58. 弱視児において両眼の読書が遅いのは健眼の障害のためである

Slow Binocular Reading in Amblyopic Children is a Fellow Eye Deficit

Kelly KR, Jost RM, Hudgins LA, Stager DR Jr, Hunter JS, Beauchamp CL, Dao LM, Birch EE. Optom Vis Sci. 2023 Jan 31. doi: 10.1097/OPX.0000000000001995. Epub ahead of print. PMID: 36715973.

重要性:弱視の子どもは,両眼黙読時に同世代の子どもより25%遅く読む。

目的:弱視児の読書が遅いのは両眼抑制によるものかどうか,すなわち両眼読書中に弱視眼が干渉しているのかどうかを調べるため,両眼読書と健眼読書を比較した。

方法:1年生から6年生を修了した弱視の子ども38名と年齢が近い対照の子ども36名が登録された。子どもたちはReadAlyzerの視線追跡ゴーグルを装着し,両眼読書と健眼読書で,学年に応じた段落を黙読した。読書速度,forward saccadesの数,regressive saccadesの数,固視時間についてグループ間および視線条件間で分析した。また,感覚的要因(弱視の重症度,立体視,抑制)が読書の遅さに関係しているかどうかを調べた。

結果:弱視児において,両眼読書と健眼読書では,読書速度(176±60wpm vs 173±53wpm,p = .69),forward saccadesの数(104±35 saccades/100 words vs 97±33 saccades/100 words, p=0.18),regressive saccadesの数(21±15 saccades/100 words vs 22±13 saccades/100 words, p=0.75),固視時間(0.31±0.06秒 vs 0.32±0.07秒,p=0.44)で差はなかった。予想通り,弱視児は対照児に比べて両眼読書時および健眼読書時に読書速度が遅く,forward saccadesが多かった。読書速度の遅さは感覚的な要因とは無関係であった。

結論:弱視児において,両眼読書は健眼読書と異ならなかった。したがって,両眼抑制は両眼読書が遅いことに関与しているとは考えにくく,むしろ発達中の両眼視覚体験の混乱から生じる健眼の障害である。

※コメント
弱視の影響は弱視眼のみに起こるのではなく,両眼開放下で生活している状況下でも引き起こされるようです。単眼の問題だけではない,視力だけの問題ではない,というの認識しないといけません。

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