うつについてのあれこれ②-うつなのに遊べるのって怠けなの? | 京都・四条の心理カウンセリング カウンセリングオフィスSHIPS 認知行動療法・ブリーフセラピー
こんにちは。カウンセリングオフィスSHIPS代表です。京都 四条烏丸でカウンセリングルームをしています。オンラインカウンセリングもしていますので、全国からアクセス可能です。
当オフィスは、ブリーフセラピー、認知行動療法を中心にしたアプローチで、プラグマティック(実用主義的な)支援を掲げてカウンセリングをおこなっています。
さて、本日もうつについて、思いつくままに覚書的に綴っていこうと思います。本日のテーマは、「うつなのに遊べるのって怠けなの?」という疑問についてです。
はじめにー重要なお断り
前回も書きましたが、読んでいただく前に重要なお断りがあります。
それは、どのような症状、病気、問題も、こころと人間関係にまつわる内容は個別性が非常に高く、ケースごとに対処法も異なるということです。つまり、問題の原因や解決法というものは安易に一般化できるようなものではなく、「原因はこうです」「こうすれば治ります」といった対処法をお伝えすることは本来は難しいものなのです。
いや、世の中には、HOW TOを教えてくれる本やサイトにあふれています。「こうすれば治ります」と私も断定的に言い切れたら格好いいのでしょうけど、臨床において誠実であろうとするなら、やはり安易に言い切ることはできません。
たとえば、元うつ病だった方が何らかの方法でうつ病を克服されたとしても、その対処法を別の方にそのまま当てはめることはできません。あくまでも、その対処法は、元うつ病だった当事者の方のみに通用するスペシャルメソッドであるのです。「私はこうして克服したから、それを世の中に広めたい。あなたも、私と同じようにすれば治ります。」といった発想、経験則で対人支援を行うことはリスキーである、と戒められているのはそのためです(世の中にいっぱいいますけどね)。
ですので、これから書いていく内容も、概ね一般論的な内容にとどめますが、それでも、すべてのうつがそうであるだとか、すべての人に当てはまるということを主張したいわけではありません。「私はそんなことないけどなあ・・・」というような感想を持たれたとしても、それは間違っていません。そのうえで、読んでいただければ幸いです。
うつなのに遊べるのは怠けなの?
「うつ」だから仕事や学校には行けないけれど遊ぶことはできる、という方いますよね。ご本人は肩身の狭い思いをしますよね(なかには、なんで遊んだらダメなんだ!と憤る方もおられるかもしれませんが)。周りの人は、「あの人、うつなのに、楽しいことだけはやっていて、ただ嫌なものを避けて怠けているだけなんじゃないか」なんて思う方もおられるかもしれませんね。
今回は、そんなお話です。
ではうつなのに遊べるのは怠けなんでしょうか。結論から言えば、怠けではありません。のちほど解説しますが、回復のプロセスには必要なものです。
「うつなときもあるし、うつじゃないときもある」という状態
まず、結論。怠けではありません。「いや、そんなこと言ったって、うつだってことは、いつでもどこでもうつじゃなきゃ変でしょう?」「病気なんだったら病人らしく大人しくしてないといけないんじゃないですか」なんて思う方もおられるかもしれませんね。確かに、その理屈もわかります。というか、半分は正解です。
なにが半分正解かというと、うつ病を発症して症状がピークのときは確かに、いつでもどこでもうつで、なにもする気が起きなくて、1日中ぐったり寝ていることもあります。
でもですね、病気を治療する、病気から回復するっていうことは、その「いつでもどこでもうつ」状態が、少しずつ変化するということなんです。じわじわと良くなっていくプロセスでは、「うつなときもあるし、うつじゃないときもある」という状態を必ず通ります。スイッチのON/OFFのように、急にうつが治るわけではないんです。
「自分がやりたいこと(自分が求めること)」と「やるべきこと(周囲・外的環境が求めること)」
行動や活動を、下図のように「自分がやりたいこと(自分が求めること)」と「やるべきこと(周囲・外的環境が求めること)」の二軸で考えてみましょう。
元気な人であれば、「やりたいこと」も「やるべきこと」も両方できます。STEP3の状態です。両方が重なる活動も多いでしょう。仕事でも、自分もそれをやりたいし、周りもそれを求めているという仕事であったら、それはかなり適応的ですよね。
しかしうつのときには活動意欲が低下するので、「やるべきこと」はもとより「やりたいこと」もできなくなってしまいます。STEP1の状態ですね。
うつのときに下がっている意欲や関心を少しずつ回復させていこうとすると、まずは「やりたいこと(自分が求めること)」の軸で、少しずつできる活動を増やしていくことを考えます。
すると「やりたいこと」(例えば負荷の低い趣味的活動)はできるけど、「やるべきこと」(例えば負荷の高い仕事)はできない、という状態(STEP2)を必ず通ります。
必要なのは、活動するかどうかを選べる状態にもっていくこと
ここで大切なのは、うつというのは、「やりたいこと」であっても「やるべきこと」であっても、思うように動けなくなってしまう状態であるということです。まるで誰かに操られているかのように、です。
私たちは、本来は皆、主体的な存在ですから、通常は、なにかをするかしないかを主体的に選べる存在です。風呂に入るか入らないか、食べるか食べないか、服を着替えるか着替えないか、散歩に行くか行かないか、学校に行くか行かないか、仕事に行くか行かないか。
仕事をすることもできるし、しないこともできるのです。そのうえで、経済的な事情や、興味関心、人によっては世間体といったものを動機づけにして”仕事をする”という行動を選択しているわけです。うつは、この選択ができなくなってしまっている状態なんです。
本当はできるのに、(やるべきことを)やらないのなら、それは「怠け」といってもいいでしょう。しかし、うつはやるかやらないかを選び取れる状態にないのです。回避しているように見えても、回避という「やらない」行動しかとれなくなってしまっているのです。
ですから、うつからの回復とは、”やるかやらないかを自分で選べる状態にまでもっていく”といってもいいでしょう。だれも好き好んで、回避する行動を取っているわけではありません。誰だって、本当は生き生きと活動していたいはずですし、基本的な安全・安心の中で困難なことにもチャレンジしていきたいはずです。
ゲームもそうですよね。簡単すぎるゲームでは飽きてしまいます。かといって難しすぎるゲームでもチャレンジする意欲を失ってしまいます。できるかどうかわからないけど、ドキドキするけどチャレンジしてみよう、そう思えるゲームを自然と手に取るはずです。やるかやらないかを選べるくらい体の調子が回復すれば、人は自然と、自分にとってちょうどいい難易度の活動を選びとっていくものです。そういうサポートをしていきましょう。
怠けなんじゃないかとイライラしてしまう方へ
とはいえ、「うつがバッテリー切れなのだったらどんな活動もできなくなるはずなのに、あの人は遊ぶことはできているんだよなあ」「周囲に迷惑をかけてもいるんだから、病人は病人らしく慎ましく過ごしなさいよ」と思って、イライラしてしまっている方もおられるかもしれません。
そんな周囲の方の感情について、無視してくださいと言っているのではありません。ただ少し落ち着いて振り返ってみてほしいのは、イライラして怒っているあなた自身も余裕がなくなっているのではないかということです。
実は、「怒り」や「イライラ」というのは、期待通りにいっていない「困り感」を表す感情です。怒っているご本人がなにか困ってしまっている状態です。
専門的には表に現れる「怒り」「イライラ」を二次感情といい、その裏に隠れている「困り感」を一次感情といいます。
たとえば電車が遅れてイライラするのは「本当だったら、予定通り出発して、次の予定に間に合うはずだったのに」という、叶うはずだった期待が叶わないことに対する困り感が隠れています。「怒っている人」は実は「困っている人」というわけですね。
逆に自分が困らないことにはイライラしません。時間に余裕がある人は電車が遅れてもイライラしません。
ですので、イライラしてしまう人は、自分がなにに困っているのか見てみましょう。「自分だって休みたいのに休めないことに困っている」「ただでさえ忙しいのに、うつで休んだ人の分まで仕事量が増えてしまっているのに、自分だけは弱音を吐くことも許されないような気にさせられている苦しさに困っている」「自分だって倒れそうなくらい頑張っているのに、みんな倒れた(うつの)人のほうばっかり見て、自分の努力が認められていないようなさみしさに困っている」・・・なにに困っているかは皆違うでしょうが、なにかには困っているのだということです。
自分が困っているときにそんな感情になること自体はおかしいことでもありませんし、弱さの表れでもありません。でもそんなとき、うつになってしまった当事者にその怒りやイライラをぶつけても、なにも解決・解消しません。もし自分だけで、自分の感情をどうにもできずに、落ち着いてうつの人と向き合えないと思ったら、あなた自身も自分の気持ちを整理できるといいですね。
ひとりで悩んで、身近な誰かに相談して、愚痴って、それでも解消しないモヤモヤが続くのなら、そんなときはカウンセリングの出番です。
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