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British Sea Power / Open Season (15th Anniversary Edition) (2020) 感想

リマスター違い分からない問題

 イギリスの文化系ロッカーBritish Sea Power、2005年の2ndの15周年記念盤がリリースされました。オリジナルアルバムとラジオ番組でのライブやB面曲を集めたレア音源集という構成です。
 記載を見つけられなかったのですがオリジナルの方は特にリマスターされていないのでしょうか?私のような素人耳には2000年代のアルバムのリマスターは正直違いがよく分からないので問題ありませんがそれはそれで少し寂しい気もします。

 休み時間も本を読んでるような文化系陰キャが突然キレたみたいな、素っ頓狂なポストパンクとあまりロックで聞かない言葉を突然ブッ込む歌詞で注目された1st(デビュー作は「ドストエフスキー、貴方は僕の知る最も魅力的な人」から始まります)から垣間見せていた美メロに照準を合わせ、フォーク色を強めた本作。
 ここでみせた綺麗なメロディーを大文字のロックに融合させた3rdが攻守最強の、現在までの彼らの最高傑作だと思いますが、以降の歩みをみると1stのポストパンクではなく今作の方向性を発展させたものであるという意味でも重要な作品です。

自然派文化系ロック

 「駐車場に神を見た」とのたまう人を「なんかギトギトしてたね」と片付ける1."It Ended On An Oily Stage"、アンセミックかつゴージャスに都会疲れを表現した(?)キャリア屈指の名曲5."Please Stand Up"、ビーマイベイビー・ビートに誘われたビートルズ"I'm Only Sleeping"と並ぶ「とにかく疲れたから眠りたい」ソング7."To Get To Sleep"等、ポップとフォークとロックとサイケの間を自在に行き来しながら相変わらずの独特の世界観を聴かせる楽曲群はいつ聴いても美しいです。

お願いだからどこか静かなところへ連れて行って下さい/高速道路の出口が親しげに僕を呼んでいる/目的地が必要なんだ
1日8時間/20年にも感じる/そこに行けば自由になれるよ/欲望からも、金銭欲からも、恐怖からも/
ああ、心が壊されてしまった/息もできない/少しずつ閉じていく/毎日少しずつ/ちょっとした目障りさ/少しの睡眠薬

ステージに木を生やすことでお馴染みの彼ら。デビュー作でも「虫さんごめんね」とか歌ってましたが、歌詞の節々から人間への疲れ、自然讃歌みたいな雰囲気を漂わせており、そのイメージで聴くと今作のような落ち着いた作風の方が合っているように感じます。
 今振り返ってみるとガレージリバイバル全盛の当時、本作で詩世界とメロディーを強化する方向へ進むんだことが、今日に至る独自の存在感と強固なファンベースの獲得に繋がっているのではないでしょうか。

ヴィクトリア朝時代の氷河、エドワード朝時代の雪/その下には何があるんだろう?/表面に出ているのはまるで/博物館の古い鯨の骨みたいだ/冷え切っている

 レア音源集の方についても少し。初めの方のラジオ番組でのセッションは、オリジナルのソフトさを取っ払ったダイナミックさがありかっこよろしいです。"It Ended On An Oily Stage"なんかは同じ曲かというくらいロックしてます。
 B面曲はまあB面って感じの、フォーキーで落ち着いた、地味めの曲が多いです。"Please Stand Up"の別ミックス“How Animals Work"が元曲の良さも相まって一番好きです。

 とまぁレア音源集の方は総じてファン向けな印象ですが、記念盤を機に聴いてみよう、という人が増えるようなバンドでもなく、今更これを聴くのはファンだけなので問題ないでしょう。これらの中からよくぞアルバムをここまでポップに纏め上げたと謎の感動を覚える音源集です。

点数

8.2

 最近は自主レーベルで、クラウドファンディングで新作のレコーディング資金を募る生粋のインディー気質な彼ら。現在絶賛クラファン開催中です。リワードは好きな曲の手書きの歌詞やスペシャルサンクスへの登場など。
 The Charlatansとかもそうですけど、一度も解散せずに頑張ってくれているバンドは応援したくなりますね。私はまだ?寄付してませんが。

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