ブロンズ弦とフォスファーブロンズ弦の一長一短について
今日、店でギターレッスンの際に使っている私物のアコースティックギターのネックが少しだけ順反りしていたので、トラスロッド調整をしようとロッドカバーを外していたら、3弦が切れてしまった。
ギターのネック調整をするついでに、弦も交換することにした。
私の店ではGHSのフォスファー・ブロンズのライトゲージをアコースティックギターの標準弦にしているので、それを張ることにした。
元々、このギターには自宅にあったダダリオの通常ぼブロンズ弦を張っていたのだが、フォスファー・ブロンズにするとどうなるのかに少しだけ興味があったからである。
ギターは、EpiphoneのJ-45なのだけれど、このギター安いので耐久性も良く(ナイーブな楽器ではない)、繊細さはないけれど無骨でいい音がするので気に入って使っていたのである。
ギブソンのJ-45はそもそもWorkhorseと呼ばれるように、雑にガンガン使うためのギターである。決して、床の間に飾っておくというような類のギターではない。いや、なかった。
けれど、昨今の物価高および為替高、ヴィンテージギターの価格高騰に伴い、そんなに雑に扱えない価格になってしまった。本当に床の間に飾っておくのが相応しいようなギターになってしまった。
その点、EpiphoneのJ-45は私にとってのWorkhorseである。
普段からスタンドに置いておき、弾きたい時に徐にとって弾く、こういうことが安心してできるギターである。ギターの作りも比較的しっかりしていて、頑丈にできているのも良い。ネックはもう手に入れてから10年近くいじっていなかったし、それでもほとんど反ったことはなかった。今回、ずっと店先の日が当たるところに放置していたため、ネックが反ってしまったようであった。
それでも、ロッドを回せばすぐに調子良くなってくれた。
それで、フォスファー・ブロンズの弦に替えて弾いてみた。今までこのギターにはブロンズ弦しか張ったことがなかったので、どういう音になるかが気になってはいた。
このエピフォンのギターは塗装がしっかりしており、トップも硬い為太くドンと鳴るギターである。どちらかというとフィンガーピッキングよりもストロークに向いている音がする。一音一音の粒立ちというよりは、和音としてまとめて鳴らした時の迫力があるギターだ。
本家のギブソンの方は、その迫力に加えて、ジャラリと鳴る感覚があって、かつ高音弦を爪弾くと「ツーン」とした上品な音を出すこともできる。
フォスファー・ブロンズに変えて、ネック調整をしてみたところ、そのギブソンのジャラリと、高音弦の「ツーン」が少しだけ出るようになった気がする。
それはギブソンのような艶やかな高音とは少し違う、どちらかといえば金属的な音ではあるが、ブロンズ弦とは明らかに異なるサウンドである。また、低音げんを親指で弾いた際の「ドスン」という音の輪郭も硬質になった。
少し高い弦を張ったので、良い事だらけのような気もしたが、必ずしもそういうことでもなかった。確かに私はこういうキラキラとしたアコースティックギターの音が好きなのではあるけれど、フォスファーブロンズにしたことにより、音の太さというものが少しだけ損なわれた。
ブロンズ弦の方が輪郭がぼやける為、比較的太く甘い音がする。
それに対し、フォスファーブロンズ弦は輪郭が鋭角になるため、トップが硬いエピフォンだと少しだけ音の線が細くなるのだ。
フィンガーピッキングをするにはこちらの方がバランスは取りやすいかもしれないけれど、ストロークの際の迫力であるとか、音が塊になって飛んでくる感じは弱くなった。
これが、マーティンのような、低音が豊かでいて、かつ、もっと繊細なギターであれば、音の迫力が損なわれることはないのかもしれない。
しかしながら、私のエピフォンに関していえば、フォスファーブロンズにも一長一短がある。
もちろん、新しい弦にしたことにより音が劇的に変わったので、単純に比較はできないのだけれど、ブロンズ弦にはブロンズ弦のよさというものがあるのだなあということを今更ながら実感した。
それでもやはり、私はフォスファーブロンズの音が好きだな。