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カポタスト、Cejillaの奥深い世界を垣間見た。

姉が年始の休みにスペインのアンダルシアに行ってきたようで、グラナダにもいったきたとのことであった。なんでも、姉はフラメンコに心酔しているようで本場のフラメンコを味わってこようという旅であったようだ。

フラメンコ、私はあまり詳しくはないのだけれど、パコ・デ・ルシアやらトマッティートやら、ヴィセンテアミーゴ等のフラメンコギタリストのアルバムは何枚か持っていて、時々聴いている。スペインにはそれはそれはとんでもなく上手いギタリストがいるもんだと、半ば畏敬の念を通り越して、ほぼ放心状態で聴いている。それでも、やはり本物のフラメンコという文化はよくわからないでいる。あくまでも、フラメンコのエッセンスが入ったギター音楽を楽しんでいるのに留まっている。

姉は、若い頃にドイツに住んでいた影響か、ヨーロッパ文化に興味があるようだ。ドイツにいた割にはゲルマン系の文化よりもラテン系の文化が好きらしく、南米に行ってきたりとか、スペインに行ったりとかで、習い事もフラメンコ(ダンス)だったりと、そっち方面に偏っている。確か、ドイツにいた頃はあのワグナーの聖地であるバイロイトに行っていたと思うのだが、ワグナーの楽劇を観たり聴いたりしている姿を見たことはない。

まあ、人の趣味はそれぞれ自由だからそれはそれでいいのだけれど。

それで、この度グラナダのお土産ということで、グラナダの寄木細工で作られたフラメンコ用のカポタストをお土産にもらった。カポタスト、スペイン語でCejillaというようだ。この度初めてその言葉を知った。このCejillaは木と革でできているのだが、金属製のカポに比べるととても軽い。真ん中にヴァイオリンの糸巻きのようなものがついていて、その糸巻きで糸(ギターのE線でできている)を巻き取って締め込む仕組みになっている。なかなか使い方を習得するのが難しい。

Cejillasは日本ではなかなか手に入らない。フラメンコギター専門店に行けば売っているのかもしれないけれど、そもそもそんなお店は東京にでも行かなければないだろうし、日本でこういうものがどのくらいニーズがあるのかもわからない。フラメンコのギタリストは国内にも数多いるのだろうけれど、カポタストは金属製のものを使った方が手軽であるだろうから、わざわざCejillaを使っている訳でもないだろう。

実際に手持ちのフラメンコ用のギターにつけて使ってみた。

確かに、アメリカ式の金属製のカポタストとは違った音がする。金属製のカポタストはわざと重量を持たせてサスティーンをかせぐように作られているものが多い。本来ギターのナット側にはヘッドという重たい部分があるので、開放弦を鳴らした際には、サスティーンが出る。それに対して、押弦した際にはテンションがかかり共鳴する部分の重量バランスが開放弦とは異なるので、そのバランスを取るのはギター作りにおいても大きな難関になっているのだ。一般的に開放弦とハイポジションを押弦した際の音色のバランスが良いギターの方がいいギターとされているのだが、これがなかなか難しいのだ。

そういう事情もあり、金属製のカポは装着した際に音色のバランスを極力崩さないように重めに作られることが多い。まあ、重ければいいという訳でもないのだけれど。

それに対し、フラメンコ用ギターはそもそも胴の部分が軽めに作られている。最も一般的なのがシープレスという桐のような軽い木材で作られたものだ。(ネグロというローズウッドで作られたものも存在するが)シープレスボディーの軽量なギターはギターそのものの重量が軽いので、自ずからサスティーンが短く、キレのある、乾いた音がする。こういうギターに金属製の重いカポをつけると、わずかではあるがモタっとした音色になる。

それに比べて、木と皮で作られたカポを用いると、重量のバランスと素材のおかげなのか金属製よりも乾いた音色になる。フラメンコ用ギターらしい音色である。

クラシックギターもスペインが源流だから(ドイツ・オーストリア方面ではリュート音楽の方が一般的な気がする)元々はクラシックギターにもこのCejillaを用いていたのか、用いていなかったのか、その辺りはわからない。そもそもクラシックギターでカポタストを使うことがどれぐらいの頻度で出てくるのかもわからない。

フラメンコは演奏できないのだが、ギター愛好家としては、珍しい良いものを貰ったと喜んでいる次第です。

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