彼女はよく寝る子だった。 大学の帰り道、一緒に電車に揺られていると 僕の左肩は彼女の枕になった。 彼女が気を許してくれていると なんだか嬉しくなって 君の寝顔を見て微笑む僕。 卒業式の日。 学位書を手に電車に乗り込むと 彼女が先に座っていた。 4年間、座り続けた彼女の右隣の席は もう埋まっている。 僕の友人の左肩が彼女の枕の役目を果たしていた。
ぼくは営業の仕事をしている。 無形商材を扱っていて毎日数字に追われている。 今年で5年目になる。 新卒からここまで辛いことのほうが多かった。 何も考えずに輝かしい将来だけを 見つめていた1年目。 コロナの影響もあり絶望を味わった2年目。 何とか一念発起し、充実した3年目。 良くも悪くもなくただ月日が流れた4年目。 そして5年目。 僕は今の会社を辞めるつもりだ。 入社前から3年目、5年目、7年目、10年目で 自分のキャリアを考えると決めていた。 臆病で慎重派の僕のことだから
僕は週に1冊ペースで小説を読む。 子供の頃から国語は得意な方。 人に何かを伝える、文章を書くのは ある程度できる方で活字は特に嫌いではなかった。 高校生のころからスマホを持ち始め SNSやサブスクの沼にどっぷりハマり 大学卒業まで本に触れる機会は多いとは 言えなかった。 僕が本を読むきっかけとなったのは 現在勤めている会社の最終面接。 面接官に 「君は感覚で話しているから推理小説を読むといい」 その言葉が妙に刺さり、帰り際に本屋へ立ち寄った。 昔から本屋特有の匂いが好き