”食”で役割を増やし、居場所を作る
コトモファーム会員 上級者コース7期生
松下さん 認定 NPO 法人自立生活サポートセンター・もやい 勤務
人の作った景気に振り回されるのは嫌だった
〈もやい〉のインタビュー(※)の時にも言ったんですけど、就職が超氷河期だったり、リーマンショックで一緒に勤めてた人たちが目の前でリストラされてたりとかがあって。
※もやいスタッフインタビュー
https://www.npomoyai.or.jp/20180104/4074
認定 NPO 法人自立生活サポートセンター・もやい https://www.npomoyai.or.jp
一番最初の職場が証券会社だったんですよ。私が勤めていた時、3年間で株価が22000 円から8000円台に下がったりして、投資信託とかはボロッボロの時で、IT バブルとか金融機関の連鎖破綻があって自分の会社も倒産すると噂があったりした頃でした。
それでもう人の作った景気に振り回されるのは嫌っていうのがあって。人の作る景気とか、もうそういうのに振り回されるくらいなら、お天道様に振り回された方がいいなって。
食べ物さえ、食べ物を扱うことさえできれば、お金は稼げなくても死にはしないっていうの がどこかにあって。それをやっておけば、困った人がいたら何もあげられないけど食べ物だけはシェアできる、みたいな状況にしておけば、苦しくてもなんとかなるかなというのがあって、今に至ります。
初めは、調理とか加工も含めての「食」。そっちの興味の方が大きかったんですけど、でも最近は畑を持っていれば強いなって。うちも母方の実家が果樹園なので、昔は自分の食べ物、野菜とかは、畑の隙間とかで育てていたり、鶏、チャボだけど、卵を食べれたり、ヤギ飼って乳をとったりしていたので。
まずは団体で農スクールに参加
「農スクール」のことを一番最初に知ったのは、前の職場で知り合いから「こんなことやってる人がいるんだよ」っていう話を聞いて知りました。
今の職場〈もやい〉に勤める際に、応募するにあたっては全員小論文を書くようになっていて、それにちょっと違うんですけど、小島さんが言っているような「食と職(※)、を繋げることをやりたい」って書いたぐらいで。小島さんの本を読んだときに「同じこと言ってる人がいる!」と思いました。
※食と職をつなぐ 農スクール:生活保護受給者やニートの若者達が、“農”を通じた様々なプログラムを体験を通して「やりがい」や「仕事観」「自己肯定感」を得ながら、基礎的な農業のイロハを学ぶことで、農業界への就労機会を生み出していく取り組み。
https://know-school.org
やっぱり畑やりたいって話をしてたら、〈もやい〉の中でもいいよ、やればって話になったので、早速農スクールにお声がけさせていただいたのがきっかけです。
(農スクール最終日の BBQ もやいの方と一緒に)
もやいで農スクールに3ヶ月くらいお世話になって。それで他のなないろ畑さん(※)とかにお声がけいただいていたので、シフトしていったんです。
※なないろ畑: https://nanairobatake.com
ちょっとうち車がなくって、スタッフの車を借りていたんですけど、後ろのワイパー折ったりして、いろいろあったんで・・・ 車じゃなくって、電車で行こうって話になった時に、中央林間(なないろ畑さんの拠点)だと駅から行けるってことが大きかったです。
コトモファームを始めて
ずっと私が畑やりたいって言っていたら、夫がやっていいよって言ってくれたからコトモフ ァームの畑もプライベートで始めました。
2年近く私が、畑でこういうことやったんだよって夫に話をしてて、面白そうなことやってるなとか、ちょっとやってみてもいいのか、という気になったのかもしれない。私のライフ ワークとして、畑っていうのがいいんじゃないのかって、彼の中にもあったんじゃないかな。
コトモファームを始めて一番衝撃を受けたのは、水をやらなくていい、肥料も自前で成り立つ、それがすごい面白いなと思って。 水も土が元々含んでいてそれを生かせるとか、そっかそっか植物ってそうだよなとか。すごいそこが衝撃というか、イメージが変わって。それが面白かったですね。
とんとん拍子に上級者コース・農キャリアトレーナー講座も
自分が本当にライフワークとして畑や食などの分野に行くのであれば、上級者コースをやりたいなーって言ってたら、夫からもどうせそっち行きたいんでしょって言われて。それじゃあやるって、とんとん拍子に上級者コースに。
農キャリアトレーナー育成講座も受けて。自分が今の職場とか、前の職場とかでも感じてた、人に対する支援の時に感じる、「こうだったらいいのに」とか、「この支援者の人ちょっとやばいな」とか。そういう感覚的なことが講座では言語化されているなと。
ワークシートの段階的な使い方とか、とても勉強になりました。〈もやい〉のスタンスでもあるんですけど、当事者がどうしたいかを一番にしているので、講座で出てきたような働きかけみたいなことをあまりしたことがなくて。
講座の内容は現場ですごい役に立つかと思います。支援者のスタンスを改めて考えさせられ たというか。
社会性と居場所
〈もやい〉に「サロン・ド・カフェ こもれび」というのがあって、サロンって常連さんが 結構多くって、平均年齢も高くって、いわゆるご近所付き合いが出来る方たちなんですよ。自分のパーソナルスペースを他者がいる中でもある程度持てる人が、いい形で居られるんですよ。
だから一人でも大丈夫で、周りが賑やかにしていても楽しいなって思ってくれてたり、 初めてでも他の人と話をするのが大丈夫だったり、そんなに口が達者じゃなくても、そこで周りの人の話を聞いてあげることができるとか、社会性が高い方が多いと思います。
サロン・ド・カフェ こもれび
https://www.npomoyai.or.jp/category/blog/dekigoto/saron
前の職場でも居場所事業をやっていたんですけど、利用している人の中には、支援者との関係性は築けても、支援者以外の人との関係性は築きにくいのかなと思うことがあって。支援者の人ってやっぱり、ケアしてあげるというのかな、言葉遣いも訓練されている。でも一般の人はそうじゃないじゃないですか。
結構えげつないこと言われたり、傷つけられたりすることって、もちろんそれは悪いことなんですよ。でもそれがない世の中なんかないのにな、みたいな。
役割によって居場所を作る
スタッフと利用者さんの関係ができても、利用者さん同士の関係ができないって感じたりしたので、言葉がそんなにうまくなくても、一緒に何かをする事によって、共通のものを作る事によって、それが好きな人がそこに居つけるようにしたいなって思ったんですよ。
社会性が高くなくても実直に何かをできる事によって、その人の得意を生かせる事によって、居場所になればいいなってことで「はたらく場」を始めました。
「はたらく場」って言い方をゆるくしたのは、いま最低賃金は時給1013 円(東京都)ですが、結構それだけのことをするのって大変だと思っているんですよ。それに行き着かなくても社会的な役割というか、関わりというか、自分が役に立っているぞって感覚を感じられる場所、役割がある場所を作れたらいいなって思っています。
仲間意識と達成感と役割が得られる農作業
農作業のいい部分は、同じことをみんなでできるところかな。単純作業が多いって言ったら語弊があるんですけど、みんながみんなで同じことができて、終わったことを共有できる、達成感がある。
例えば一緒にみんなで、「じゃあそこの草むしりやろう」ワーってやって、終わったねって、 みんなで頑張ったからここ綺麗になったね、みたいな。すごい仲間意識というか、みんな一緒に頑張ったねってことが味わえる。スモールゴールがいっぱいあるっていうのかな。
あと、どうしてもうち生活保護を受給していたり、経済的に厳しい方が多いので、みんなで外出して、体を動かすっていう機会がみなさん少ないみたいです。そういう時に、ちょっと体を動かして、こんなに草とってもらってありがとうみたいな、誰かのためにもなって、なおかつ達成感も味わうって他に中々ないなと思って。
(もやいさんのブログより https://www.npomoyai.or.jp/20200318/6426)
今後やりたいこと
畑での活動をライフワーク的にまで持ってけたらいいなと思っていて、今プライベートの畑と、職場の農業部みたいな。農業部って部活動にみたいにしちゃったんですけど。「働く」 ってやっちゃうとハードルが高くなっちゃうんで農業部、部活動って位置付けにして。やらなきゃいけないことはもちろんあるけど、負担や責任がそこまで賃金求められるほど大きくないみたいなポジションがいいのかな。
いま助成金の申請を出して、畑を借りようとしていて、〈もやい〉で畑を借りて、みんなでそこで野菜を作って、サロンにおろしたり、販売したりしたいなと。1年2年続けることで実績ができたら、じゃあ任せようっていう地主さんや土地が出てくるかもしれない。ほんと上級者コースで一番学んでよかったことは、畑の地主さんとの関係性がどれだけ大切かってことを学んだことかもしれない。
一緒にやろうとしている仲間とたまに夢見るのが、ゆくゆくは「〇〇村」みたいなのを作れたらいいねって。住まいもあって、シェルターの機能もちょっとあって、そこでみんながご飯が食べられるところもあって、畑もあって、みたいな。緊急避難もできるし、そこの管理をするのも任せることで役割ができたり。ちょっとずついろんな役割を増やしていけたらいいなと話したりしています。