McAlmomt & Butler / Bring It Back (2002) 感想
我らがギターヒーロー
近年はプロデューサーとして裏方に徹してきた我らがギターヒーローBernad Butler(ex. Suede)ですが、9月に久方振りに本人名義(厳密にはCatherine Anne Davies & Bernard Butlerというコラボ名義です)のアルバムがリリースされることになりました。純粋な新作ではなく10年ほど前に作られたものだそうですが。
そこで記念に過去の作品群を聴き直したところ、今作が飛び抜けて最高だと感じました。
このMcAlmomt & ButlerはシンガーDavid McAlmomとのユニットで、彼の数オクターブを操るという伸びやかな歌声と、後のBernardのプロデュース作にも見られる分厚いストリングス、そして時に曲を無視して弾きまくるギターに彩られたソウル・ミュージック〜60s風ポップソングを聴かせてくれます。
95年に1st「The Sound Of McAlmont & Butler」をリリースするもすぐに喧嘩し解散、7年を経て仲直りしてリリースされたのが今作です。
ゴージャス&ポップ&クラシック
アルバムはその名も「マッカルモント&バトラーのテーマ」で幕を開けます。「あいつはギターの使い方ってモンを心得てる/ストラトキャスターの申し子」、「彼はまるで鳥か天使か何かみたいに歌う」と自己紹介するこの曲は、上記の特徴全部乗せの、初っ端からゴージャスな曲です。
語り主体のクールなヴァースに始まりサビでポップが爆発するタイプの曲ですが、高低を自由に行き来するボーカルにド派手なストリングス、そして何よりサビ前の歪んだギターリフがかっこいいの何の。これだけでこのアルバムを聴く価値があるというものです。全身でリズムを取りながら容赦なく弦を叩くBernardの姿が頭に浮かんできます。ああ、カッコイイ…。
続く60s風のド派手なポップソング"Falling"、この流れで今作はいきなりハイライトを迎えます。何も考えずただ音の洪水と美しいボーカルに身を任せるのが正解でしょう。どこまでも昇っていくように盛り上がっていく曲なのにタイトルは"Falling"というところも含めて完璧です。何にFallかと言えば勿論、恋です。
音の洪水に塗れてパッと聴き目立ちませんが、ここでもBernardのギターは歌いまくっています。サビのオブリガードはもはやこちらが主役です。
ド派手なのはここまでで、以降は若干トーンダウンし、よりオーソドックスなモータウン風ソウル、そしてBernardの趣味が色濃く出たと思しきフォーキーな曲を主体に進みます。そもそもオーソドックスなソウルを嫌いな人間はいないので、以降も最高のポップソング集として聴けますが、中でも異物感を放ち、今作をただのポップスに終わらせないのがBernardのギターです。他のソウルのアルバムでやったら戦犯になりかねないほどこの手の曲にしてはギターの主張が強いですが、そこをギリギリのところでギターもっと聴きたい!にしているところがBernardのセンスであり、このユニット最大の強みです。
その他にBernardファンとしての聴き所は、彼特有の激エモなビブラートが堪能できるポップな"Can We Make It?"、ワウを駆使したギターワークが楽しいクラシックかつファンキーなR&B"Bring It Back"、バッキングの繊細なギターワークとファズのかかったリードの対比にシビれるミドルテンポの"Make It Right"、そして最終曲"Beat"のラストで当然の如く暴れまくるギターソロあたりでしょうか。
かつての(Suede時代の)エロいと評されたギターとはまた味わいが異なりますが、円熟味を帯びた艶やかなギターがみんな大好きソウル・ミュージックに乗せて堪能できる名盤です。
オススメ曲
■ 2. Falling
今作一ポップ、かつド派手な曲です。全身でリズムを取るBernardのギターの弾き方のカッコよさ。真似してギターを弾こうとしても全くきちんと弾けません。ミドルエイトのマッカルモントの"アーーー!"で昇天すること間違いなし。
■ 1. The Theme From McAlmomt & Butler
高低何でもござれなボーカル、カッコ良すぎるギターにド派手なストリングスと、このユニットを特徴づける要素を全てぶち込んだ、アルバムに期待を高める最高のオープナーです。心の「アルバムの一曲目ランキング」でもかなり上位にくるくらい好きです。因みにこの曲のドラムは元The Stlyle CouncilのSteve Whiteという、いかにもなゲストが参加しています。
■ 6. Bring It Back
今作のなかで最もクラシックな色の濃い、ポップなR&Bです。ワウを駆使したギターワークも楽しいです。7年ぶりの仲直り作のタイトルトラックがこれとういうのは狙いすぎな気がしなくもありませんが。
点数
9.0
最近ちょこちょこライブを行なったり1stがリイシューされたりとスポットが当たる機会もあったため、少しだけMcAlmomt & Butlerとしての新作にも期待していました。
しかし今作でもパワフルなドラムを叩き、Suede以降のBernard作品に欠かせないドラマーであったMako Sakamotoさんが亡くなられたため、不謹慎ながら少し新作には遠のいたのかなと思います(ヘッダーの写真の男性がMakoさんです。件の今年リリースの新作にも参加されているそうです)。日本人のドラマーがBernardと活動しているというのはとても嬉しくありました。R.I.P.。