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組織適応を促す「5つの環境要因」とは ~『若年就業者の組織適応』より #7~

こんにちは。紀藤です。先日より著書『若年就業者の組織適応』からの学びの共有をしております。今回は「第11章 組織適応に影響を与える環境要因」についてです。そして長らくお伝えしてまいりました本書からの学び共有も、今回が最後です。

これまでの章で「組織適応」には、「プロアクティブ行動」、そして「プロアクティブ行動を喚起する上司要因」などについて述べられてきました。しかし、組織適応を促すものに「職場の環境」があることは想像に難くないでしょう。

本章では、どのような職場の環境要因が、組織適応に影響を与えるのか2社の実証研究で解き明かした内容となっています。それでは、早速見てまいりましょう。
(前回のお話はこちら↓↓)


「環境要因」の5つの観点

本研究で扱う職場における「環境要因」として、5つの要因が挙げられていました。それが、「職場」「職務」「上司」「他者サポート」「人事制度」です。下位次元を含めると、以下のように説明されています。

【環境要因】
・「職場要因」:コミュニケーション風土、支援風土、学習風土、職場のチームワークの良さ
・「環境要因」:職務自律性、タスク重要性、ストレッチ職務、役割曖昧性
・「上司要因」:発展的フィードバック、ネットワーク形成支援、上司の育成スキル、上司への信頼感
・「他者サポート要因」:上司サポート、同僚サポート、同期サポート
・「人事制度要因」:育成環境、評価環境、異動・配置環境

P210-212より引用

実証研究で明らかにしたいこと

本実証研究は、A社:2万人規模インフラ系企業の若年層256名と、B社:6000名規模の百貨店の若年層165名を対象に行ないました。

A社の「インフラ系」は理系や大学院生卒で男性の採用も多くB社の「百貨店」では文系の4年生大学卒で女性の採用が多いとのことで、行う事業も、対象者の属性、それに伴う思考も違うことが想定されます。

それらの違う業種において、”組織適応に影響を与える「環境要因」に共通点はあるのか?”を本研究では明らかにすることを狙いとしていた、とのことでした。

分析と結果

A社とB社で使用した質問指標や尺度も違ってはいるものの、明らかにわかったことがありました。

それは、「職場の環境要因が高いほど、組織適応が高くなる傾向がある」ということです。

これは、A社においては、他者サポート要因の「同期サポート」以外は全て組織適応に正の影響を与えていることがわかりました。
またB社においても、職務要因の「職務自律性」「タスク重要性」以外は全て組織適応に正の影響を与えていることがわかりました。

職場環境の種類によって、その影響の大小はあるものの、基本的に「職場環境は組織適応に重要な影響を与える」と言ってよいかと思います。

「インフラ系企業」と「百貨店」の組織適応に与える環境要因の違い

さて、もう一つ興味深い結果が示されていました。それが、A社インフラ系と、B社百貨店において、それぞれどの環境要因の影響が強いのか?という調査です。

これによると、A社(インフラ系)は、「1位 環境要因、2位 上司要因、3位 職場要因、4位 他者サポート要因」でした。
対してB社(百貨店)は、「1位 他者サポート要因、同1位 人事制度要因、3位 職場要因、4位 職務要因」となっていました。

この事実は、個人属性の違いが影響を与えている可能性が高い(A社・インフラ系は理系や大学院生卒で男性の採用も多く、B社・百貨店では文系4年生大学卒で女性の採用が多い)とのことでした。

ここは尾形先生が調査された別の研究では、やはり男性と女性、理系と文系で職業志向性の差があることも示されていました(男性は女性より職務挑戦志向が高く、文系は理系より人間関係志向が高い)。このように研究を合わせることで推察できることはあるのだな、と勉強になりました。

本書の結論

さて、本著書では「組織適応」「リアリティ・ショック」「見過ごされてきた適応課題」「リアリティ・ショックへの実践的対処」「組織適応を促すプロアクティブ行動」「プロアクティブ行動を喚起する要因」「組織適応を促す環境要因」など様々な概念を取り上げられていました。

それらの全体像をまとめている図が紹介されていましたので以下引用させていただきます。

P226

まとめと感想

こちらの本は、今まで目を通す形でサラサラっと読んではいたものの、一章ずつ味わって理解していくことで、「若年就業者の組織適応」という組織において重要な概念が、よりクリアに理解ができたと感じました。

著者の尾形先生が6年かけて書かれたこの書籍、実に有益な情報が、理論的に記載されており、実に多くの学びをいただきました。
 こうした研究結果を、人事や経営が理解し、上司も若年者本人も理解することで、もっともっと組織によりよく馴染ませることを可能にできるようになるのだろう、と思います。

同時に、あらゆる施策は地続きでもあります。いくら若年就業者がフィードバック探索をしようとしても、「環境要因」として上司・他者が積極的に関わる雰囲気でなければ、”笛吹けど踊らず”となるのは想像に難くありません。
 全体の戦略を描きつつも、土壌を耕すように、少しずつ前に進んで行くことが大事なんだろうな、月並みではありますが、そのようにも思いました。

そして「上司の関わりが9割」と結論で書かれていたように、調査をした結果からも上司の要因は大きいことは間違いなさそうです。このことも、実践者の一人として多くの方にお伝えしていきたい、そのように思った次第です。

P236 そうだよなあ、と思う

素晴らしき学びを提供いただいた、本書に改めて感謝でございます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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