Hiss Golden Messenger / Halleluiah Anyhow (2017) 感想
ハマってしまった
Fleet Foxesが相変わらずすんばらしい新作をサプライズリリースし、Video Ageが秋の訪れとともにBreezin'な風を運んでいる頃、私はHiss Golden Messengerを聴き漁っていました。
Hiss Golden MessengerことMC Taylorさん。2008年のデビュー当時はFather John Mistyとしてチャクラを開く前のJ. Tillman氏の如く渋いフォークロックを奏でていましたが、枚数を重ねるごとにポップになっていき、8枚目となる今作は素敵なカントリー・ソウルとなっています。
取り立てて新しい、彼独自の個性がある音楽とは思いませんが、私は何故一聴してすぐに最高だと分かったFleet Foxesの新作そっちのけでハマってしまったのでしょうか。
ドストライクだった
身も蓋もありませんが、音楽性がドストライクだった、これに尽きます。本人がインタビューで語っているように、Van Morrisonなら"Astral Weeks"より"Tupelo Honey"、そんな人間にはたまらないアルバムです。
冒頭のホンキートンクなピアノが強調された、ポップでソウル風味のカントリーに乗せて歌われる
"Jenny Of The Roses"。声は地声のPrinceを彷彿とさせるハスキー・ボイス。最高じゃありませんか。
その他アルバムの聴きどころは、渋いボーカルとソウルフルなメロディーがエモい4."Harder Rain"とタイトルからしてまさにVan Morrisonオマージュな8."Domino(Time Will Tell)"あたりでしょうか。
アルバム発売当時のレビューを読んでいるとこの人は歌詞もエモいみたいな評を目にします。The 1975やIDLESなどのある種分かりやすいイギリスのバンドに比べて分かりにくい、抽象的かつ普遍化しやすい感じはいかにもUSインディー的だなーと感じますが、これはこれでとても良いです。
よく分からないかけど何となく言いたいことは伝わる、アルバムを通して聴くと必ず一節、二節は突き刺さるフレーズがある、そんなタイプの歌詞だと思います。
雨が降ってたかい?/雷が鳴ってたのかい?君が囚われた、そのハイウェイの向こうでは
僕の心を滅茶苦茶にしようとしてたのかい?/光とはすぐに変わってしまうものだって、いつも頭では分かってたよ/ああ、僕の薔薇のようなジェニー -"Jenny Of The Roses"
入江に立つ詩人のように/神聖であってほしいと君は言う/でも世界はそんな風に出来てないって、君は分かってるだろ?
もっと強い雨/もっと暗い暗闇/僕次第だっていうなら/ちょっとした愛があれば、長い道も進めるのにな -"Harder Rain"
点数
8.2
Breezin'な風を吹かされると寒くてやってられないこれからの季節にも、荘厳すぎてクリスマスは似合っても新緑爽やかでFleet Foxesが聴けない春(新作のフィジカルが出るのは来年の2月だとか)にも、季節を問わずに聴ける安心のグッドミュージックです。
因みに最新作は今作の後、2019年にリリースされた、ゴスペル/ソウル色の濃い"Terms Of Surrender"です。こちらも今年の頭に出た、冷静と情熱の間を揺蕩うライブ盤も最高でした。
(参考記事)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?