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セラピストが伝える「噛む」世界
前回の記事へのコメントやシェアありがとうございます。反応いただけるととても励みになります。前回から引き続き「食べる」という行為は誰にでも共通のお話なので、とても身近に感じてもらえたかと思います。
「よく噛んで食べなさい」人生に1度はお母さんに言われたことのあるこの言葉。さあ、私たちはなぜ噛むことを必要としているのでしょうか?
今日は「噛む」のお話。
咀嚼期をピックアップ
1.私たちが食べ物を噛む理由
〇飲み込みやすい大きさにするため(安全)
〇消化しやすい形状にするため(安全)
〇噛むことで味わいが変化し、味わう楽しさや満足感が感じられる
〇異物の発見など食品の安全を確認する動作でもある(安全)
〇細菌の繁殖を抑制し口腔内の自浄作用を促す(安全)
〇口腔器官の発達・健康維持
〇肥満防止・認知向上・覚醒効果・精神の安定
これを見ると「噛む事」はとても良い効果が、あるのだと実感しますね。そして、「安全」のためなのだなぁと気がつきます。カレーは飲み物ではありませんので、しっかりと咀嚼してくださいね。
2.噛むを観る
時に、私たちのお口は便利な道具となります。
前歯は、食べ物を捉えていくスコップのよう。
奥歯はどっしりとした大きな臼。お餅つきの時のように上下に噛みしだきます。舌が協力して、合いの手のように食べ物を左右に振り分けます。
奥歯は臼のようだから臼歯とよびますね。
食べ物をお口でとらえてることを、我々は「捕食」といいます。口の大きさわ食べ物や食具に合わせて「パク!」
お口に入ると、食べ物の固さや形状に合わせて「かみかみ」(咀嚼・そしゃく)します。
お口をアーんとあけるとき、下のあごを大きく開けます!
大きなお口になりましたね!
そして唇や、前歯で食べ物をかみちぎります。
唇や前歯はセンサーです。
さあ、お口の中にはどのくらいの食べ物が入っていますか?食べられる量が入ってますよね。
自分が食べられるだけの食べ物の量、それを「一口量」(ひとくちりょう)といいます。小さなお子さんはこの一口量がまだわからずに、お口の中にいっぱい詰め込んでしまうこともありますね。
一口量を、習得するには手づかみ食べをしっかり経験する事が必要です!
そしていよいよかみかみです。咀嚼(そしゃく)といいます。
お肉はぎゅーーと歯やあごに力を入れてしっかりとかみかみ。
野菜はしゃりしゃりっと奥の歯ですりつぶすようにかみかみ
やわらかいものはベロで押しつぶすようにしたあと簡単にかみかみ
私たちは形状に合わせて、なんと柔軟に噛み方を変化させていけるのでしょう!それはまるで人と食べ物とのコミュニケーションです。
歯を使ってかみかみしていると出てくるのは「唾液」私たちはベロ(舌)を使って食べ物と唾液を上手に混ぜています。
唾液と混ぜることによってベロの「味蕾」という味を感じるセンサーに反応しやすくなります。そうして私たちは食べ物の味を「味わう」ことができるのです。
唾液、ちゃんとでますか?
3.もしもの困難
もしも・・・唾液が出なかったらどうなる?
➡️食べ物が水分を含まないので乾燥してパサパサになり、飲み込みやすい形態にまとめにくいです。効果的なマッサージがありますよ。(☆1)
もしも・・・お口を閉じる事ができず、そのまま食べたらどうなりますか?
➡お口から食べ物が出てきてしまいますね。これでは食べこぼしになりますね。お口を閉じるためにはお口周りの筋肉の働きが必要不可欠。そして鼻で呼吸する事が大切になります。鼻水かみましょうね。お口の周りの発達を促す遊びも、ありますよ。(☆2)
もしも・・・頬っぺたの力が入らなかったらどうなりますか?
➡ほっぺは柔らかい壁の役割をしていて、食べ物がうまく歯に乗るようにガードしてくれていますほっぺにチカラ入らないと歯に食べ物が乗らないので噛みにくいですよ~。
もしも舌が左右.に動かなかったら?
➡食べ物を左右に振り分けてくれる舌。歯から落ちるとキャッチして食べ物の塊りを作ってくれる舌。動かないと噛めないんですよー。
この「もしも」が本当に起こってしまい、食べることに困難を抱える人がいるのです。小さいこども達の中にも、実はこの「もしも」が起こっているから、食べ物を噛めない子もいます。「頑張れー」という励ましや、「空腹になればたべるでしょ」という根性論だけでは、どうにもならない事もあるのです。その時のサポートの為に言語聴覚士は存在します。
☆マークのお話も今後詳しくしていきますね
4.咀嚼能力はいつごろから獲得するのか?
離乳食は、初期の段階から食べ物の固さに注目し、どろどろした形状から少しづつ固いものへとステップアップしていきます。
そして徐々に噛むことを習得していきます。離乳食後期9カ月頃をかみかみ期と呼んでいます。そのころから歯ぐきを使って噛むことができるようになります。
12カ月頃からを「パクパク期」とよび、噛む動作にバリエーションが出てきます。
前歯で噛みちぎり、歯茎でかみつぶす。
この一連の作業が完成してきます!
しかしこの噛む動作を十分に育てないままに普通食へ移行してしまうと「飲み込む」ことを優先してしまいます。噛む練習ではなく飲み込む練習になってしまいますね。その状態を「丸のみ」と呼びます。人間はのど越しを好む生き物らしく、のどを通るその感触は快刺激となり、癖になってしまいます。ですから、離乳食の後期「かみかみ期」から「パクパク期」は丁寧に充足させてあげる必要があります。
5.ありがとうを込めていただく
今回は少し説明が多かったですが大切な動作「噛む」ということをピックアップしてきました。噛むことは食べ物をいかに体に合わせて取り入れる事ができるのか、安全に健康を維持するための、人間に与えられた食べ物への敬意の動きだと思っています。
「あ り が と う ご ざ い ま す」
と3回唱えながら、噛んでみて下さい。
ちょうど30回になります。
私はこども達にこの魔法の合言葉を伝えています。
「30回噛む」は過去の研究で、平均的に人間が1番咀嚼処理しやすい回数だと結論つけられています。
「ありがとうございます」このことばとともに
味わい
健康
安全
を食べ物からいただきましょう。よく噛んでね。