256. Dissociated horizontal deviation(DHD):臨床スペクトラム、病因、進化的背景、診断、治療、および乳児内斜視の発症における潜在的役割(アメリカ眼科学会論文)

Dissociated horizontal deviation: clinical spectrum, pathogenesis, evolutionary underpinnings, diagnosis, treatment, and potential role in the development of infantile esotropia (an American Ophthalmological Society thesis)

Brodsky MC. Trans Am Ophthalmol Soc. 2007;105:272-93. PMID: 18427617; PMCID: PMC2258097.


目的:dissociated horizontal deviation(DHD)の病態生理を解明すること。

方法:乳児内斜視に対する水平外眼筋手術後に連続性外斜視(consecutive exotropia)を発症した28名の患者を対象に、the reversed fixation testを行った。全例に内転の制限、潜伏眼振、交代性上斜位(dissociated vertical divergence:DVD)、神経疾患の有無を評価した。

結果:DHDの存在を示すreversed fixation testの陽性は、consecutive exotropia 28人中14人(50%)に認められた。DHDを有する患者では、通常、優位眼で固視している時よりも非優位眼で固視している時の方が外斜偏位が小さく、また、視覚的不注視時や全身麻酔下よりも優位眼で固視している時の方が外斜偏位が小さかった。DHDはDVDの所見と関連していたが、非対称性の内転制限、潜伏眼振、神経疾患とは関連していなかった。

結論:the reversed fixation testを用いると、乳児内斜視の手術後にconsecutive exotropiaを発症した患者の50%でDHDを検出することができる。この場合、どちらかの眼で単眼固視を行うと、ベースラインの外斜偏位とDHDによるesotunus(内斜トーヌス)が重なる。通常、非優位眼での固視は、優位眼の固視よりも大きなesotunusを生じ、APCTやACTで非対称な外斜偏位を生じる。眼球の解剖学的位置のベースラインによって、このDHDによるesotunusは顕性の間欠性の外斜偏位または間欠性の内斜偏位として現れる。このような眼球運動解離は乳児内斜視の病因に関与している可能性がある。

※コメント
dissociated horizontal deviation(DHD)についてです。

SUMMARY-本文より
1. DHDは、乳児内斜視の外科的矯正後にconsecutive exotropiaの50%に認められる。
2. 片眼の間欠的な外斜偏位としてのDHDの一般的な臨床症状は、ベースラインの外斜偏位にdissociated esotonusが重なった結果である。このメカニズムにより、同じ解離性運動が片眼性内斜視、片眼性外斜視、矛盾した偏位として現れることが説明できる。
3. DHDでは、通常、非優位眼で固視する方が、優位眼で固視するよりも、より強いesotonusを示す。
4. consecutive exotropiaでは、DHDは正面視(primary position)の不均等な偏位を伴う必要はない。したがって、reversed fixation testが陽性であることは、DHDの診断を確定するのに必要かつ十分である。
5. DHDは、視覚的不注意の時の大きなベースライン外斜偏位と、単眼固視の時の小さな測定された外斜偏位との間に、目に見える不一致を生じることがある。
6. 原発性の場合は間欠性外斜視/dissociated esotonus、乳児内斜視の外科的治療後の場合はconsecutive exotropia/dissociated esotonusという臨床的呼称は、これらの病態の正確なメカニズムを説明するものである。
7. reversed fixation testは、dissociated esotonusの変化が片眼からもう片眼への固視の移動によって直接起こりうることを証明している。この観察は、潜伏眼振の非対称的な輻湊遮断がDHDを引き起こすという考え方に疑問を投げかけ、潜伏眼振の不均等な減衰がdissociated esotonusの随伴現象になりうることを示している。
8. 安定した周辺融像が手術で行われるようになった場合、DHDが問題となることはほとんどない。したがって、覚醒して注意力のある患者において、両眼の水平方向のアライメントを効果的に回復させるような手術方法であれば(関連する弱視の非外科的治療とともに)、その臨床的発現を効果的に抑制できるはずである。
9. DHDは、間欠的外斜視を引き起こす機械的な外斜偏位と、乳児内斜視を引き起こすdissociated esotonusの共存をユニークに体現している。
10. Dissociated esotonusは、乳児内斜視の病因にメカニズム的なつながりを与える可能性がある。

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