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エビデンスとプラグマティズム | 京都・四条烏丸 カウンセリングオフィスSHIPS(認知行動療法・ブリーフセラピー)

こんにちは。カウンセリングオフィスSHIPS代表です。京都 四条烏丸でカウンセリングルームをしています。オンラインカウンセリングもしていますので、全国からアクセス可能です。

ホームページもまだまだ仕上がってないのですが、仕上がる前にちょこっと専門的でまじめな記事でも書こうかなと思います。いつもこんな記事ばかり載せるわけではないですが。

カウンセリングオフィスSHIPSの詳細はこちらです。

ブリーフセラピー・認知行動療法ってなに?

 カウンセリングオフィスSHIPSでは、ブリーフセラピーや認知行動療法に基づくカウンセリングをメインに実践しています。

 ブリーフセラピー(Brief Therapy)とは,問題の原因を個人のなかの性格や能力、病理など(内的資質といいます)に求めるのではなく,コミュニケーション(相互作用)の変化を促して問題を解決・解消していこうとする心理療法です。
 ・・・・・・なんのこっちゃ??ですよね。「原因が何か」「誰が悪いのか」ではなく,「今ここで何が起きているのか」「どうすればそもそも今の状態がましになるのか」「なにが役立つのか」ということを第一に考えて、使えるものは周りの環境でも人でもなんでも使って、問題に振り回されている当人と周囲のコミュニケーションを穏やかでスムーズなものに変えていこうっていうことです。
 こころと人間関係の問題には、かならず人間関係が絡んでいます。引きこもりだって、「人間関係がないことに悩んでいる」という点で、人間関係の問題と言い表すことができます。じゃあ、その人間、人と人ってなにで結びついているかといえばコミュニケーションです。どんな問題でも、それは人と人とのコミュニケーションのなかで形作られていくものです。
 たとえば、なんでも他人に頼るAさんがいるとして、Aさんのことを「依存的(な性格)」ととるとAさんを、Aさんの性格をどうにかしなきゃ!ってなります。もちろん、そういうアプローチが有効なこともあります。でも、(関係)依存的な行動が問題になるときって大体、依存された(Bさん)側の「逃げる・避ける」という行動もワンセットになってることもよくあります。問題に思っていたら当然逃げようとしますよね。そして、追ってくるから逃げるし、逃げるから追ってくるという悪循環のコミュニケーションになってるわけですね。そんなとき、追われてるBさん側からしたら、「Aはなんて依存的な性格なんだ(これは問題だ)」となるのですが、かたやAさんを好きで追いかけてるようなCさんがいたとして、Cさんにとっては、Aさんの性格って全然問題じゃありません。なんなら「甘え上手」くらいに思ってるかもしれません。
 つまり、どんな問題でも、それ単独で存在してるのではなくて、その問題を取り巻くコミュニケーションとワンセットということです。ブリーフセラピーでは、その問題そのものだけでなく、その問題はどんなコミュニケーションによって成立しているのかっていうところまで視野を広げて見立てます。すると、性格を治すという対処法以外にも、コミュニケーションを変えるという対処法もうまれて、問題に対して広く柔軟にアプローチすることができるようになります。ひとつの解決法を絶対視することなく、様々な解決法のなかから今役立つ方法を使おうと、相対的に判断します。

 ちなみに、コミュニケーション・相互作用がちょっと変わるだけで、その当人も周りもびっくりするくらい楽にスムーズな関係性になって、問題もよくなることってよくあります。Aさんのケースだったら、BさんがAさんを追いかけるときをつくる(お願いするとか、頼みごとするとか)ような行動をとったりすると、全体のコミュニケーションがちょこっと変わります。もちろん、対処法はそれだけではありませんが、このちょこっと変わることが大切で、そこからじわりじわりと、ときに劇的に、Aさんの(依存的と見做されていた)行動が変わったり、あるいはBさん自身のAさんに対する気持ちが変わったりすることって本当によくあります。するといつの間にか、「依存的なAさん」という問題は、だれも問題にしなくなってしまいます。ホンマかいなと思われるかもしれませんが、ホンマです。

 その人の内的資質について「依存的性格」というものを想定して、それが原因だからどうにかしなくちゃ!としなくたって、問題が解決/解消することってあるものです。もちろん、原因を想定して、そこが良くなるように働きかけることだってできますよ。ただ逆に、原因を追究しすぎると、「自分の性格が悪いんだ」って自分を責めたり、自分が悪者にされたような気持ちにもなったりして、どんどん思い詰めていってしまう人もいるかもしれません。解決法は人によって異なるってことですね。絶対的、本質的にダメなものなんてなくて、周囲との相互作用の影響を受けているものだと思います。
 それから、ブリーフセラピーは、問題の原因を探ることにこだわるような伝統的なアプローチとの対比で,いまできる,最小限の解決を探っていこうという現在・未来志向の心理療法です。
 そういう特徴があるので、個人のこころの症状・問題だけでなく,こじれた人間関係の問題,学校・職場・家族などのコミュニティで起きる関係性の問題への対応を得意としています。

 ちなみに、Brief(短期間)という言葉は,週1-2回の面接を何年間も続けること(計数百回の面接)が前提であった精神分析(力動的心理療法)が隆盛だったころ,およそ10-12回の面談で解決解消が図れるアプローチを象徴する言葉として名付けられものです。すべてのケースが短期間におわるわけではありませんが,総じてコストパフォーマンスがよく,今の状態がよくなること,悩んでいた気持ちが穏やかになることに徹底的にこだわったプラグマティックな(実用主義的な)心理療法であるといえます。
 ブリーフセラピーと近い哲学や治療論をもつ心理療法には,解決志向アプローチ(SFA)や家族療法,システムズアプローチ,ナラティブセラピー,オープンダイアローグ,ヒプノセラピー(臨床催眠)なんかがあります。まあヒプノセラピー系の人はちょっと違う人もいますが。

 それから、認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy;CBT)は,人の認知(ものの考え方・価値観)や行動(対処行動,コミュニケーション)に働きかけ,ストレスや病気で狭く凝り固まってしまった考えの癖や行動の癖を,クライエントさんご自身の力で解きほぐし,セルフケア力を高めていけるように支援する心理療法です。欧米では,主にこころの問題や症状,たとえばうつ病や不安障害(パニック障害,社交不安障害),強迫性障害,心的外傷後ストレス障害(PTSD),不眠症,摂食障害,統合失調症などの多くの精神疾患に対するエビデンス(治療効果)が認められています。
 長くなりましたし、このへんは、また気が向けば、もうちょっと詳しく書いていこうかなと思います。

エビデンスとプラグマティズムに基づくカウンセリング~ブリーフセラピー×認知行動療法

 問題に対する対処法を評価する際,私たちは「正しいかどうか」だけでなく「役に立つかどうか」のほうをより大切にします。それをプラグマティズムPragmatism-実用主義と呼びます。それがその人に「実際役に立つか否か」を評価の軸としている概念です。認知行動療法でもこんな考えはもってますが、主にブリーフセラピーで大切にしている考え方です。
 エビデンスは,科学的に証明された「正しさ」を評価の軸としている概念です。ブリーフセラピーもこんな考えはもってますが、認知行動療法が主に大切にしている考え方です。

 プラグマティズムはエビデンスを否定しているわけではありません。やっぱり、まずエビデンスを参照します。それがもっとも効率がよく,クライエントさんの問題解決に役立つ可能性が高いからです。
 しかし,エビデンスを適切に参照することと,それを妄信することは全く異なることです。エビデンス至上主義にならないために、プラグマティズムの考え方も大切にしています。
 エビデンスとは研究知見の集積であり,新しい問題や珍しい問題については,十分な知見が集まっていないこともあります。それらの治療法にはエビデンスがありません。ではエビデンスがないからといって無視するのでしょうか。エビデンスしか見ていないとそういうことを平気でする人がいます。
 また,ある治療技法を使用したところ70%のクライエントが改善したというA技法があるとします。その技法は確かに70%の治療成果を誇り優れたエビデンスを示しているといえます。しかし,残りの30%はどうなるのでしょうか。「A技法は科学的に正しいかもしれないが,どうしてもA技法は性分に合わない」「効果がない」という人もいるでしょう。当オフィスでは,エビデンスがあるからといって,やりたくないことを強要することもありません。正論が役に立つとは限らないのです。

 エビデンスはあくまでも統計です。なにかの基準でくくっても,その基準に当てはまらない例外は必ず存在します。エビデンスからこぼれ落ちる事例/症例もかならず存在します。エビデンス至上主義になってしまうと,それらの悩みを持つ人たちを無視することになりかねません。

 もちろんすべてのケースに有効な方法などありませんし,当オフィスはすべてのケースを改善させます,と誇大広告的に主張したいわけではありません。ただ,月並みですが,人という存在はひとりひとりユニークなものです。誰一人として同じ存在はいません。その存在,ケースのオリジナリティ、多様性を最大限尊重し,ひとりひとりの悩みや問題を,その人のおかれた状況のなかで理解し,その方が実行可能で,役に立つアプローチをともに考えていきたいなと思っています。

こんな文章誰が読むんでしょうね。読んでくださった奇特な方、本当にありがとうございました。ゆっくりお休みください。

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