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病院での自費カウンセリングはやっちゃだめなんですってー開業の経緯②ー | 京都・四条烏丸 カウンセリングオフィスSHIPS(認知行動療法・ブリーフセラピー)

こんにちは。カウンセリングオフィスSHIPS代表です。
カウンセリングオフィスSHIPSの詳細はこちらです。
https://counselingships.com

後編です。

代わりの受け皿

別機関との業務提携案

 さてさて、栄仁会カウンセリングセンターは、医療法上やってはいけない事業だったということで閉所が決まりましたが、そのまま閉所だと今通われているクライエントさんにも大きな迷惑がかかります。
 そこで代替案として提案されたのが、医療法人とは全く別機関(運営組織)と業務提携をするという案でした。我々宇治おうばく病院の心理士は、おうばく病院に雇用されたまま、業務提携先に出張する。代わりに宇治おうばく病院は、その業務委託費の支払いを受けるということです。
 まあなるほど、確かにその案もありますね。ただ、気になる点として3つほどありました。

業務提携案の問題点

 ひとつは、詳しくは書きませんが、その気になる業務委託費がめちゃくちゃ安かったということ。いや僕らの人件費すら賄えないような業務委託契約ってどないなん?ということですよ。カウンセリングが続けられるんだからいいでしょ?ってことじゃないんですよね。やればやるほど病院にとっては赤字だし、結局カウンセリング部門は、病院組織にとっての赤字部門に逆戻りってことですよね。「病院が経営方針としてそれでいいって言ってるんだし、ちゃんとサラリーはもらえるんだから難しいことは考えずに黙って働いとけばいっか」というような発想もあるとは思いますが、病院経営のお荷物になるのは私は嫌です。
 2つ目は、私はあくまでも医療のなかでの臨床に価値を置いていたわけで、その別機関(業務委託元)がどれだけ「おうばく病院とは今後も密に連携をとるから、これまでとそう変わらないはずだ」と言っても、いやでも結局そこはそもそも医療機関じゃないですよね?ってことです。電子カルテも見られないし、どれだけ密な連携を謳ったところで、やっぱりあくまでも別機関であることを実務上、運営上実感させられることって出てくると思うんです。私がこだわっていた医療機関のなかでの臨床ができないなら、私設カウンセリングルームなら、もうどこでやっても同じ。ということは、あえてその別機関で活動する理由もなくなります。
 3つ目は、業務委託ってことは、委託されるカウンセリング業務をただただこなすマシーンになってしまうということ。カウンセリングの運営組織は別機関ですから、もうちょっとこうした方がいいのにとか、もっとクライエントの役に立てるのにとか思っても、その相談機関の運営方針、経営方針に口出しすることはできなくなってしまいます。なにか思うことがあっても聞き入れられず、「病院に雇用されて給料もらっているんだから安定は保証されてるわけで、つべこべ言わず黙って働いていればいいんだ」と言われても文句は言えません。別機関が悪いといっているわけではないですよ。業務委託契約という関係性上、これは仕方ないことで、個人的にこれではやりがいを感じなかったというだけの話です。

退職、独立

転職する?

 もう業務提携だろうがなんだろうが、医療法人の看板の中で臨床できないなら、それがもう叶わないなら、もう医療機関縛りをとらないといけないと思いました。自費カウンセリングをやっている別の病院に転職すればいいじゃないかというご意見もあろうかと思いますが、いやクサイ話ですが、おうばくの臨床好きだったんですよ総じて。現場の人たちは皆いい人だし、やりがいもありました。同業他社(病院)に転職って、そりゃ住めば都で気に入ったり、もっとよい病院で活動できたりする可能性だってあったかもしれませんが、おうばく以外の病院に行く気になれなかったんですよね。「この人以外考えられない。別れるんだったらもう一生恋愛しない!」という思春期女子みたいなこと言ってますが。

独立しよ

 というわけでほかの病院に転職するという選択肢を選ぶ気にはなれず、私設カウンセリングルームでやるんだったら、医療ではないという点ではどこでやっても同じ。なら独立しかないでしょう、ということで独立を決めました。
 それを決めたのが10月末。全然独立なんて考えてなかったので本当にゼロからのスタートでしたが、そこからよくまあ自分でも3ヶ月で準備したものだと思います。とにかく支援、治療の質を追求しよう、それができる環境にしようと考え計画を練りました。
 独立を決めて、準備もままなっていませんでしたが、勤務先のおうばく病院に退職を伝えました。詳しくは書きませんが、退職にあたり、残る心理士やほかの支援者、先生方にはご迷惑をおかけすることになる部分もでてきてしまうのは避けられません。それでも最後は、とても惜しんでくれて、惜しみつつも快く送り出してくださった皆さまに心からの感謝を伝えたいと思います。今後も支援者としてのご縁が続くことを願っています。もし必要なクライエントさんがいたら、自信を持ってお勧めできる医療者ばかりです。他機関連携ではまたお世話になります。むしろ、今まで以上にフットワーク軽く医療連携をしたいと思っています。

どうせ独立するなら今までとの違いを出さなくては

 というわけで独立は決まりましたが、どうせならこれまでのカウンセリングセンターとまったく同じ運営方法、方針では面白くありません。せっかく医療縛りをとった今、この枠組みだからこそできる支援や支援の質を追求しようと思いました。
 自分でいうのもなんですが、おうばくのカウンセリングでは予約が1ヶ月待ち以上は当たり前で、担当ケース数も所属カウンセラーのなかで最も多く、予約が取れないとクライエントさんから言われる人気カウンセラーとして鳴らしていました(ああ、恥知らずにもついに自分で言ってしまいましてすみません)。それだけ多くの方に支持していただいていたのでしょうし、私もできる限りのことはしていたと思います。やはり最初は泣き顔で来ていた方が、笑顔になっていくのは嬉しいものです。いまやどんな方が来ても、なにかしらお役に立てることはあるだろうと思ってはいます。
 とはいえ、これで十分だとは思っていません。もっとこうできたらよかったとか、もっと早く良くなってもらうこともできたかもしれないとか、もっと役立つことをお伝えできたかもしれないと、反省することも多いですし、今後も常に研鑽を欠かさないようにしなくてはならないと思っています。だから、せっかく自分で始めるのだから、より良い支援のためにこれまでやりたくてもできなかったことができる環境にしようと思いました。
 それは主に、クライエントさんとお会いしている時間外のことです。料理屋さんでいえば仕込みの時間の質と量を高めるということです。カウンセリングって、クライエントさんと会っている時間だけで完結するものではありません。記録をまとめ、見立てを考え、支援計画、介入計画を常にブラッシュアップさせていかなくてはなりません。受診している方、訪問看護などほかの支援者も関わっている方なら、支援者間の連携にも時間を使いたいです(もちろん同意をとった上でですよ)。クライエントさんからはなかなか気づかれにくい部分でしょうが、美は細部に宿るのです。それは、カウンセリングという支援の効果や効率性を高め、結果的にクライエントさんにとってもトータルのコストパフォーマンスを高めるだろうと考えています。その分1回あたりのクライエントさんの経済的負担を増やしてしまうことにはなりますが、たとえば20回通って良くなっていた人が、10回のカウンセリングで良くなれるなら、1回分の費用が少し上がってもトータルの費用は下がりますよね。
 今までは50分のカウンセリングを10分のインターバルを置いて計60分で、ひたすら次から次へとこなす毎日でした。50分話聞いた後、次回予約を取るなら取って、そこから記録をまとめて、次の予約の方の記録を見返して、次の方をお出迎えするというのを10分でこなすわけです。たしかに精神科医療のドクターなんて5分診療などと揶揄されますが、もっとえげつない数の患者さんを捌いています。10分もあるんだから甘えてるんじゃねえと言われればそれまでですし、じゃあ反対に闇雲にインターバルを長く取ればいいかといえばそういうわけでもないですが、とはいえやっぱり10分(実質2-3分の記録時間)じゃ質の高い医療支援てできないと思うのです。だから新しいオフィスではインターバルを長めにとる時間設計にしました。鮨屋の質も仕込みで決まりますからね。

屋号とかホームページとか

 場所は悩みましたが、すべての人にとって便利な場所などないし、最大公約数的に考えると京都の中心であるのがよいだろうと考えまして、四条烏丸ほぼ一択でした。
 屋号決めもゼロからで、もっとワクワクするかなと思いましたが、そんな余裕はなかったです。でも屋号は2日で考えたわりにとても気に入っています。SHIPSは、Systems Healthcare by Interactional and Pragmatic Solutionsの頭文字で、「相互作用・関係性の観点から、役に立つ解決をつくり、社会全体のメンタルヘルス向上に寄与する」という意味です。臨床で大切にしているエッセンスをてんこ盛りにしたら良い感じにまとまって、頭文字がちょうどSHIPSとなりました。服屋じゃないです。
 知り合いのグラフィックデザイナーさんにも助けてもらって、ホームページやロゴマークなどグラフィック系をきれいに整えていただきました。非言語ってコミュニケーションでとても大切ですよね。視覚情報、グラフィックって非言語コミュニケーションです。ロゴマークも、Sの字をデフォルメしたもので、なんならSHIPというよりBOATですが、手漕ぎボートで漕ぎ出してるようなサマは今の私の状況にもぴったりです。多くの人に知ってもらい愛されるマークになったら嬉しいです。

仲間ができました

 それと同じくして、独立しようと思ってることを少しずつ周りに話すと、一緒にやろうかなと言ってくれる人がいました。
 そして、少年漫画みたいにひとりふたりと仲間が増えました。本当に周りに恵まれています。
 それも、皆、私にはない天性の感受性と臨床眼をもったカウンセラーたちです。人という存在の多様性への、心からの好奇心と援助精神を持ち合わせていて、もし自分がこの職業じゃなくて心理的に悩んでいたならこの人に相談したかっただろうなと思える人たちです。流派の枠を超えて、この上ないメンツで始められることになりました。

いよいよはじまり

 ほとんどのクライエントさんにも最後のご挨拶をすることができました。残念ながらご挨拶が叶わなかった方もおられますが、独立を知り自分で調べて連絡をいただいた方もおられます。
 今後の支援をどこで受けるかはクライエントさんの自由意志に委ねるほかありませんが、もしまたお目にかかれるなら支援者としてこれ以上の幸せはありません。クライエントさんが少しでも穏やかな生活を取り戻せるよう、あるいは始められるようこれからも出来る限りのことをしていきたいと思っています。

 クライエントさんのなかには、開業のお祝いをくださった方もおられます(こう書くと求めてるかのようですが、決してそうではありませんよ)。クライエントさんにも恵まれているなあと思います。美容師さんだって、弁護士さんだって、お金を払って(自分一人ではできない)専門的支援を受けるという営みはカウンセリングも同じです。この業界は、カウンセラー-クライエントとか、支援者-被支援者とか、いろいろな言葉で支援する者と受ける者を明確に区別して、両者の間に隔たりを持たせようとしますが、最後は人と人との繋がりなんだなあと実感します。

 さて、約15年の医療臨床での冒険はおわりです。でも本当にここまで関わってくださったすべての人に感謝しています。そして、今後も関わりを続けてくださったら嬉しいです。
 そして、これから初めてお目にかかることになる皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。皆さまのお役に立てるよう、相談してみて良かったと言っていただけるよう全力を尽くします。

 こんなに長い文章を最後まで読んでくださった方。どうもありがとうございました。
 もしお目にかかることがあれば、お声かけくださると嬉しいです。

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