「称賛」が増えるほど、望ましい態度・行動が増える ~読書レビュー『感謝と称賛』#9~
こんにちは。紀藤です。さて、先日より『感謝と称賛』(正木郁太郎 (著))書籍からの学びを共有させていただいております。本日も続けます。
今日は、第8章より「称賛にはどのような効果が見られるか」についてまとめてみたいと思います。ここでは「『称賛の送受信等』と『望ましい態度・行動』の相関を分析する」というのが主な内容です。
結果をお伝えすると、称賛をする/されるほど、望ましい態度・行動が増える傾向があることがわかりました。実践的な意味合いも多い、たいへん意義深い研究となっています。ということで、早速みてまいりましょう!
本調査の概要
本調査は、前回の記事に書かせていただいた「PRAISE CARD」を導入されているBIPROGY株式会社(B社)のデータを扱った調査分析となっています。
B社では、称賛の介入である「PRAISE CARD」という29種類の称賛・感謝・挨拶が表現されたカードを通じて、従業員同士で送り合う仕組みを導入しています。そして導入の結果、「称賛の文化の広がり」が確認されました。(詳細については前回の記事より↓↓)
研究の方法
さて、B社では、ワークエンゲイジメントに関わる職務態度や行動を測定するためのアンケート調査を取っていました。
調査の測定内容は、「主体的行動・援助行動・越境行動・視点取得・自己理解・他者理解・利他的モチベーション・チームワーク・理念浸透・組織愛着・ワークエンゲイジメント」の11項目です。
今回の研究では、「『PRAISE CARD(称賛)の送受信』と『職務態度・行動との相関』を分析する」ことを行いました。
研究の結果_わかったこと
そして、調査の結果、主に以下のことがわかりました
(1)「称賛」の送受信数の釣り合いは取れていた
「感謝」の研究では、感謝の表明に比べて、感謝の受領が少ないという回答(主観的な回答)が得られていました。つまり、「感謝は伝えているけれど、あまり受け取っていない」という”ズレ”があったということです
この現象が、称賛においてどうなのか?を確認する狙いを持っています。特に今回では「称賛カードの送受信数=事実」で見ることができます。
その結果、「利用者の送信数ー受信数」を見ると、平均値は0、中央値は-1(つまり受信数のほうが多い)ということがわかりました。
もし、感謝も同じようなメカニズムで合ったとすると、「認知バイアス」によって感謝を受け取っていないと感じる傾向がある、とも推測されます)
(2)「称賛」の送受信数が増えるほど、望ましい態度・行動が増える
次に、称賛の送受信数と、職務態度・行動に関するアンケート調査項目の相関分析を行いました。その結果、以下のような特徴が見られました。
その他、傾向としては「称賛カードの送信」が多いほど、「主体的行動・視点取得・自己理解・利他的モチベーション・ワークエンゲージメント」が高い傾向があり、また「称賛カードの受信」が多いほど「援助行動」が高い傾向がありました(P<.10)。
(3)「称賛」のハブになっていると、望ましい態度・行動が増える
そして興味深い点が、「媒介中心性が高いと望ましい態度・行動が増える」傾向があるということです。
「中心性」とは、”ネットワークの中核にいる程度”を表すものです。たとえば、称賛の送受信数が多いことを「次数中心性」の得点が高いといいます。
また、その人が多様な相手やクラスタとやり取りしていると「媒介中心性」の得点が高い(ハブになっている度合いが高い)とします。
そして、「媒介中心性」が高いと、「越境行動」「利他的モチベーション」「組織愛着」が高い傾向があることがわかりました。
まとめと個人的感想
確かに「称賛をする/される人」のほうが、主体性が高いとか、援助行動が多いとか、越境行動(積極的な交流)が多そう、というイメージはありますが、それらをデータとして示されることで、より「称賛」の行動のポジティブな効果が腹落ちするものでした。
称賛の組織文化を醸成する意味を形成する、一つの理由になる、と感じた次第です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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