20枚シナリオ:タイトル「恨み孕みヒーロー」
人 物
比屋根透(17)三鷹高校二年生。あきと同級生
山本あき(17)三鷹高校二年生。山本源の娘
金城晶(30)山本組の若頭
山本源(52)山本組の組長
ヤクザ1
ヤクザ2
○美鷹高校・2ー1教室(朝)
教師、黒板に数式を書いている。
ノートにいそいそと書いている学生達
校庭でサッカーをしている学生達。
窓際の列の真ん中に透が座っている。
透、頬杖を付き、校庭を見ている。
教師、チョークを置き、教壇前に立つ。
教師「(見渡しながら)この問題わかるやつ」
学生達、目を伏せる。
教師、しかめ面になる。
教師「こんな問題もわからないのか」
教師、見渡しながら、透に目が留まる。
教師「比屋根、外を見る余裕があると言うことはこの問題はわかるんだろうな」
透、ちらっと教師の顔と黒板を見る。
透、小さくため息をつく。
透、立ち上がり、黒板の方へ向かう。
透、チョークを取り、かつかつと黒板
に数式を書いていく。
☓ ☓ ☓
透、チョークを置き、席に戻る。
透、すっと座り、頬杖して、外を見る
教師、小さく舌打ちをする
教師「せ、正解だ」
学生達、ひそひそする。
○同・購買部(昼)
学生達、行き交う。
ショーケースを挟んで、笑顔でおばちゃんが立っている。
透、ショーケースの前に立ち、
透「焼そばパンとサンドイッチと飲むヨーグルト」
おばちゃん「はい、ありがとう」
✕ ✕ ✕
透、おばちゃんから焼そばパンとサンドイッチと飲むヨーグルトを両手に抱えて受け取る。
透、くるっと後ろを向き、髪が靡く。
透、出ていく。
○同・屋上前階段(昼)
透、階段を上がってくる。
階段には男女が座って談笑している。
透、ため息を付き、階段を下っていく。
○同・体育館裏・扉前(昼)
透、石段に腰掛け、焼そばパンを頬張っている。
蝉の声が鳴り響く。
山本あき(17)、小さい手提げかばんを手に持ち、とことこと歩いてくる。
透、あきをちらっと見る。
あき、透と反対側の石段端にと座る。
透、あきを全身隈なく見渡す。
あき、手提げかばんを膝の上に置き、中から弁当箱と箸箱を取り出す。
あき、弁当箱の蓋を開け、箸箱から箸を出す。
あき、箸を持ちながら手を合わせ、
あき「(小声で)いただきます」
透、あきを横目に半分の焼そばパンをかじる。
あき、弁当を食べ始める。
透、あきをちらちら見る。
あき、笑顔で口をもぐもぐさせている
透、焼そばパンを食べるのを止め、あきへ顔を向け、
透「ねぇ、あなた、私が隣にいることには何も触れないの?」
あき、箸に摘んだ卵焼きを口に入れようとしたが止め、きょとんとした顔で透を見る。
あき、驚いた表情で
あき「えっ、いたの?」
透「えっ、気づかなかったの。それすごいね」
あき「全然気づかなかったよ。あっでも、あたしのことはいない人と思って、食べるの続けて」
透「いや、その、それは無理。気になる」
あき「そうなの?あたしは気にしないな」
透、ため息を付く。
透「私がおかしいのかな…まあ、いいや、ご飯中に話しかけてごめん。私も気にしないようにするわ」
あき「(笑顔で)うん、わかった」
あき、箸で摘んだ卵焼きを一口で食べる
透、正面を向き、焼そばパンを食べる。
茂みからガサガサと音がする。
茂みから黒猫が顔を出す。
あき、笑顔で、
あき「(大声で)あっ、クロ」
透、驚いた表情であきを直様見る。
あき、弁当箱と橋を置き、黒猫に駆け寄る。
透、あきを目で追う。
あき「(撫でながら)今日も可愛いな。憂いやつ憂いやつ」
黒猫、猫なで声で鳴く。
透、手を額に当て、ため息を付く。
透「(小声で)気にするなって言われても…」
あき、黒猫と戯れている。
透、焼そばパンを一気に口に入れ、サンドイッチと飲むヨーグルトを手に持ち立ち上がる。
透、歩き、角を曲がる。
あき、黒猫と戯れている。
○同・2ー1教室(夕)
学生達、ざわざわと談笑している。
透、リュックサックを背負い、学生達の隙間を縫って、歩く。
透、扉を開け、出ていく。
○同・近くの路地(夕)
透、歩いている。
ツクツクボウシが鳴いている。
あき、焦った表情で走っている。
あき、息を切らしている。
あきの後ろにはヤクザ1とヤクザ2が追いかけてきている。
ヤクザ1「待ちやがれ」
透、後ろを振り返る。
あき、角を全速力で曲がってくる。
あき、透の肩に打つかる。
透「痛ぁ」
あき、体がぐらつくが走りをやめない。
あき、振り返り、走りながら、
あき「(前を向きながら)ごめんなさい」
ヤクザ1とヤクザ2が角を全速力で曲がってくる。
ヤクザ1とヤクザ2が透の横をすり抜けていく。
透、あきの背中を見る。
透「あれは…」
透、走り出す。
○美鷹高校近くの路地・袋小路(夕)
あき、強張った表情で壁に張り付く。
ヤクザ1とヤクザ2、あきに迫る。
ヤクザ2「やっと追いついた。今日は用心棒がいなくてラッキーや。さあ、おれらと一緒に来るんや」
あき「い、いや…」
ヤクザ2、あきの腕を掴む。
ヤクザ2「おら、言うこと聞け」
あき「(涙目で)いや、やめて」
透、角を曲ってくる。
透「おい、やめろ」
ヤクザ1とヤクザ2、振り返る。
あき、透を見る。
ヤクザ1、透ににじり寄ってくる。
ヤクザ1「あん?なんや、嬢ちゃん。早う家に帰り。お前が来る場所やないわ」
透「一度だけ言う。その手を離せ」
ヤクザ1「あん?」
透「しょうが無い」
透、右足でヤクザ1の顎を蹴りあげる。
ヤクザ1、壁まで飛び、地面に倒れる。
ヤクザ2とあき、驚いた表情で立ち尽くす。
ヤクザ2、透に駆け寄り、
ヤクザ2「何しとんじゃ、われ」
ヤクザ2、右拳を構え、透の顔に向かって繰り出す。
透、すっと避けて、左足でヤクザ2の顎を蹴り上げる。
ヤクザ2、壁まで飛び、地面に倒れる。
あき、口がぽかんとし、その場に座る。
透、あきをみて、近づく、
透「(手を差し出し)大丈夫?」
あき「(手を掴む)あ、ありがとう」
あき、立ち上がる。
透、あきについた土埃を手で払う。
あき、透の両手を握り、
あき「(笑顔で)す、すごい、あなた強いんだね」
透「う、うん、これぐらい、なんてことない」
あき「か、かっこいい」
あき、その場で跳ねる。
ドタバタとした足音が近づいてくる。
金城晶(30)、角を全速力で曲がってくる。
金城、息を切らしながら
金城「お、お嬢、大丈夫でしたか」
金城、倒れているヤクザ1とヤクザ2を交互に二度見る。
あきと透、金城を見る。
金城、あきと透を交互に二度見る。
金城「あれ?」
◯山本組本部・大広間(夜)
山本源(52)、透、金城が正座している。
山本と透、お互い正面に座っている。
山本の左後ろに金城が座っている。
透「お嬢さん、本当にヤの付く職業の人の娘でしたんですね」
山本、土下座する。
山本「本日は娘を助けていただき、ありがとうございます」
透「いえ、とんでもない。通りすがりみたいなものですよ」
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