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最近はまったこと

 ひと月ほど前のパリ五輪の開会式。セーヌ川で行われると聞いていたので興味津々で以前から楽しみにしていた。時差があるので録画予約した。普段は録画番組は飛ばし見して一回限りだが、この開会式は違った。最初から最後まで意外の連続で四回も見た。テレビで放送されたものはリアル映像と録画したものを組み合わせて映画仕立てにしてあった。
 セーヌ川に沿って聖火が運ばれ、いろんな出し物を見つつ、選手団の船での入場を追っていき聖火台に点火となる運び。
 はじめはサッカーの大御所ジダンが聖火を持って登場、乗るはずの地下鉄のドアが閉まってしまい、三人の子供たちに託す。彼らが地下のカタコンベを進んで行くがセーヌ川に行く手を阻まれ、マスクマントマンにトーチが託される。マスクマントマンはそのセーヌ東部からゴール地点まで、街中を駆け抜けたり、屋根の上を駆けてカッコ良く移動。
 子供という意外性としゃれこうべが散乱する所をわざわざ披露するのか?と驚いた。カタコンベはフランスの戦いの跡でもある。後にセーヌ川を行く船の上で鍵盤の向こう側が
燃えるピアノを演奏し、傍らで歌手がジョン・レノンの「イマジン」を歌う場面が出てきて、今後のオリンピックで毎回歌うことになったと聞いたが、現在戦火にあるウクライナとガザへの平和への祈りが込められているのだろう。
 セーヌ川の東部から開会式のメイン会場まで、西へ移動しながら様々なイベントが行われ、一万五千人の選手が、百席のボートに乗って登場。その距離六キロメートル。そこここで見ている多くの観客は、世紀のイベントを無料で見ることができる。この開会式を世界で十五億人の人々がテレビで見たというからすごい。前もって録っている部分と組み合わせてライブで見せるのだから、制作に携わっている人の技術努力はいかばかりだろう。
 まずはレディーガガがピンクのディオールのオートクチュールで登場し、セーヌの河畔でダンサーを伴い歌を披露。続いてフランスで人気のマリとフランス両方の国籍を持つ歌手のアヤ・ナカムラがルーブル美術館前で歌い踊る。ナカムラは芸名で日本とは関係なく、アフロトラップ歌手でアフリカの伝統音楽とラップを融合させた音楽とダンスを披露。
 聖火トーチを持ったマスクマントマンがルーブル美術館へ入っていくと、絵画の中の
人物がいない。モナリザさえも。しばらく行くと窓際に絵画の中のたくさんの人物が動きを伴ってオリンピックの開会式を見ようとルーブルの窓際に集まっていた。
 昔マリーアントワネットが幽閉されたコンシェルジュリーでは、いくつもの窓際に彼女のギロチンにあった首を持つ人物が深紅の服をまとい配置され気味悪さを覚えた。そんな時フランスを代表するというロックバンドGOJIRAが建物のバルコニーに立ち激しく演奏した。

 次はパリ市庁舎屋上でオペラ座のバレエ団がダンスを披露。こうしてみると一度だけ観光で訪れたパリ、どんなふうに場面が移動しているのか気になり、スマホのマップを見ながらパリ観光の気分になる。つぎにはやはりセーヌ河畔で、選手団が乗った船を、ムーラン・ルージュのダンサー達がピンクの衣装を纏って登場。伝統的なフレンチカンカンを踊り会場は盛り上がった。私も四十年前オペラ座やムーランルージュで楽しんだことを思い出しテレビを見ながら一人盛り上がった。
 この間も次々に選手団の船はまるでパレードするようにセーヌを下っていく。そんな中で、エッフェル塔をバックにファッションショーが開催された。ランウェイには華やかな衣装をを纏った有名人がファッションモデルのようにウォーキングやパフォーマンスを披露し、一瞬パリコレを見ている気分になった。
 セーヌに浮かべられた大きなフラットな船の上ではダンスやアクロバットなどが行われ、色とりどりの服を着たダンサーたちが踊り、通りではどうやったらそんなことができるのかと思うほどの四、五メートルはあるであろう棒の先に人が居て、大道芸人のような大がかりなパフォーマンスも行われていた。暑い日本と違い、当日十八度で、時折雨が強く降ったりするパリで、多くの人が雨に濡れながらも、予定された役割をこなし、撮影していた。その場で見ていたらきっともっと感動しただろう。
 その後選手団の入場が終わるとオリンピックフラッグを纏った騎手を載せたシルバーの
金属製の馬がセーヌを疾走。まるでジャンヌダルクをイメージしているかのように。
 そしてついに運ばれてきた聖火は気球型の聖火台に灯され、空の上へ。大会中この気球がパリの街を照らし続けるという初の試みだそうだ。
 そんな時エッフェル塔の上にセリーヌディオンが登場し、愛の讃歌を熱唱し開会式は締めくくられた。彼女の衣装もまたシルバーの鋲やビーズがきらめくディオールのオートクチュールコレクションだった。
 こうして私がイメージするおしゃれなパリ、芸術の都パリ、パリコレ、オペラ座やムーランルージュ、前衛的なダンスや最新の技術での素晴らしいものが詰め込まれた開会式は終わった。パリに住むフランス人の友人に、素晴らしくて何回も見たメールを送ると、彼女からすぐにパリ五輪開会式はおおむね成功したと思うと返信があった。
 世間的には悪評も多く聞いたが、それでも久しぶりに、はまるほど楽しめた開会式だった。
2024.9.1

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