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人は「本当の自分はいいやつだ」と思いたいものである ー自分らしさを認識するメカニズムー

こんにちは。紀藤です。先日より「オーセンティシティ(本当の自分らしさ)」についての論文を探索していますが、面白く、かつ考えさせられます。

今日も引き続き「オーセンティシティ」をテーマにした論文をご紹介してまいります。本日のテーマは「”本当の自分らしさ”を、人はどう認識しているのか?」について考察した論文の前半部分をご紹介いたします。
次回、そこから論文の研究内容を深めたものをご紹介させていただきたいと思います。それではまいりましょう!

<今回ご紹介の論文>
『真正なる自分は、自己高揚する自己である:オーセンティシティの自己高揚フレームワーク』
原題:Guenther, Corey L., Yiyue Zhang, and Constantine Sedikides. 2024. “The Authentic Self Is the Self-Enhancing Self: A Self-Enhancement Framework of Authenticity.” Personality & Social Psychology Bulletin 50 (8): 1182–96.


オーセンティシティの定義

オーセンティシティは、一言でいえば「自分自身に忠実であること」(Jogman-Sereno&Leary, 2018)と定義されるようです。

そしてオーセンティックな生き方とは、「本当の自分に従って行動すること」「自分の特性を自覚し、受け入れること」と他の研究者も述べています。そして、このような生き方をするには、以下のような行動が必要であると提唱されています。

<オーセンティックな生き方をするための行動>
(a)自分の長所、短所、目標、願望を自覚すること
(b)自分に関連する情報を公平に処理すること(つまり、ポジティブなフィードバックもネガティブなフィードバックも受け入れること)
(c)自分の価値観、基準、嗜好に一貫して行動すること(外的影響に媚びるために偽りの行動をとらないこと
(d)親密な人間関係に置いて、関係性の開放性、純粋さ、誠実さを追求すること

Kernis & Goldman(2006)特性のオーセンティシティの多成分フレームワーク

なるほど。大変わかりやすいですね。
上記を満たせば、確かに自分らしきく生きられそうです。

また加えて言うと、「状態」と「特性」の2種類のオーセンティシティがあるとされます。

まず「状態のオーセンティシティ」とは、自己に忠実であるという”一過性の感覚”です。状態であり、感覚。ゆえに、比較的短命で変わりやすいものとされます。
 一方、「特性のオーセンティシティ」は、この状態が蓄積することで、「自分は元々こうなのだ」という特性として認識することに繋がる概念ともされています。

「本当の自分」と感じるメカニズムとは

しかし、厄介なのが「本当の自分と”感じる”」という部分です。
人は、自分のことを自分で、正確に捉えることができません。
その理由として、いくつかの事が挙げられます。

自己認識の難しさ、バイアスの影響

本当の自分を正しく捉えることが難しい理由。大きく2つ挙げられていました。1つ目は、「自己認識の難しさ」の問題です。

・自分自身の心理状態に気づいていないことが多い(Wisbett&Wilson, 1977)
・内省をしても正しい自己認識ができるとは限らない

そして、2つ目の「自己評価のバイアスの影響」です。
たとえば、以下のような研究結果があります。

・自己評価には「自己肯定感(自己高揚効果)」が加わる傾向がある(人はフィードバック元が同じでも、短所より長所を伝えられるフィードバックを好む( Kunda, 1990、Sedikides, 2016)
・人は自分は平均より優れていると考えがちである
・客観的な基準となる平均より、ピーク時のパフォーマンスに基づいて自分の能力を評価する(Zell ea al, 2020)
・かつ、それらの偏った自己評価に自分で気づいていないことが多い

というものです。

うーん、確かに・・・。
自分事で考えた時に、わかる、わかる、と悲しきかな、納得してしまいました。
やっぱり長所のフィードバックのほうが嬉しいし、自分のピーク時のパフォーマンスに基づいて自分を評価しているなあ、と思ったり。

そして、そうした影響を受けながら「本当の自分らしさ」を私達は、自分の中で形成をしていくわけです。

自己認識なのか、自己高揚なのか

さて、このような「自己認識の難しさ」「バイアスの影響」を含めて、「本当の自分と感じるメカニズム」を考察すると、研究上の課題が見えてきます。

自分のことを肯定的に感じたときに、「本物の自分らしい」と感じる傾向
がある(=自己高揚効果)

という課題です。

ものすごく乱暴にいえば、普段悪行(!)ばかり働いているとしても、いいことをしたそのときのほうが「本当の自分感を感じる」ということです。見方によっては「本当の自分は”いいヤツ”だと思いたい」ともいえるのかもしれません。

まとめ

「本当の自分」を見つけるのは、なんとも難しそうですね。

今回の研究ではタイトルの『本当の自分は、自己強化する自己である』というように、自己強化効果により、本当の自分らしさを感じていくという仮説を立てています。それらを、5つの研究で読み解いていくのが後半となります。

ということで、少し長くなりましたので、明日に続けたいと思います。最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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