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なぜ感謝行動が、援助行動につながるのか? ~読書レビュー『感謝と称賛』#6~

こんにちは。紀藤です。さて、先日より『感謝と称賛』(正木郁太郎 (著))書籍からの学びを共有させていただいております。

今日も引き続き、著書からの学びを共有させていただければと思います。本日は、第5章の「感謝の多様な効果 -助け合いを促すメカニズム-」がテーマです。それでは早速まいりましょう!


なぜ感謝行動が、援助行動につながるのか?

これまでの研究から、感謝行動がワークエンゲージメントや援助行動に影響を与えることがわかりました。

しかし、ここで疑問が湧きます。それが、
「なぜ感謝行動が、援助行動につながるのか?」ということ。

「感謝をする/される」と、利他性や道徳性が喚起される(道徳感情理論)
、物事のポジティブな側面を見るようになる(拡張-形成理論)、良好な対人関係を深める(find,remind,and bind理論)などにより、対人的な絆を深め、人間関係の満足を強め、ワークエンゲージメントや援助行動を高めるとも考えられます。

しかし、実際のところはわかりません。
ということで、本章では、「5つの要因が感謝行動と援助行動の間を媒介するのではないか?」と仮説を立て,検証したのでした。

研究の概要

さて、では具体的にどのような調査を行ったのでしょうか。
対象は1200人の企業で働く20-69歳に対し、「感謝の頻度と強度」を尋ねました。そして媒介をすると考えられる、以下「5つの媒介変数」を尋ねました。

<5つの媒介変数>
・メンバーへの信頼
・メンバーとの関係の近さ
・向社会的モチベーション
・社会的影響力の知覚
・組織支援の知覚
 

そして、各データの相関分析を行いました。

研究の結果:わかったこと

結果わかったことですが、大きく以下の点です。

(1)「感謝を表す」ほうが「感謝を受ける」より多いと感じる

1つ目が、感謝の強度と頻度の平均値についてです。
感謝の強度、頻度のいずれにおいても「感謝を表す」ほうが「感謝を受ける」よりも平均値が高いことがわかりました。つまり、両者に「ズレ」があるということになります。これは別の実験でも同じ結果になりました。

(2)「メンバーとの関係の近さ」と「社会的影響力の知覚」が、感謝行動と援助行動を媒介していた

これも感謝を表す強度・頻度、また感謝を受ける強度・頻度において、同じ結果となりました。5つすべての要因が、感謝行動と援助行動の間を、統計的有意な値として媒介はしていませんでした。

つまり、感謝する/されるによって、「対人関係の距離の近さ」が生まれ、「社会的影響力を理解すること」につながり、それが結果、他者を援助するということが想定されます。

まとめ

感謝行動が、ただ青臭いものではなく「人間関係を緊密にして、社会的な影響力を自覚することを通じて、助け合いを促すというメカニズム」が明らかになった実験。感謝をすることの価値を、改めて理解できたように思いました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!


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