Johnny A.はきっとギターを弾くことが好きなんだろうな。
かつて、あるギターメーカーで仕事をさせていただいていた頃、年に一度カリフォルニア州アナハイムで開催されるNAMMという楽器のコンベンションがあり、営業(販売店さんからオーダーを取る)のため出張させてもらったことがある。
NAMMといえば、楽器好きの私にとっては夢のような世界である。そこには世界中の楽器メーカーが集い、新製品発表をする。ビッグネームだけでなく、中小メーカーも参加するので、エグジビター(ベンダー)として参加するよりもバイヤーとして参加した方が断然楽しい。私は幸運なことにバイヤーとしても一度参加させてもらった。
ギターメーカーで働いていた頃にNAMMに行った際は、一日中自分のメーカーのブースに詰めていなければならないので、ほとんど見て回ることはできなかったが、それでもお昼休憩をいただいた際とか、商談の合間に少しだけ会場を見て回ることができた。その頃は今と比べるとNAMMに活気があり、それはそれは幸せだった。
NAMMの際に、私の勤めていたメーカーはアナハイムのホリデーインを一棟丸々借り切って宿泊していた。会社の人たちだけでなく、ディーラーさんも近くのホテルに泊まってもらい、夜にはホテルの一階のレストラン兼バーで一緒に酒を飲む。それも楽しかった。
ある晩、私は先輩達と3人でバーのカウンターで飲んでいると、すぐ横の席でJohnny A.が酒を飲んでいた。Johnny A.はアメリカの凄腕ギタリストだ。
「すごいですね、NAMMに来るとすぐ横でこんなビッグなアーティストが酒飲んだりしてるんですね?」
と私がいうと、先輩はJohnny A.と親しかったらしく、
「Johnny A.はそんなビッグじゃねえだろ」
と答えた。そのあと、Johnny A.も交えてしばらく4人で酒を飲む機会に恵まれた。
Johnny A.は、ロック、ブルース、ジャズのスタイルのギタリストで、厳密にはカントリーミュージックのギタリストではないけれど、カントリーのスタイルにも多大な影響を受けているし、多大なる影響を及ぼしている。だから、彼は私にとってのアイドルのようなギタリストである。
ディーラーさんがレストランに見えたので、そのあとはお客さん達とレストランで夜中まで飲んだ。23:30ぐらいにレストランとバーはクローズするので、部屋へ帰ろうとした時、ロビーからギターの音が聞こえた。さすがはギターメーカーの泊まっているホテル、うまい社員がいるんだなあと思いロビーを横切ったら、ギターを弾いていたのはJohnny A.とLee Roy Parnell(ナッシュビルの凄腕ギタリスト)だった。ロビーのソファーに腰掛けてデュオでアコースティックギターを爪弾いていた。特にオーディエンスがいたわけでもなく、二人は自分たちの楽しみのためにギターを弾いているようだった。
黙ってギターを弾く二人を見てJohnny A.もLee Roy Parnellもギターが好きなんだなぁと感じ、なんだかギターメーカーで勤めている自分も誇らしい気持ちになった。その会社は、3年後ぐらいに辞めてしまったのだが、とても素晴らしい先輩に囲まれ、とても感謝している。
Johnny A.はシャイな人ではあるが、とても紳士的で謙虚な方だと感じた。まあ、日本から仕事で来ている私達の前だからそういう態度だったのかもしれないけれど。Johnny A.自身も仕事でギターを弾きに来ていただろうに、仕事が終わった後もギターを弾けるっていうそのギタリストとしてのあり方に、謙虚さを感じた。
彼のアルバムは、すべてインストロメンタルなのでギター好きでないと聴いたことも無いというのが普通だろうけれど、いつ聴いてもそのクリーンでツヤのあるギターのトーンに胸を熱くさせられる。こんなに、人をウキウキさせることができるギタリストというのはそう多くはない。あの、ギリギリクリーンとクランチの間ぐらいの音作りで、ピッキングのニュアンスで歪ませたり、ボワーっと太い音を出したり、自由自在にギターを操るのはさすが俺の憧れJohnny A.!!
私のJohnny A.のオススメ盤は"Sometime tuesday morning"というアルバムです。
全曲インストロメンタルですが、ロックとジャズとカントリーのいいとこ取りの内容で、ギター好きであれば、絶対にウキウキしてしまうサウンドです。
まだの方は、ぜひ聴いてみてください。