【ASD自閉症の「症状」改善するには食事!?/『米国学会』参照】
心理士であり、栄養指導士の私が今回は自閉症(他発達障害や精神障害にも効く)食事について述べさせていただきます。
近年、増加傾向の発達障害の一つに自閉症スペクトラム障害がある。
患者は匂い、光、音などの特定の感覚に過敏あるいは鈍感だったり、身振りや言葉でのコミュニケーションが困難だったりする。
このため、日常生活で強いストレスを感じやすく、そのような場面では頭突きなどの自傷行為や強いかんしゃく、噛みつきなどの攻撃性を示すことがある。これらの症状は「易刺激性」と総称される。
本人のみならず、家族にとっても辛いこれらの症状が「水溶性食物繊維の摂取」という食からのアプローチで軽減できた。
そんな研究結果を京都府立大学大学院生命環境科学研究科の井上亮氏らが報告した。食から自閉症治療に挑む研究の一つであり、話題の「脳腸相関」ともつながる、興味深い報告だ。
対人コミュニケーション障害と繰り返し行動、興味や関心へのこだわりの強さなどを中核症状とする発達障害、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder=ASD)。
医療現場では、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害を包括してASDと総称しているが、知能や会話能力、症状の現れ方には個人差が大きい。
これまでの研究で、ASDでは脳や神経伝達物質になんらかの異常があること、家族や兄弟間で遺伝する素因があることなどがわかってきている。
米国小児科学会によると、ASD児は1990年前半から増加傾向にあり、88人に1人の子どもに認められ、男児の比率は女児の4倍とされる(※1)。
日本でも、公立小中学校で通級(通常の学級に在籍しながら個別の特別支援教育を受ける)による指導を受けている自閉症児は10年で4倍に、と大きく増加している(図1)。
ストレスから自傷や攻撃行動などの関連症状が出る
ASD児では、強い不安や緊張などのストレスから易刺激性が一時的に強まることがある。
ASD児の発達支援と治療にあたっている滋賀医科大学小児発達支援学部門特任准教授の阪上由子氏は、「ASD児は、言葉をやりとりしたり、気持ちを共有したりすることが苦手。
また、同じ行動を繰り返し、変化を嫌い、特定の感覚にも過敏であるということなどから、ストレスを感じた時には火が付いたように泣いたり、頭突き、体のあちこちに噛みついたり、跡が残るくらい自分でほほを叩くなどの自傷行為や、攻撃性、興奮を示すイライラ行動が多くなる」と解説する。
また、夜なかなか寝付かない、頻回に起きるといった睡眠障害も生じやすい。「治療の現場では毎日の子育てで疲弊している養育者の負担を軽減するためにも、ASD児の関連症状がなんとか改善すればと考えている」
本人も家族も苦しむこれらASD児の易刺激性を、日常的な食というアプローチで軽減し、治療に寄与することができないか、と考えたのが、京都府立大学大学院生命環境科学研究科 動物機能学研究室講師の井上亮氏である。
腸内に膨大な数で生息している腸内細菌叢や腸の免疫システムの研究者だ。
「2010年以降、メタゲノム解析によって、自閉症児に特有の腸内細菌叢の乱れがあることが活発な話題になってきた」と話す井上氏は、2016年に阪上氏と最初の共同研究を行った。
この研究によって、自閉症児の腸内細菌叢は定型発達児と異なっており、ブラウティア菌という腸内有用菌が少ないことなどを見いだした。
ASD児には腹痛、便秘などの消化器症状がある
実は、ASD児には、行動やコミュニケーションの障害という中核症状とは別に、腹痛、便秘、下痢、嘔吐、腹部膨満といった消化器症状が併存しやすい。
その不快感が入眠困難や頻回の中途覚醒といった睡眠の問題や、かんしゃく、自傷行為の悪化の要因となりうると考えられている。
「慢性的な便秘などの消化器症状が易刺激性を悪化させるのなら、腸内細菌叢を健全な状態に変えることによって、ASD児のイライラ症状を改善できるのでは、と考えた」(井上氏)。
こうして、「消化器症状」に着目し、「食」で腸内細菌叢の状態を改善することで、ASD児の易刺激性という「医」の問題を解決する研究が始まった。
無味無臭の水溶性食物繊維が突破口に
腸内細菌叢を変えるための介入試験の候補となった素材が「水溶性食物繊維」だ。水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサになり、それによって腸内細菌の数が増えるなどして腸内細菌叢を健全な状態に保つ作用があることが近年活発に研究され、“腸活素材”として話題になっている。
大麦やワカメ・昆布などの海藻、納豆、果物やゴボウなどの食品に多く含まれるため、こうした素材を食事に加えてとらせるのがいい。
イライラ症状が減り、炎症性サイトカインが減少
13人のASD児に、1日あたり6gの水溶性食物繊維をとってもらったところ、2カ月後に、1週間あたりの排便回数が平均で1.3回から2.8回と2倍に。
自傷行為、他者への攻撃性、かんしゃくといった興奮性行動も減った。
腸内細菌叢をみると、前回の研究において自閉症児で少ないことが確認されていたブラウティア菌が定型発達児に近づき増加(図4)、血液中の炎症性サイトカインも減少していた。
減少したサイトカインは、「IL-1β」、「IL-6」、「TNF-α」の3つ。
「いずれも脳の炎症に関わることが報告されている炎症性サイトカインの代表格。調べた中で低下したのが、この3つだった。自閉症の人の血液中でもこれらのサイトカインが上がっていることが欧米の研究で報告されている」と井上氏は説明する。
脳と腸が、自律神経やサイトカインを介して密接につながりあうという「脳腸相関(brain-gut interaction)」、「脳-腸-腸内細菌叢軸(brain-gut-microbiota axis)」というキーワードは、近年、医学界でも話題となっており、脳の機能の異常の一つでもあるASDも、腸との関わりが強いとする見方が強い。
「脳の炎症は、自閉症はもちろん、うつ病やパーキンソン病など脳の機能障害の原因の一つとなる。腸の炎症を抑えることによって、自閉症児のイライラが抑えられたのではないか」
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