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SL理論でチームを丸ごと育てる!
SL理論×ゲーム開発でチームを丸ごと育てる!
メンバーやグループの成熟度を継続的に評価し把握しつづける
フェーズごとの状況を見極め、SL理論S1~S4を柔軟に切り替える
クロスファンクショナルなチーム連携を重視し“生きた有機体”として動く
コミュニケーションと目標設定を明確にし、チームの一体感を醸成
個々の成長とプロジェクト進捗のバランスを保つ
#SL理論 #SituationalLeadership #チームマネジメント #リーダーシップ #プロジェクト管理 #若手育成 #開発フェーズ別戦略
はじめに
ゲーム開発は年々スケールが大きくなり、3Dアセットからキャラクターデザイン、UI/UXと多岐にわたるクリエイティブが求められています。そんな現場でよく聞く悩みが「メンバーをどう育てていくか?」ということ。
そこで注目したいのが、SL理論(Situational Leadership Theory) です。
多くは個人のマネージメントに活かされる理論ですが、チームを個として捉えると、開発フェーズ事にチーム運営の方針に活用できます。
これはプロジェクトのフェーズやメンバーの成熟度に合わせて、リーダーシップスタイルを柔軟に使い分ける考え方。若手を成長させながら高品質な作品を作り出すうえでも、とても頼れる理論です。
今回はSL理論をゲーム開発のフェーズ別に活用する具体策と、私自身が特に重視しているポイントを余すところなく紹介します。メンバーを育成しながら皆さんのプロジェクト開発も無事終わるように応援しています!
1. そもそもSL理論とは?
SL理論(Situational Leadership Theory)とは、メンバーの「成熟度(スキル・意欲)」や「状況」に応じてリーダーシップスタイルを使い分ける考え方です。具体的には以下の4つに分類されます。
指示型 (S1)
細かな指示やコントロールが中心。初学習段階のメンバーに向いている。コーチ型 (S2)
指示を出しつつフィードバックも積極的に行う。メンバーの成長をサポートする。参加型 (S3)
意思決定にメンバーを巻き込み、モチベーションと主体性を引き出す。委任型 (S4)
最終目標だけ提示し、作業の進め方はメンバーに委ねる。自立度の高いチームに最適。
2. ゲーム開発の主要フェーズとSL理論の対応
ゲーム開発はざっくり以下のフェーズに分かれます。
企画・コンセプト
プロトタイプ開発
本開発
テストとデバッグ
ポリッシュ(最後の磨き上げ)と最適化
ローンチ準備と発売後のサポート
フェーズごとにチームの状況は大きく変わるため、リーダーシップもS1〜S4を柔軟に切り替えるのがポイントです。
3. フェーズ別マネジメントの具体策
3-1. 【企画・コンセプト段階】
企画・コンセプト:魅せるアイデアを引き出すには?
リーダーシップスタイル: 参加型 (S3) ~ 委任型 (S4)
アプローチ:
ブレインストーミングセッションで自由にアイデアを出し合う
各メンバーの専門知識を活かし、世界観やターゲットを多角的に分析
「なぜそれを作るのか?」を常に問いかけ、プロジェクトの目的をクリアにする
具体例(3D・イラスト系)
デザイン画なしで3Dアセット担当が提案した「世界観に合うオブジェクトデザイン」を、リーダーが質問を投げかけながらアイデアをさらに深める(参加型)。
キャラクターラフを複数案出してもらい、細かい口出しはせず方向性だけ共有して進めてもらう(委任型)。突飛なアイデアほど、後から思わぬ強みになることも。
3-2. 【プロトタイプ開発】
とりあえずカタチにしてみよう!もっと良くなるアイデアを意見交換。
リーダーシップスタイル: コーチ型 (S2) ~ 参加型 (S3)
アプローチ:
ゴールを細かく設定し、すぐにフィードバックできる仕組みをつくる
技術的な課題やノウハウはチーム全体で共有
3Dモデラー、コンセプトアーティスト、UIデザイナーなどが連携しやすい場づくり
具体例(3D・イラスト系)
ツールに苦戦している3Dモデラーには具体的なアドバイスをハンズオン形式で行い、成功したら積極的に称賛(コーチ型)。
イラストレーターと3Dモデラー間でイメージの食い違いがあれば、定期レビュー会でラフ・モデルの進捗を見せ合いながらすり合わせ(参加型)。
3-3. 【本開発段階】
スケジュール管理&品質の両立
リーダーシップスタイル: メンバーの成熟度に応じてS1~S4を柔軟に切り替え
アプローチ:
スプリント計画を活用(例:9週間のマイルストーンを3週間ごとのスプリントに分割)
メンバーの成熟度によって指示・委任の度合いを調整
“生きた有機体”として、クロスファンクショナルなチーム運営を重視
具体例(3D・イラスト系)
量産力がついてきた2~3年目の3Dアーティストには「委任型(S4)」でフロー全体を任せ、進捗だけフォロー。
新人のイラストレーターには「線画→彩色→仕上げ」のプロセスを示し、納期管理も手厚くサポート(指示型(S1))。
進捗だけフォロー 例 提出日だけ提示し途中の確認段階は任せる。
納期管理と段階指示 例 プロセスを日割りで管理し提出を指示する。
3-4. 【テストとデバッグ】
アセットや仕様検討抜けの見落としゼロを目指せ!
リーダーシップスタイル: 指示型 (S1) ~ コーチ型 (S2)
アプローチ:
バグ修正の優先度と期限を明確化
アートチームとQA(品質保証)チームの連携をスムーズにする
実装データ確認はペア作業でチェック、共同デバッグを奨励
具体例(3D・イラスト系)
3Dオブジェクトのスケール不具合でキャラクターがめり込む問題が発生した場合は、最優先でオブジェクトを洗い出し「即対応を!」と明確に指示(指示型(S1))。
エラー原因が不明なら、ベテランテクスチャアーティストと若手3Dモデラーをペアにし、進捗を見守りつつアドバイス(コーチ型(S2))。
3-5. 【ポリッシュ&最適化】
:こだわりの最終調整
リーダーシップスタイル: 参加型 (S3) ~ 委任型 (S4)
アプローチ:
メンバーの専門知識を活かし、細部改善を積極的に委任
ユーザーフィードバックを反映しながら細かいサイクルで改善
パフォーマンス向上のアイデアを全員で出し合い最適解を探る
具体例(3D・イラスト系)
若手3Dアーティストが「ポリゴン数を落としてパフォーマンスを上げる」提案をしたら、一度任せて挑戦してもらい、その成果物をチームで最終調整(委任型)。
新しい描画ツールを導入してキャラクターポートレートをアップグレードする場合、ワークショップ形式でアイデアを出し合い(参加型)、みんなで最適化を追求。
3-6. ローンチ準備&発売後のサポート
:万全のリリース体制とユーザー対応
リーダーシップスタイル: 状況に合わせてS1~S4を切り替え
アプローチ:
緊急時対応のプロトコルやコミュニケーション計画を整備
チーム全員のストレス管理と相互サポートを重視
ユーザーフィードバックを迅速に反映し、パッチやアセット修正を指揮
リリース直前直後のしばらくは、しっかり張り付いてすべて自分で把握するぐらいの気合が必要ですね。
具体例(3D・イラスト系)
「表情がイメージと違う」というフィードバックが殺到したら、担当者と期限を明確にして迅速に修正指示(指示型(S1))。
SNSの批判に落ち込むメンバーがいれば、コーチ型(S2)で「なぜそう言われたか」「次はどう改善できるか」を一緒に考え、今後のアップデートや新作に活かす。
4. SL理論×ゲーム開発のポイント
メンバーやグループの成熟度を継続的に評価し把握しつづける
フェーズごとの状況を見極め、S1~S4を柔軟に切り替える
クロスファンクショナルなチーム連携を重視し“生きた有機体”として動く
コミュニケーションと目標設定を明確にし、チームの一体感を醸成
個々の成長とプロジェクト進捗のバランスを保つ
このポイントを押さえておくことで、チームの力を最大限に引き出しつつ、生産性やチームの満足度を高めることが可能になります。
5. おわりに
SL理論はゲーム開発の各フェーズに応じて使い分けることで、3Dアセットやイラスト制作などのクリエイティブ領域で若いチームメンバーを大きく成長させられる理論です。
20代のメンバーは特に伸びしろが大きいため、彼らの自主性や挑戦心を引き出しつつ、必要な場面ではしっかり指示やフォローを行う。その絶妙なバランスが、高品質なゲームの完成とチーム全体の幸福度アップにつながります。
ただ、バランスを間違えると頑張り過ぎて身体を壊したり、本人もポジティブな状態であるにも関わらず知らず知らずに疲れを溜めさせてしまうので注意が必要です。
私も個々の頑張りに頼りすぎ、大きな失敗をしてしまっています。
ゲーム開発は複雑で大規模だからこそ、リーダーの“かじ取り”が大事。常に常に勉強と反省の繰り返しで必死です…。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。この記事が、もしも何かの役に立てたり考えるきっかけになれたら、スキなどリアクションを気軽にいただけると嬉しいです!