
秋も深まる札幌で聴く日野皓正のAlone, Alone and Alone
札幌は、ここ数日ですっかり涼しくなった。
いや、涼しいというよりも寒くなった。今日でこそ最高気温は21度、明日は23度になるらしいけれど、それでも最近まで東京に暮らしていた身からしては寒いぐらいだ。
季節はすっかり秋になってしまい、夏の面影はない。あまつさえ街ではトレンチコートを羽織った女性も見かける。これはもうすっかり秋だ。
先日、飲み屋で飲んでいた時、店の人に「札幌ではいつから冬物を着たらいいか」という旨の質問をした。マスター曰く、10月下旬まで男性はあまりコートを着たりはしないらしい。今の季節は着るとしても薄いコートを羽織るぐらいまでらしい。らしいらしいで恐縮だが、今はまだ「秋物」の季節ということだ。
しかしまあ、「秋物」なんていう服は相当な洒落ものでなければ持ってはいないから、私は夏物の洋服をしまい、冬物の洋服を出してきて着ている。流石にまだツィードのジャケットとかは着ていないのだけれど、もう気温的には着ていてもおかしくないぐらいである。少なくとも最近まで東京に居た私にとっては。
それで、今朝は17度とちょっと暖かいぐらいなのであるけれど、なんとなく日野皓正の古いアルバム「Trans -blue」を聴きたくなったので、レコードラックからなんとか探してかけている。このアルバムは、学生時代に中古レコード屋で購入したもので、それ以来時々聴いている。なかなかいいアルバムだ。
With Stringsもので(所謂「ヒモ付き」)、真夏に聴いているとちょっと暑苦しいのだけれど、音楽自体はちょっとダークでクールなので、真冬に聴くよりもこういう季節がよく合っていると思う。
日野皓正のコルネットをストリングスにのせて聴かせるという趣旨のアルバムなのだけれど、一曲目はグラディー・テイトのボーカルで”My Funny Valentine”が収録されている。このボーカルがなかなか良いので、一曲目からこのアルバムの世界観が出来上がっている完成度の高いアルバムだと思う。
日野皓正のコルネットもいいのだけれど、バックをかためるメンバーの演奏がタイトで、そのせいもあってかコルネットをの自由自在に吹いている様子が伝わってくる。リラックスした中にも緊張感があり、なかなか聴かせる。日野皓正のアルバムなんて、他には数枚持っているだけなのだけれど、このアルバムはその中でも私の好みに合っているのだろう。
選曲も、日野皓正自身が書いた名曲「Alone, Alone and Alone」も含め、全曲スタンダード曲で固められているのも、聴きやすくて良いのだろう。
こういう季節にぴったりの名作だと思う。
少し、寒さを感じる朝に聴いていて心地の良い音楽だ。