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真ん中の愛


??:にぃに!おはよっ!

○○:おはよ、あーや
一人で起きれたの?

彩:うんっ!

○○:そっか!偉いじゃん!

彩:えへへ//

○○:美空は?

彩:くぅちゃんはまだ寝てる

○○:あいつ...
あーや、起こしに行ってくれる?

彩:えぇ...

○○:...わかった、俺行くからご飯よそっておいて?

彩:うんっ!わかった!



うちの一番末っ子の彩
今年小学校に入学したばっかの1年生

干支1周分、歳は離れているけども...
一番しっかりしている


後は、真ん中に中学2年生が一人いるんだけど...
絶賛反抗期真っ盛りで...




コンコン



○○:美空、起きなさい

美空:...うるさい

○○:ったく...
学校遅れるよ?

美空:...わかってるから...

○○:もう...
ご飯はできてるから、早く起きてきなさい


美空:...




うちは母親が早くに他界して、父親が海外に単身赴任
そんな家庭環境だから、俺がしっかりしないとって思うんだけど...


反抗期は、難しい




彩:くぅちゃん、起きた?

○○:う~ん...
ダメかも...

彩:そっか...

○○:まっ、食べてれば来るでしょ

彩:そうだねっ!

○○:じゃあ食べよっか

彩:あっ、待って!

○○:ん?


彩:よいしょ...
にぃにの隣で食べるっ!

○○:おっ!いいよ、おいで

彩:わぁーい!


○○:じゃあ...

『いただきますっ!』



彩と2人で朝ごはんを食べていると...




ガチャ


彩:あっ、くぅちゃん!おはよっ!

美空:...おはよ

○○:おはよ、朝ごはん準備できて...

美空:いらない

○○:ちゃんと食べないと元気出ないよ?


美空:もうっ!うるさいっ!


彩:ビクッ

○○:...そっか、わかった



美空:......



洗面所で少しだけ反省する

ほんとは、彩を可愛がりたいし...
お兄ちゃんにも甘えたい


でも...
なんでか知らないけど、カリカリしちゃう

はぁ...おなかすいたなぁ...
お兄ちゃんの朝食、食べたいなぁ...


いや、ダメダメ...
体重を落とさないと...
友達に笑われちゃう...





朝、一番早く出るのは末っ子の彩


彩:じゃあ、にぃに!
行ってきまーす!

○○:行ってらっしゃい
今日は、ピアノあるの?

彩:うんっ!
奈央ちゃん家のピアノ教室に行って帰ってくる!

○○:そっか、頑張ってね!
迎えには行くから

彩:うんっ!行ってきます!



末っ子が元気に学校へ行くのを見送った後...



ピンポーン


美空:桜?

桜:みーきゅん!行こっ!

美空:うん、今行くー!


○○:はい、お弁当

美空:...いらないから


○○:...


ガチャ



○○:...行ってらっしゃい




兄の言葉を無視して、待ってくれている桜の下へ急ぐ




桜:おはよっ!みーきゅん!

美空:おっはー!


桜:み―きゅんはいつも元気だね!

美空:だってそれが私の取り柄だもんっ!

桜:ふふっ
ねぇ昨日の見た?TGC

美空:見た見たっ!すごかったよねぇ!

桜:ねっ!なぁちゃんかっこよかったし...

美空:まいやんもすごかった!
あんなに綺麗に服って着こなせるんだって!

桜:うんっ!あとは...



『飛鳥ちゃん!』


美空:やっぱりね~!

桜:クールな表情して、最後に投げキッスだもん!

美空:あんなんされたらもう!

桜:たまらないよねぇ~!






○○:はぁ...

美波:どうしたの?朝からそんなため息ついて...
もしかして美空ちゃん?

○○:あっ、おはよ美波



俺らの幼馴染の梅澤美波
なんでも話を聞いてくれるし、
うちの家庭事情を知ってくれている数少ない人の1人


美波:かなり深刻な感じ?

○○:うん...

美波:どんなん?

○○:美空、今日もご飯食べないで行ったんだ
しかもお弁当も持たずに...

美波:えっ!?マジ!?

○○:うん...

美波:もう、3日連続じゃない?
大丈夫?

○○:う~ん...
なんかあまりよくない痩せ方をしてる気がしてるんだけど...

美波:強く言えない?

○○:強くって言うより...
あいつが会話を閉ざしちゃうから...

美波:...私が行こうか?

○○:ありがたいけど...
美波今日、塾でしょ?

美波:あっ...

○○:ありがたいけど...
何とか頑張ってみるよ

美波:○○...



史緒里:あっ!みなみん!○○!



同級生の久保史緒里
頭もいいし、学級委員もやってるほどみんなの信頼も厚い



美波:史緒里、おはよ

○○:おはよ

史緒里:ねぇ、今日の数学の小テストの勉強した?

○美:あっ...

史緒里:やばいよ!
今日赤点だったら居残りだって!

○○:それはやばい...
今日、彩の迎え行くって言っちゃったから...

史緒里:それはやばい!
小テスト3限だから、内職で勉強できるよ!

○○:そうね…




そんなこんなで...
1限の現代文、2限の地学を内職に充て、迎えた3限の数学




だけど...



先生:おい、一ノ瀬いるか?

○○:はーい

先生:ちょっと来い

○○:えっ、あっはい



美波:なんかやらかした?

○○:いや...心あたりないんだけど...



先生:さっき△△中学の新内先生から電話があってな

○○:えっ...

先生:妹さんが、倒れたそうだ


__俺のせいだ...


○○:...先生、帰ってもいいっすか?

先生:あぁ...
小テストは再テストになるけど、そこは考慮しておく

○○:あざっす!




美波:○○...

○○:ごめん、美空が倒れたって

美波:えっ...

○○:今日は帰るわ
連絡とかあったら聞いておいてほしい

美波:わかった!




急いで荷物をまとめ、美空の中学へ向かう



○○:はぁ...はぁ...
着いた


自分の母校でもあるこの中学
先生は結構入れ替わっちゃったけど...
教室とかは懐かしいまま



ガラガラ



○○:美空!

眞衣:あれ?一ノ瀬君?



新内眞衣先生
俺らの時からいる保健室の先生


○○:新内先生、美空は!

眞衣:一ノ瀬君、保健室は静かにね

○○:あっ...すみません...

眞衣:美空ちゃんって、一ノ瀬君の...

○○:はい、妹です

眞衣:そっか...

○○:あの...

眞衣:美空ちゃん、ご飯食べてないでしょ?

○○:...はい


眞衣:疑ってるわけじゃないけど...
与えてないわけじゃないよね?

○○:そんなことは決してないです!

眞衣:ごめんごめん…
でも養護の先生としては聞いておかないといけないからさ

○○:いえ...
あいつは...最近ご飯を食べてくれなくて...

眞衣:...反抗期と思春期が被っちゃったのか...

○○:美空が倒れたのって...

眞衣:うん、栄養失調
それで貧血を起こしちゃってる

○○:...ごめんなさい

眞衣:一ノ瀬君が謝ることじゃないよ

○○:でも...
色んな人に迷惑をかけたわけですし...何より美空に申し訳ないなって

眞衣:...優しいお兄ちゃんだね

○○:....全然ダメダメです...
美空に...何もしてやれなかったし...
最近は一番下の妹にしか構ってやれてなかったし...

眞衣:そっか...
美空ちゃん、早退の許可は取って来てるんだけど...
荷物まだ持ってきてなくてね...

○○:あっ、はい...

眞衣:荷物取ってきてもらうのお願いしてもいいかな?
教室は一ノ瀬君が2年の時の教室だから

○○:えっ、今って授業中じゃ...

眞衣:みんなは今体育してるから大丈夫

○○:じゃあ...取ってきます

眞衣:ごめんね~





眞衣:...美空ちゃん、起きてたでしょ?


美空:...


お兄ちゃんが保健室にすごい勢いで入って来た時から起きてる...

自分の中で、申し訳なさと放っておいてほしい気持ちが喧嘩する


眞衣:あんないいお兄ちゃん、困らせちゃダメでしょ

美空:...

眞衣:はぁ...
一ノ瀬君、ほんとは朝ごはんもお弁当も用意してくれてるんでしょ?

美空:...コクッ

眞衣:なんで食べてこないの?

美空:...太ってるとみんなに笑われるから...

眞衣:まぁそうだろうと思ったけど...
美空ちゃん、かなり痩せてるよ?

美空:いえ...これじゃ...
モデルにもなれない...

眞衣:モデルさん目指してるの?

美空:コクッ


眞衣:一ノ瀬君は強く言えないだろうから...
これは養護教師として、ね

ちゃんとご飯を食べなさい
健康的な痩せ方をしてない人は、モデルになんかなれないから

美空:...

眞衣:あと、家族にも心配をかけないこと

美空:...

眞衣:美空ちゃんたちの、家庭環境を知ってるからこそ...
一ノ瀬君の苦悩も分かってあげて?



美空:...ほんとは…わかってるんです...
私がただ兄と妹に八つ当たりして、嫉妬してるだけだって...

眞衣:美空ちゃん...

美空:でも..考えれば考えるほど...
発したくない言葉が先走っちゃうんです!

眞衣:...



美空:反抗期なんか来てほしくなかった...グスッ


眞衣:美空ちゃんもずっと悩んでたんだ

美空:...もう...嫌だ...グスッ




○○:美空!

美空:お兄ちゃん...

○○:ごめんな、ちゃんと気がついてあげれなくて...

美空:うっ...うわぁぁぁん!



美空の荷物は保健室の外に置いてあった
だから…

美空の想いに気がついてやれなかったことが…
ただただ悔やまれる

美空がこんなに苦しんでいるのに…
俺は何ができた?


いや…今はそんな反省会をしていられる時間じゃない


久しぶりに美空からギュってきてくれたこと、すごく嬉しい


ずっと泣きじゃくる美空をあやしていると...



眞衣:一ノ瀬君

○○:はい

眞衣:美空ちゃんの想い、聞いてたでしょ?

○○:はい...

眞衣:...反抗期は成長するための大事な過程だから

○○:はい、わかってます


眞衣:ならいいのよ
一ノ瀬君が抱え込むことじゃないから、私たちも頼ってね

○○:はい、ありがとうございます!

眞衣:じゃあ荷物も持ってきてくれたし、帰りな

○○:わかりました
美空、新内先生にお礼言って


美空:先生、迷惑かけてすみませんでした

眞衣:いいのよ、美空ちゃんはちゃんと話をするんだよ?

美空:はいっ!



○○:ほら、美空乗って

美空:...うんっ

眞衣:じゃあ美空ちゃん、お大事にね

美空:はいっ!




お兄ちゃんとの帰り道
無言の時間が続くけど....


お兄ちゃんの背中はたくましいし、暖かい



美空:...お兄ちゃん

○○:ん?

美空:...今までごめんね

○○:ううん、こちらこそごめんね

美空:...なんで...お兄ちゃんが謝るの...
謝らないといけないのは...私なのに...

○○:美空がモデルさんになりたいなんて知らなかったしさ...
反抗期は難しいと思って、家族なのにちょっと遠ざけていたし

美空:そんなこと...


○○:...彩が生まれた時、美空が言ったこと覚えてる?

美空:...なんか言ったっけ?

○○:『彩ちゃんだけじゃなくて、美空の事も構ってね』
って言ってたんだよ

美空:...

○○:それを俺は守れなくてさ...
特に母さんが早くに死んじゃったから
彩を守らなきゃって余計に思っちゃって...



美空:...私、ずっと嫉妬してたの
私がお兄ちゃんとずっと一緒に居たのにって

○○:やっぱそうだよなぁ...
だから、余計に申し訳なくて

美空:...寂しかった

○○:...ごめん

美空:今度からは美空にも構ってね?

○○:ふふっ、もちろん

美空:やった♪

○○:今日、彩の迎えに行かなきゃいけないんだけど...
一緒に行く?

美空:うんっ、行くっ!

○○:じゃあ家帰ってちゃんとご飯食べて、休むよ

美空:うんっ!





反抗期が終わるタイミングなんて、ふとしたタイミングなんだろうけど...



私の反抗期はここで終わったのかなと思う



彩:あーー!
にぃにとくぅちゃんが手を繋いでる!!

美空:へへへ
いいでしょ~

彩:彩もつなぐっ!

○○:はいはい笑




3人で手を繋いで歩く帰り道



今までの事があるからこそ
3人で笑いあって帰れることの幸せを噛みしめる



美空:お兄ちゃん!あーや!
大好きだよ!!







...fin

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