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Rhodesピアノまでもがほぼオールマイティな楽器になった今だからこそ

Rhodesピアノとの出会いはいつだったろうか。実のところよく覚えていない。

鍵盤楽器は殆ど弾くことが出来ない私がRhodesピアノという鍵盤楽器に興味を持ったのはおそらくNord Electro 2というキーボードを手に入れた時からだろう。今はもうそのNord Electro 2も手放してしまったのだが、そのキーボードに入っていたRhodesの音源(Mark 1とMark 2の音源が入っていた気がする)がとても魅力的だった。ペダルを踏むとボワーンと音が共鳴する当たりとか、よく出来ていた。

元々Nord Electroを購入した動機はハモンドオルガンの音が好きだったからであり、Rhodesには殆ど興味はなかった。Hammond B3、名前だけでも憧れてしまう名器である。Hammond B3といえばジミー・スミスをはじめとするジャズオルガンの名手が皆使用していた楽器である。というよりも、ジャズオルガンを弾くにあたって、当時はB3ぐらいしか選択肢がなかったのかもしれない。

Hammond B3はアメリカの教会にはパイプオルガンの代用として設置されているところが多かったのだろう。実際、ゴスペルの伴奏でも多用されている。ジミー・スミス以前のジャズオルガニストの父と言われるWild Bill DavisもB3を使用しているようなので、ジャズオルガンといえばB3という伝統は1950年代には出来上がっていたのだろう。正確には教会用には足元が隠れる(スカートを履いていても演奏できる)Hammond C3というモデルがあるのだけれど(実際ジミースミスもC3を演奏していたりすることもある)、これは中身はB3と一緒のものなので一括りにして差し支えないだろう。

その楽器を弾いてみたくて、かといって本物のB3を買える金はないしということで行き着いたのがNord Electro 2であった。内蔵されているB3の音源も悪くはないのだけれど、ロータリースピーカーのシミュレーションがいまいち好きになれなくて手放してしまった。(けれども、後からやっぱりハモンドの音が欲しくなって別のハモンドクローンを購入した)

ハモンドについての話は改めて書くことにして、今回はRhodesである。

NordのRhodes音源で遊んでいたのだが(とは言っても、Billy Joelの「素顔のままで」のイントロぐらいしか弾けないのだが)ある日本物のRhodesを触る機会があった。今はなき小川町の宮地楽器Wurly'sだったと思う。本物のRhodes Suitcaseが置いてあった。
それを触った途端に私は衝撃を受けた。

「本物は違う、やっぱり違う」

それは、全ての楽器に共通する感覚なのだけれど、デジタルのオールマイティーなキーボードに入っている音源は所詮音源である。ピアノの音源も然り、B3の音源も然り(一時期本物のB3も持っていたのでB3についても同じことが言えると断言できる)。本物とは異なる、弾いた感じが全然違う。

それで、一気に本物のRhodesが欲しくなってしまった。
一月もしないうちに、自宅にRhodesピアノを受け入れた。Rhodes Stage Mark1。それからまた一月もしないうちにRhodes Suitcase Mark1も手に入れてしまった。Rhodesピアノという楽器の魅力に取り憑かれてしまった。

それから今日まで、かなりの数のRhodesを触らせてもらい、そのうちの何台かを購入したり、地方の古道具屋から購入したりした。

Rhodesという楽器の魅力は何かと聞かれたら、まずは音色なのだけれど、私のRhodes偏愛は音色だけでなく「エレキ」であることやら、中身ののシンプルな構造やら、挙げだすとキリがないのでそれはまた別の機会に。

また、この楽器を人に見せると「これって他の音は出せないんですか?」という質問をされることが時々あるのだけれど、確かにこれだけデジタル技術が進んだ今日、この電気楽器がRhodesの音しか出せないということに驚く方々の気持ちもわからなくはない。RhodesはRhodesの音しか出せないのである。

しかしながら、この楽器はエレクトリック楽器(エレキ)であるから、ギター用のエフェクターはほぼ全て使うことができる。空間系のエフェクターをぶちかましたりして演奏している方もいるし、最近ではギター用シンセペダルをこの楽器にかけてシンセっぽいサウンドを出している人もいる。
テクノロジーが進んだ今となっては、この楽器はほぼオールマイティーなのだ。エレキギターがほぼオールマイティーなのと同様に。

私個人としては、あまり色々なエフェクトをかけるのではなく、フェイザーやらコーラス、ちょっと冒険してもワウペダルもしくはオートワウぐらいに留めている。時々ルーパーやらシンセペダルも試してみたいとは思ったりするのだが、ああいう機材は色々と種類がありすぎてどう使っていいのかが分からない。

Rhodesピアノがほぼオールマイティな楽器となった今だからこそ、むしろRhodesそのものの音が新鮮にも感じる。アナログなエレクトリック楽器に共通する新鮮さである。エレキギターも色々なペダルが出ていて、どんなエフェクトもかけようと思えばかけれてしまうのだけれど良いアンプに直に繋いだ時の心地よさにかなうエフェクトはなかなかない。

デジタルのキーボードでRhodesの音色なんかは簡単に再現できてしまう今だから、エフェクトペダルでRhodesの音色を自由自在に変えることができる今だから、Rhodesそのものの音色を楽しむことはちょっとした贅沢だとも思っている。

ああ、そんなこと長々と書いているよりも、もっと楽器練習しよう。

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