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「子ども用 強みの注目尺度」のご紹介 ー生活満足度と抑うつにも関係ありでしたー

こんにちは。紀藤です。本記事にお越しくださり、ありがとうございます。
さて、本日は「子ども用の強みの注目尺度」というテーマの論文紹介です。

しばしば、「強み」についてのワークショップを行っていると、参加者である管理職の方に「本題と関係ないんですけど…、子どもも強みのアセスメントって受けられるんですか?」と、質問される方にお会いします。おっしゃる通り「強みの活用」は何も、大人だけのものでもありません。

今回の論文は、「強み注目する尺度」として開発された大学生・成人用のものが小中学生にも当てはまるのか?、それらが抑うつや生活満足度に相関があるのか?など、尺度の開発と、信頼性と妥当性を検証した論文となります。

私も息子を持つ父として、気になるところ…。
ということで、早速みてまいりましょう!

<今日ご紹介の論文>
阿部望, 岸田広平, 石川信一.(2019). “子ども用強み注目尺度の作成と信頼性・妥当性の検討.” パーソナリティ研究 28 (1): 42–53.


15秒でわかる本論文のポイント

  • 本研究の目的は「子ども用強み注目尺度」を作成し,その信頼性と妥当性を検討することである。

  • 小中学生487名を対象に調査を行った結果、性別と発達段階で得点に差が認められ、中学生は小学生よりも自己の強みへの注目が低く男子は女子よりも他者の強みへの注目が低いことが示された。

という内容でした。

「子ども用強み注目尺度」開発の背景

これまでの強み研究で、「性格的強み」は「生活満足度」と正の相関を示し、また「抑うつ」とは負の相関を示すことがわかっています。海外の研究だけではなく、日本の成人や大学生を対象に行なった研究でも、同じ結果が示されている、グローバルな共通の結果です。

一方、多くの研究が成人や大学生を対象にしたものがほとんどでした。よって「子ども(小中学生)」に注目した研究は少なかったようす。しかし、近年、学校現場では子どもの強みの育成を目指した教育プログラムも実施され、それらが小学生や中学生のポジティブ感情や生活満足度の向上に役立つことがわかってきています(Proctor ea al., 2011など)。

そこで、今回の研究では、小・中学生の子どもが、自分や他者の強みに注目しているかを自己診断できる「子ども用の注目尺度」を作成し、生活満足度や抑うつとの関係を調べたのでした。

「子ども用強み活用尺度」の内容

「強み活用尺度」を作成するにあたって、対象である小中学生が理解しやすいように、大学生用に作られた尺度において、いくつかの文言を変更しました。例えば、「良い面」を「良いところ(長所)」へ変えたり、「自覚している」を「知っている」など平易な言葉に変えています。

そして、尺度の信頼性を検証したところ、「自己への強みの注目」(7項目)、「他者への強みの注目」(8項目)の合計15項目2因子となることがわかりました。これは成人の尺度と同じで、信頼性と妥当性が担保されました。測定の方法は、リッカート5件法で「1,全くあてはまらあい」から「5,とてもよくあてはまる」で答えるものとなっています。

子ども用強み活用尺度

調査の内容と結果

今回は小中学生487名を対象に、この「子ども用強み活用尺度(自己の強みの注目、他者の強みの注目)」と「生活満足度」「抑うつ」を調査しています。

また、小学生・中学生の発達段階の違いや、男女の性差がどのように結果に影響しているのかも分析しました。その結果以下のことがわかりました。

わかったこと1:「子ども用強み活用尺度」と「生活満足度」は正の相関があり、「抑うつ」とは負の相関があった

これまでの成人・大学生の調査と同じように、小中学生も、強みへの注目(特に「自己への強みの注目」)は「生活満足度」に正の相関があり、「抑うつ」には負の相関がありました。

また相関係数から見ると、「自己の強みに注目すること」と「他者の強みに注目すること」にも相関があることがわかりました。自分の強みに注目できると、他者の強みも見ることができる、とも言えるかもしれませんね。

わかったこと2:小学生の方が中学生より「自己の強みの注目」が高い

興味深かったのですが、小学生のほうが中学生よりも「自己の強みの注目」が高いことがわかりました。言い換えると、成長していくと自己の強みに目を向けることが難しくなる」ともいえます。

近しい結果は、海外の研究でも共通するものが見つかっており、Park&Peterson(2006)によると、5年生より8年生(中3)のほうが、親切さや寛大さなどの強みの得点が低かったそうです。(強みへの注目が発達とともに低くなる)

しかし、繰り返しですが、本人の「生活満足度」や「抑うつ」とも関係しているため、「強みに注目する」ことは促していきたいもの。とすると、強みの注目を教育によって積極的に行うことで、ポジティブな効果をもたらすことができるのかもしれません。

わかったこと3:女子のほうが、男子よりも「他者の強みの注目」が高い

次に、これは感覚として予想通りだったところもありますが、「女子のほうが、男子よりも”他者の強みの注目”が高い」ことが示されました。これは小学生、中学生いずれもそのような結果になっています。

考察としては、他の研究で、他者に対する共感的関心(他者の状況や感情に対して自分も同じ様に感じること)は、中学生では女子のほうが高いそうです。ただし高校、大学に上がるに連れて、だんだん性差はなくなっていくそう。こうしたことも影響をしているのではないか、と述べられていました。

まとめ

多感な小中学校では、成績や運動の出来不出来などで、自分の価値を必要以上に低くみなす傾向があるようにも感じます。それが発達段階によるものでありアイデンティティの形成に必要なプロセスでもあるのかもしれません。しかし、それはそれとしても「自分の強みに注目しよう」という考えは、もっと推進しても良いように思います(特に日本人の謙虚さからもうちょっと強く見つめてもいい気がしています)。思春期の成功体験と自信は、やっぱり行動する上でも大事な要素です。

こうした研究がベースとなって、「強みの教育」がもっと広がっていくと、とても意義深いなと思いますし、教育現場の強みの活用も、これからどうなるか伸びしろがたくさんありそうだな、と思う論文でした。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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