大阪への旅
半年前に大阪での大学時代の同窓会開催が決まった。せっかく遠く足を延ばすならと普段会えない、大阪在住の高校時代の友人、近くに留学してきていて今は大阪で働いている若い友人、かつて漢方の勉強会で一緒だった今は岡山在住の友人にも連絡した。
大学の同窓会は、コロナ禍もあり九年ぶりだった。大学は長崎だったが西日本に住む人が多かったのと、幹事が現在住んでいるので、大阪での開催となった。今回は八十人中二十九名が集まった。中には卒業して四十四年経って初めて同窓会に参加した人もいた。男性陣は会っても全く分からない。女性陣は見て分かる人も、名前を聞いたら思い出す人もいる。会場は梅田駅近くの阪急インターナショナル、建物もスタッフのサービスも素晴らしいホテルだった。一次会はフルコースのディナー二時間、二次会は同じ会場をさらに二時間借りて行われた。
幹事が司会をして同窓会が始まる。みんな一言ずつの挨拶が長くなり、二十九名が二時間では話しきれなかったので、そのまま二次会に突入して全員が話し終えた。同窓生の中には就職してアメリカ勤務になりそのままずっとアメリカにいた為に、子供が生まれ彼らが大学卒業して、その後ようやく帰国でき初めての同窓会出席となった人もいた。冒険好きだった人は、アイスランドにオーロラ見に行ったという。やはり持ち前の気質は変わらない。ほとんどの人がまだ少しは働いていてそれぞれの趣味を楽しんでいた。今回治療中の人も、大病を患い回復してきた人もいた。還暦を過ぎ何もトラブルのない人は少ないかもしれない。懐かしい語らいは遅くまで続き、その日は会場近くのビジネスホテルに戻って休んだ。
同窓会当日の朝、伊丹空港に到着すると、高校時代の友人のＭが、空港まで迎えに来てくれた。なんとゆっくり話をするのは四十九年ぶり。懐かしかった。私たちはお互いに卒業して就職、結婚子育てと続き、ほとんど時間がなくて会えなかった。還暦同窓会の時にちょっとだけ電話番号を交換して今回ようやく会えることになった。彼女の長い話を聞いて驚いた。数年前まで二十年間に渡って難病で寝たきりになった夫を看病したというのだ。そして同居していたお姑さんお舅さんを見送ったとのこと。今は少しアルバイトしながら悠々自適な生活らしい。大阪に住んでいるというのに、車は軽トラック、趣味はなんと畑で実験栽培という。実験のために二つの温室を作り、トマトがどうすればおいしくできるかということを、トマトの幹を背を高くしたり、二酸化炭素を多くしたりして比較栽培しているそうだ。自慢は春のトマトだが、もうすぐ収穫するミニトマトを送ってくれるという。高校時代は美人で有名だった彼女、キャビンアテンダントとして就職していたので、イ
メージのギャップが大きかった。ランチの後、タルト専門店に並んで待って、大阪一のおいしいタルトを味わった。
翌日はホテルを早めにチェックアウトし、前日の阪急インターナショナルに戻り、朝のひと時、豪華なそれでいて人もまばらなティールームで外の緑を眺めながらゆっくりとお茶と読書を楽しんだ。
友人Ｍは、故郷の岡山から来てくれた。また共通の韓国人の友人Ｈも今は大阪で働いていて、久しぶりの三人での再会となった。友人のＭの勧めでオーガニック専門ののレストランでおいしい地元産の野菜の料理をいただいた。話は弾みあっという間の二時間、その後以前テレビで見たブルーのボトルが
トレードマークのブルーボトルコーヒーに移動した。オシャレな店内はモダンな作りでブルーボトルの絵柄が効いている。期間限定のクリスマスコーヒーもハーブが効いてとてもおいしかった。Ｈは就職して二年目、楽しく働いているが、夜十一時までの残業の毎日だという。若くて楽しくこなせていても無理は禁物と伝えた。最後は私が乗るリムジンバスの乗り場まで二人で見送ってくれた。
七月突然膝が悪くなり歩きにくくなった。その後三か月通勤は夫に送ってもらい帰りはタクシーという生活が続いた。同窓会に参加できるかが危ぶまれたがなんとか行くことができてホッとした。行くことができただけでありがたく思える日が来るとは想像だにしてなかった。
同窓会はたまたま駅の近くで開催され、友人たちに会うのも事情を話して駅の近くにしてもらった。同窓会と言うのは心の底からなつかしさがこみあげてくる。また学生時代を知っていると、そこから四十四年が経ち、人生本当にいろいろだと改めて思った。一方で人柄や性格はあまり変わらないものだとも。幸せに人生を送っているものとばかり思っていたＮが長い介護生活を送っていたり、理想の職場に思えていたＨは残業続きだったり。同窓会のメンバーは趣味のバトミントン、テニス、フラダンスを楽しんでいて活動的に見えたが、以前私同様膝の不調を経験していて、そこから復活していた。そんな話を聞いて元気をもらえた。今回の大阪での同窓会は、旧友にも会えたし、都会の雰囲気も味わい、秋の良い連休となった。