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Dream Wife / So When You Gonna… (2020) 感想
思い込みって恐ろしい
サブスクに加入する前は、1ヶ月に聴く新譜=買うCDは自分なりに選びに選び抜いたものだけでした。なんせCDは輸入盤で1枚2000円弱するので、気になる新譜を全部買っていたら馬鹿になりません。それが今や月に1000円くらいで好きなアルバムを聴き放題です。古い人間なのでいまだにフィジカルも購入はしますが、私のような貧乏な音楽好きにとって本当にいい時代になったものです。
何が言いたいかと言うと、Dream Wifeの新作を聴いて、もっと早くこのバンドを聴けておけばよかったと思ったということです。バンド名と前作、1stアルバムにあたる2018年の「Dream Wife」のジャケットには見覚えがありましたが当時の私はサブスク加入前で、前作のモノクロのジャケット写真から何となくコクトー・ツインズなどの所謂4DA系の耽美な感じのバンドだと思い込み、よく調べもせずスルーしていました(4AD系も好きですが優先順位の問題です)。サブスクに加入した現在では、そういえばこんなバンドいたなーと気軽に聴いてみることができたという訳です。youtubeとかいくらでもあったでしょというのは言ってはいけません。
ポップだった
今作は耽美とは程遠い、ポストパンク的なシャープなカッコ良さとポップさを共存させた最高のインディーロックでした。Snail Mail、Courtney Burnett、Phoebe Bridgersなど女性の活躍が目覚ましいインディーロックの世界ですが、彼女たちはボーカルRakel Mjöllの甲高い、どちらかと言えばガーリィな声からか、特にポップな曲ではもっと正統派なガールズバンドといった風情を感じます。
と言っても冒頭の"Sports!"は「クソみたいなことをしながら謝らないような奴」への怒りをぶつけた4文字言葉から始まる激しい曲で、彼女たちが決してキュートなガールズバンドではなく闘うロックバンドであることを思い知らされます。鋭角的なギター、吐き捨てるようなボーカルに何となく2000年代半ばのポストパンクリバイバルの空気を感じます。
その他にもポップな曲の合間にポストパンク的な鋭さを持った曲を挟みながら進みます。アルバムの流れとしてのハイライトはポップな曲が続く中盤、今作一ビッグなサビを持った7曲目"Rh Rn"〜Carly Rea Japsenみたいな80年代ポップみ溢れるミドルテンポの"Old Flame"〜最後にひと暴れとばかりにポストパンクな曲に合わせてシャウトする"So When You Gonna…"の流れです。静と動のコントラストが良きです。
惜しむらくはその後のミドルテンポ〜スローな2曲が少し弱いことでしょうか。特に最終曲、メロウな"After The Rain"なんかは逆にもっと4DA的な耽美さがあったらよかったかもしれません。
オススメ曲
■ 2. Hasta La Vista
どことなくKasabian(理由が理由なのでしょうがないですが、ボーカルが懲戒解雇されてしまいました)"You're In Love With A Phyco"を彷彿とさせる人を食ったような肩の力の抜けたポップソングで、ポップな路線の曲ではこれが一番だと思います。ポストパンクに乗せて怒りをぶつける前曲からの流れで聴くと一層ポップさが際立ちます。
■ 1. Sports!
アルバムの初っ端から4文字言葉で怒りをぶちまける強烈なオープナーです。鋭角な演奏とシャウトが感情を表し切っていて最高です。
クソ申し訳ないけど/いや、クソ頼むからやり直してくれない?/口を挟むなら金を払いな/自分の言葉に責任を持ちな/時間こそ至高、時は金なり、わかるでしょ/謝りもしやがらない(それがルール、スポーツ!!)
■ 8. Old Flame
今作のポップさの極致というか、どことなくCarly Rea Japsenぽさすら感じる80年代ポップス風の曲で、このバンドの音楽性の幅広さを感じさせる曲です。
点数
7.3
前作を聴くと激情的なポストパンクが主体でポップさは今作から表に出てきたようですし、またまだ引き出しがありそうな感じがするのでその辺りを次作以降に期待しています。
(今作を聴きながら読んだインタビュー記事)