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「重力ピエロ」感想書き殴り

アマプラで「重力ピエロ」を観た。そもそも伊坂作品大好き人間だから、映画化にこう…懸念があって今まで食わず嫌いしてたんだけど、思ってたよりすごくすごくよかった。もっと早く観とけばよかった。
最初、地の文(=泉水目線のナレーション)がないから、これどうなるんや…?って不安だったけど、いらん心配でしたね。神目線っていうんか?登場人物とは違う俯瞰の目線で進んでいくから、泉水目線だったら気付かなかっただろうなっていう発見がいくつもあった。特に表情や仕草みたいな言語表現じゃない部分。
あ、あと最初父親役が小日向文世なの、え〜微妙じゃね…?もっとこう…固めな話し方するイメージだったんだが…小日向さんは雰囲気が柔らかすぎん?って思ったんだけど観てる内に、いや小日向文世しか勝たん泣泣泣ってなったの我ながらチョロいな。まじで演技うめ〜…特に最後の「お前は俺に似て嘘が下手だな」っていう全米が泣く最高シーン、すごく良かった。息子たちを問い詰めるときのきっつい空気感!!!あ、普段あんなに柔らかい人間が真剣な話をするときにはこんなに張り詰めた空気感を出せるんだ…っていうギャップ。堪らないね〜。他のキャスティングもなんの文句もありません。泉水と春、全然顔立ち違うのに段々似てるように見えてくるから不思議だ〜。泉水の理系大学院生感が愛しかった。
まぁひとつ文句を言うなら、俺の黒澤が全然ちゃんと取り上げてもらえなかったこと!!!!!(お前のものではない)まぁいいんだけどさ…全然…この映画ではまじでサブのサブって感じだから…でも泉水に気に入られる黒澤、オタクとしてはすごく嬉しいからさ…ちょっと残念。

いやそれにしてもつらい…ほんとにつらい……………全ての家族の思い出の土台に強姦魔がチラつくのがつらい………絵画コンクールの場面、文章で見るのと映像で見るのとでは、きつさが桁違いで死んでしまった。原作は泉水目線だけど映画だともっと客観的に場面を見れるから、あの時の両親の表情から気持ちを推測してしまってつらい。音声で聞くえげつなさと言えば、強姦魔と泉水の会話シーンも半端なかったな。「レイプは悪いことじゃない」と言い張る強姦魔を目の前にして発狂しなかった泉水を抱きしめてやりたい。まぁその後ちゃんと殺そうとしてたけど。殺人サイト(笑)でいちばん初心者向けの溺死を選んでるあたり、あ〜〜泉水だぁ〜〜〜って思ってニコニコしてしまった。それに比べて弟くんはよ…。遺伝子を暗喩するためにわざわざ「悪いこと=グラフィックアート」をした上に(しかも上手い。が、そのセンスも"遺伝"なのかもしれないという辛さ)放火を繰り返して、ジワジワと強姦魔に圧をかけるというぶっ飛びぶりを披露!いや温度差がすごいのよ。そこが彼ら兄弟の可愛さでもあるんだけども。
まぁ話戻るけどさ、あの積み重なった辛さがあるからこそ父親の「俺たちは最強の家族だ」っていうセリフがしみるんだよな。てか原作で、あんなにはっきり春の出自について告白してたっけ?なんか小説と違う印象をうけた。あまりにも唐突…というか場面転換があからさますぎる…というか。まぁ小説ではあくまで泉水の記憶を辿る感じで語られるから、出来事の地続きというか、思考の延長戦にあるイメージがついてるのかもしれん。

この作品の個人的最高ポイントはやっぱりスプリング兄弟の関係性ですよね。泉水と春、仲のいい兄弟には違いないけど、春の儚さ…というか不安定さ…?が2人の関係性を危ういものにしてる感じがする。
泉水→春:大事な弟には違いないが、何を考えているのか時々わからない。優れた弟に対する劣等感を抱くと同時に、弟と自分を比べて「父親の遺伝」を感じるというしんどさ。まぁもし両親が同じだったら、劣等感だけを募らせ続けて関係性も上手くいかなかっただろうからなんとも言えない。
春→泉水:大好きなお兄ちゃん。春を「こちら側」につなぎ止めているのは兄である泉水。母親亡き後、この世で最も自分と「血が繋がっている」存在。春って泉水がいなくなったら自分を見失って簡単に死にそうで怖い。
ちょっとまってよ〜〜〜〜自分で書いてて尊すぎて死んだんですが?えっエモすぎん??兄弟モノ(唐突にBLの話)の旨みは、生まれてから死ぬまで一生「家族」であること、つまり本人たちの愛憎は抜きにして同じ籍と同じ墓に入ることだと思うんですけど、泉水と春の関係はそれ以上の旨みがあるってことやんけ。当たり前に「家族」なんだけど、それがいちばん大事、というか。泉水と春が家族であることは必然なんだけど、それがどれだけの奇跡の上に成り立っているかを常に意識している…という良さ。とはいえ、泉水と春の家族観は少し違う気がする。春は別に自分の命や人生に執着はないと思うけど、「家族」にはすごく執着するよね。強姦魔を殺したのも自分の復讐というより母親への想いからだろうし、(映画ではカットされてたけど)父親の回復のための願掛け(ノートに死ぬほどコドンを書いてたやつ)してたし。このエピソードすきなんだよな。性的なことに興味がなくて何考えてるかわからない人間が、必死に不確実なものにすがる姿って、めちゃくちゃ"""生"""を感じて興奮してしまいますね……へへ…春くん、変な宗教にハマったりしてくんないかな。あの夫婦の息子だし、素質はあると思うんだ…それになにより伊坂幸太郎が生み出した男だしな…(メタ的発言)
性的なことに興味がない、というのは突き詰めれば生に興味がないということではないか?そうなってしまったのは春の出自のせいということは間違いないけど、春は自分の遺伝子を残したくないんだろうな…。だからきっと一生未婚でしょう。うーん最高。ぜっっっったい子供欲しがらないだろ。でも泉水の子供はちゃんとかわいがりそう。春ちゃん!とか呼ばれて甥姪に懐かれてる春、めちゃくちゃかわいい(にっこり)
春は性欲に支配されるのを嫌悪、軽蔑してるけど、それと同時に自分がそうなるのを極端に恐れているんでしょうね…。だからさ〜〜〜!本文中に「犯罪者は遺伝する」って言及してくるのエグすぎるのよ…もろ春のことやんけ…映画でもそこはカットされなくてよかった。春が大事なこと(自分の過去への対峙)をする時に、いつも泉水に側にいてほしがるのは、「あちら側」にいかないように踏みとどまるためじゃないんか?「あちら側」っていうのははっきり言い表せないけど、遺伝上の父親のような凶暴性や残忍さを内部に留めきれない本能的な状態、人としての一線を越えた世界のようなものだとします。

ていうか、伊坂幸太郎はこじれた兄弟関係が好きなんだろうな。特にブラコンの弟。魔王とかもそうですよね。俺が魔王大大大好きなのもその関係性のしんどさからだし、伊坂幸太郎と俺、性癖が似てるのかもしれんって烏滸がましいわ。もしかして伊坂のカプ観、生きることに執着のない男×生活味のある男…ってコト!?(最悪なちいかわ)

読者的には春ってめちゃくちゃかわいくないですか?家族に見せる幼さがたまらない。あれ、変なところで頑固っていうのは公式ですよね?まぁこれも結局泉水目線の春だし、単に兄貴に甘えてるだけだと思うけど、だからこそかわいい。家族以外にはもっとかっこつけてんだろうな〜そもそも興味ないだろうけども。春って絶対友達いないよね。素で「兄貴がいればいい。」とか言いそう。多分父親の死後、泉水への執着はもっと強くなるでしょうね。今まで父親にも向けることで多少分散されてた感情がこれからは全部泉水一人に向くことになるんでしょ?やっば…。第三者から見たら、春→泉水のバカデカ感情はあからさまなのに泉水がそこに全然気付いてないのもかわいい。夏子さんが泉水に嫉妬するシーンあったよね、確か。攻めの愛情に鈍感とか、商業BLの受けすぎるだろ。春×泉水、セックスしなさそうだな。どちらも別に身体で繋がることを重要視してないだろうし、今更そんなことする必要ないだろ…って思ってそう。でも僕としてはぜひしてほしいですね。セックスもそんなに悪いものじゃないよ、って春に気付いてほしい。愛し合う2人にとっては愛を交歓する手段のひとつでしかないんだから、ある意味そんなに特別視しなくていいよ、って伝えたいですね。やばい、春泉妄想考えてるの死ぬほど捗るな。それはまた別で壁打ちしよう…

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