油絵を再開してみた
中学1年生の時だったと思う。美術の先生に絵を誉められたと父に言うと、油絵を習わせてくれました。油絵の先生は、薬局でテレピン油を、これとこれとこれは大阪市立美術館の地下の店で買っておいでと教えてくれました。
歩いて行ける近くの幼稚園でその教室は開催されていて、重たい木のケースやイーゼルを抱えて通いました。教室は早い時間から始まってるけど、私は学校が終わってから行ったからほとんど残り1時間足らずの間で大急ぎで描いていました。私がホワイトボードにゆるーい絵を描くと、その後先生が仕上げにザザッと筆を入れます。そのザザッでとてつもなく完成された絵が出来上がるのが毎回感動でした。
高校入学で中断、短大で美術部に入って久しぶりに油絵を再開しました。合宿や部展などでたくさん描きましたけど、それはなかなか楽しかったです。学校に泊まり込んで徹夜で絵を仕上げたり、みんなで協力しながらキャンバスを1枚1枚張ったり。絵の具だらけのタブリエと油の匂い。青春。
あれからうん十年。たまーに、また描きたいなぁと思い出し、その日のために新しい絵の具やらキャンバスやら買って置いていましたが、それらもいつの間にか埃をかぶり、薄汚れ、処分せなばならないものもあったり。第一、人生の日々は流れ流れて、また移り気な私は他にやりたいことに夢中になって、今日までほとんど忘れてしまっていました。
でもなぜか突然、どうしても筆を持ちたくなってしまいました。何がいるのか、どうやって描いていたのか、ちょっとした手順や筆の扱い方、道具のしまい方、油の種類、まーったく忘却の彼方。0。ここまで忘れるかというくらい。
でも今は便利な時代。ささっとネットで調べると、どうやら油絵具は古くても使えそう。今は軽くていいイーゼルも売ってる。テレピン油とか、ルソルバンとか溶き油やクリーナーも匂いを抑えたものが売られていたり。使い方がイマイチまだ思い出せないけど、とりあえずいるものだけは揃えました。
下塗り。そうそうそんなことやってた。
仏文科の熊ちゃんが、真っ赤な下塗りをしたキャンバスに合宿で木立の絵を描いて、コーチに「これはアトリエで描くような絵や。もっとよく見ながら描いてみー。」と言われていたのを思い出します。でもその真っ赤な下塗りがカッコよかった。コーチは京都芸大の人やったけど、元気にしてはるかなぁ。そんなこんなを色々思い出しながら恐る恐る古い絵の具を絞り出し、下塗りに着手。筆の感触やキャンバスの弾力、油の匂い。知ってるはずなのに初めてな感じ。油と絵の具の割合がわからない。思ったより塗り広げられない。
とりあえず3枚完了。乾くんだろうか、という心配。使い終わった筆の後始末どうするんやったか。石鹸の上でグルグル回して洗ったのは覚えてる。
下塗りされたキャンバスをじっと見つめていると、中に何かがある。何かが湛えられているのを感じます。なんなんだろうね。面白そうな気がします。
これだけで結構満足。終了かー?