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嫌な気分を切り替える秘訣!
古代ギリシャのストア派哲学者エピクテートスは、
「人はものごとによって悩むのではなく、その受け取り方によって悩むのである」
と述べています。
私はこの言葉に出会って以来、心を悩ます問題に直面すると、自動思考のようにこの言葉が心に浮かんできます。
その意味するところは、簡単に言ってしまえば「悩む人は悩むように物事を考え、悩まない人は悩まないように物事を考える」ということになります。
人が不安になったり、憂うつになったり、イライラしたりするのは身の回りで起きる嫌な出来事が原因であると一般的には考えられています。
しかし、本当にそうでしょうか?
もしそうであるならば、嫌な出来事を一緒に体験した人は皆同じように嫌な気分になるはずです。ところが、すっかり落ち込む人がいる一方で、それほど落ち込まない人もいれば、中にはまったく落ち込まない人だっているのです。
これは、嫌な出来事が嫌な気分のきっかけにはなっても原因にはならないことを意味しているのです。
では、嫌な気分を生み出しているものは一体何でしょうか?
それは、私たち自身の勝手な思い込みや歪んだ価値観など、つまり物事や出来事に対する柔軟性のない不合理な考え方や受け取り方が嫌な気分を生み出しているのです。
この柔軟性のない不合理な考え方や受け取り方を「イラショナルビリーフ」と言います。
私たちが嫌な出来事に遭遇したとき心に嫌な気分が生じるのは、このイラショナルビリーフが働いているからです。
例えば、AさんがBさんから失礼な発言を受けて怒りが生じたケースで考えてみましょう。
Bさんから失礼な発言を受けたとき、Aさんの心に突然怒りが生じた訳ではないのです。
その前に、AさんはBさんの発言を「そのような失礼なことを言ってはならない」と受け取っているのです。
これは、無意識のうちに自動思考で瞬時に行われます。
Bさんの発言をこのように受け取ると、Aさんでなくても怒りが生じます。怒りの大きさは受け取り方の程度によって決まります。
この受け取り方(イラショナルビリーフ)が、なぜ嫌な気分を生み出すのでしょうか?
それは、イラショナルビリーフの特徴を見るとよく分かります。
「そのような失礼なことを言ってはならない」
という受け取り方のどこに問題があるかお分かりでしょうか?
第一に、柔軟性に欠けています。選択肢が一つしかないため、相手が失礼なことを言わなければ問題ないのですが、失礼なことを言ってきたときはAさんの許容範囲を超えてしまうのです。だから嫌な気分が生じるのです。
第二に、論理性に欠けています。Aさんがどれほどこのように思い詰めても、失礼なことを言うか言わないか、決めるのはBさんです。Bさんの言動をAさんはコントロールできないのです。コントロールできないことをコントロールしようとしているところに無理があり、論理性に欠けるのです。人間というものは理屈に合わないことを思い詰めていると感情が混乱するものです。
第三に、現実性に欠けています。人に失礼なことを言うのは、確かに良くないことです。すべての人が失礼なことを言わなければ、人間関係は素晴らしいものになるはずです。しかし、残念ながら現実はなかなかそのようにはなりません。むしろ世の中には失礼なことを言う人がいるということを心得ておくことです。このような現実性の欠けた思い込みが感情を混乱させるのです。
そして最後に、もう一つイラショナルビリーフの特徴を挙げておきましょう。それは、受け取り方に有益性がないということです。つまりこの受け取り方は、嫌な気分を生み出すだけでAさんの役には立たないのです。Aさんにとって、人生の目標を達成する上で有益な受け取り方とは言えないのです。
そのような受け取り方なら、一刻も早く捨て去り、自分の役に立つ受け取り方を身に付けたいものです。
嫌な気分を切り替えるためには、物事や出来事に対する考え方や受け取り方を柔軟で論理的で現実的なものに見直すことが肝要です。
こうした柔軟で理にかなった受け取り方を「ラショナルビリーフ」と言います。私たちの人生に有益な効果を与えてくれるものです。
私たちが無意識のうちに身に付けてしまった「イラショナルビリーフ」を「ラショナルビリーフ」に見直すことが、嫌な気分を切り替える秘訣と言えます。
嫌な気分が生じたときは、その背後にイラショナルビリーフが潜んでいないかどうか、チェックしてみてください。
不合理な考え方や受け取り方(イラショナルビリーフ)を理性的なもの(ラショナルビリーフ)に見直して、嫌な気分を切り替えてみてはいかがでしょうか?
よろしければ、メールカウンセリングで詳しくお伝えします。
→ https://www.ningen-kankei.jp/
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回も、お時間のある時に読んでいただけたら幸いです。