある原則があります。それは次のようなものです。
上記のポイントを押させることで、リーダーシップやビジョンを自分なりに意味づけし、個人個人が目標や夢を自己決定するように重んじることとなり、強みに基づいたパラダイムで人材開発をすることになります。
強み開発だ!と述べておきながら、問題解決型のアプローチでプログラムを開発しては「強みに基づくリーダーシップ」を育むことはできない、ということですね。
まとめと個人的感想
欠点ベースと強みベースのアプローチは、それぞれどのようなパラダイムを持ち、どのような行動を行い、どのような結果になるのか、という整理をすると、それぞれの特徴がより明確になるな、と感じました。
また、こうした書き方をすると「問題解決型アプローチ(欠点に基づくリーダーシップ)」が悪者のように見えるかもしれません。もちろん当時はそれで機能していたのだと思いますが、時代背景に合わせて機能するものが変わってきているという立場に立つことが、大事なんだろうな、、、と思いました。
そして、個人的なつぶやきですが、弊社で取り組んでいる「強みにもどついた人材開発・組織開発」も、Gottlieb, Gottlieb, and Shamian (2012)の述べている「原則」に従っているなあ、といところで安心(?)した次第です。
こういうアプローチ、やっぱり好きなんだなあ、とも思いました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!